予想をはるかに上回る数と内容のエピソードが寄せられたOggi読者のセクハラ体験談。今どきのセクハラのリアルとともに社労士と弁護士による実践的なアドバイスも紹介します。
「好意を寄せられて困惑。他の上司からもひやかされて人事に訴えました」
38歳・派遣社員の体験談
最初は、よくお菓子や飲み物をくれる気のいいおじさん〟という感じだったんです。私は3年契約の事務職で、相手は50代の既婚男性のAさん。担当替えで隣の席になってから半年ほどは、特に困ることもありませんでした。ところが、私の誕生日にひざ掛けとクッションをプレゼントされたあたりから怪しい雲行きに…。
デートにしつこく誘われたり、自分の誕生日に「一緒に祝ってください」とドーナツを買ってきたり、私が深夜バスで旅行から帰ってきたところを、だれから聞きつけたのか、早朝のバスターミナルで出迎えられるということもありました。嫌悪感が募って別の上司Bさんに相談し、座席は変更してもらいましたが、Aさんの態度はエスカレート。私がインフルエンザで1週間ほど会社を休んでいたときは自宅近くまで来たり、のどあめをくれようとするのを「いりません」と断ったら怒鳴りちらされるなど、気分の悪いことが続きました。
それだけでも滅入るのに、当初相談に乗ってくれていたはずのBさんは、実はAさんと私の様子を面白がっていたようで…。外出先を書くホワイトボードにAさんと私の相合傘を書いたり、飲み会で隣に座ってAさんのためにお酒をつくるように命じたり、しまいには「おまえらつきあえ! 今からホテルに行ってこい」などと言い出す始末。このままではらちが明かないと思い、これまでに起きたことを時系列で整理し、人事部にメールで送りました。
ひと月後には、Aさんの異動が決定しましたが、なんとAさんは辞令を拒否して病欠に突入。後任も来ず私の仕事量が増加するという皮肉な展開になりました。Bさんにはあからさまな処分は下りませんでしたが、その後しばらくして部署の人員が総入れ替えに。契約社員だった私はそれから3か月後の契約満了後、通常なら子会社の正社員の職を紹介されるのが慣例だったのですが、「コミュニケーション能力に難あり」という理由で紹介してもらえませんでした。なんだか腑に落ちない結末でしたが、そんな会社とは縁が切れてよかったと思っています。
プロのセクハラ判定&アドバイス
フェリタス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士
石川弘子さん
「イヤだと意思表示し、人事にも報告したのは正しい対応」
1973年生まれ。さまざまな企業の労務相談を受けるほか、セクハラ・パワハラ防止コンサルタントとして、企業向けの研修なども行う。著書に『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)。
アディーレ法律事務所 弁護士
岩沙好幸さん
「Aさんの行為はストーカー規制法のつきまとい行為にあたり、Bさんも交際相手の選択や性行為に関する意思決定の自由を侵害しているので損害賠償義務を負います。また、BさんはAさんの恋のアシストをしたつもりでも、Aさんが望んでいなければ、Aさんへのセクハラともいえます」
1981年生まれ。セクハラ・パワハラなど労働問題を主に扱う。コメンテーターとして各種メディアでも活躍。著書に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマ・ドット・コム)。
Oggi9月号「セクハラって結局何?」より
画像/Shutterstock 取材・文/井上佐保子(田中さん分) 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部