予想をはるかに上回る数と内容のエピソードが寄せられたOggi読者のセクハラ体験談。今どきのセクハラのリアルとともに社労士と弁護士による実践的なアドバイスも紹介します。
「社長からホテルに誘われて即日退職。弁護士にも相談したけれど…」
30代前半・フリーランスの体験談
家族経営に毛が生えた程度の会社で働いていたときのことです。40代の社長とはふたりで車移動することが多く、その日も助手席に社長を乗せ、私が運転していました。ところが午後のアポイントがキャンセルになり、社長はランチでビールを飲んでほろ酔いに。すると突然、「太った? そのパンツ、ムチムチじゃない?」と聞いてきたんです。
さらにその後、社長を事務所まで送る途中、ラブホテルの横を通りかかったら、「今日はもう仕事終わったし、行っちゃう? いいじゃん」と誘ってきました。「何言ってるんですか」とあしらいながら事務所に着いても、まだ「機会があったら行こうね」と言うので我慢の限界に。「行かないって言ってるじゃないですか!」と断り、退社を決意。これからもふたりで仕事をしたり、みんなで社員旅行に行くなんて無理だと思ったんです。夕方、だれもいない事務所に退職願をたたきつけてきました。
1週間後、弁護士の無料相談に行ったのは「どうしても許せない。相手に社会的制裁を与えたい」と考えたからです。でも弁護士からは「裁判になると、人前で経緯の説明をしたり相手に会ったりして、心の傷が余計に深くなることもある」と説明されて、訴訟は見送りました。
被害者がそんな思いをしなくてはいけない裁判制度自体にはまったく納得がいきませんが、たかだか100万円程度の慰謝料をもらうために、そんな思いをするのはバカらしいと思ったので。転職活動の面接や新しい上司との面談でも、前の会社を辞めた理由を説明するのはストレスでした。
プロのセクハラ判定&アドバイス
フェリタス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士
石川弘子さん
「これは明らかにセクハラ。弁護士は、彼女が傷つかないようアドバイスしたのでしょうが、『相手に制裁を与えたい』とハッキリ弁護士に伝えたほうがよかったかもしれません」
1973年生まれ。さまざまな企業の労務相談を受けるほか、セクハラ・パワハラ防止コンサルタントとして、企業向けの研修なども行う。著書に『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)。
アディーレ法律事務所 弁護士
岩沙好幸さん
「原則として裁判には弁護士が出ればよいのですが、本人尋問には自身の出廷が必要。相手の顔を見たくないのなら、尋問中に遮へいしてもらうことも可能です」
1981年生まれ。セクハラ・パワハラなど労働問題を主に扱う。コメンテーターとして各種メディアでも活躍。著書に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマ・ドット・コム)。
Oggi9月号「セクハラって結局何?」より
画像/Shutterstock 取材・文/井上佐保子(田中さん分) 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部