体やお金のためにも、自炊したほうがいいんだろうけど… と思いつつ、コンビニごはんで済ませていませんか? はたまた、「手間ひまかけてちゃんとしなきゃ」の呪いにハマっていませんか? 毎日のことだもの、ソロ女子の自炊ってもっといいかげんでいいと、Oggiは声を大にして言います! 重い腰が上がらないのは自らハードルを上げているからかも?! 人気シェフから、頑張らない自炊の極意を学びます。
代々木上原の名店「桉田餃子」のシェフに聞きました!
「ゆで豚とお芋、野菜の塩漬けがあれば、食べつなげます!」食べつなぎのスタートは週末、友達と食べるおうちのごはんから。按田さんがよくつくる料理のひとつは、南米でよく食べられている「チチャロン」という豚肉料理。友達をもてなしながらチチャロンをつくるプロセスに密着し、按田さんの自炊にかける思いを探ります。
按田さんの定番保存食「チチャロン」づくり ドキュメント
16:00
ある週末の午後、気心の知れた友達が自宅に。週末は家で友達と一緒にごはんを食べることが多い按田さん。「人が来るからといって、たいした準備はしません」(按田さん・以下同)
料理の準備はこれから…「チチャロン」をつくり始める。鍋に水を張って塩を入れ、豚バラの塊肉をゆでる。肉300gに対し塩は10g程度。鍋の種類も火加減も適当に。
14:10
友達がもって来てくれた料理にテンションUP! 一緒にキッチンに立つ。「休日は友達の助けでごちそうが食べられる日〟という位置づけ(笑)」。友達と一緒に料理できるよう、調理器具は吊してある。
16:20
ふかしてあった豆ととうもろこしでササッと一品。食材は何種類かまとめてふかしておく。「黒豆ととうもろこしに火が通っているので、トマトとサッと和えるだけでひと皿完成!」
鍋の火加減は不要ときどき様子を見に行くだけ。フタはしてもしなくてもよい。ここで火を止めて、ゆで豚やスープとしても使える。鍋の水が減ってきたら注ぎ足す。
17:00
とりあえずあるものをつまんで…。鍋は放置して、いったん食卓へ。「友達が来たときに料理が完成していなくてもいい。おしゃべりしながらつくるのも楽しいです」
17:30
鍋の水が減ってきたら豚の脂で揚げ焼きに。肉がさらにやわらかくなり、豚から出てきた脂と水の量が逆転。ときどきひっくり返しながら、水分をとばしていく。
17:40
こんがり焼き色がついたら完成! こんがり表面に焼き色がついたら完成! ゆで豚より日もちしやすく、真夏以外なら常温で5日程度保存可能。
17:50
この日はそのまま同じ鍋でバナナと揚げ焼きに。チチャロンの脂をそのまま使って、お芋感覚の甘くない調理用バナナも一緒に揚げ焼き。豚肉のうまみがバナナにも。
盛り付け! 紫玉ねぎの酢漬けも加えてワンプレートに。「今日はシンプルに、スライスして食べます。煮込みに入れたりしてもおいしいですよ」
チチャロンが完成。「ひとりではもてあます量も、友達となら品数がたくさん食べられてうれしい! それでも食べきれなかったら、翌日以降のごはんに」
18:00
改めて乾杯!
按田優子さんインタビュー
保存がきいて料理がラクになるパーツで食べつなぐ自炊
「家で食べるごはんって、だれかに見せるものではないじゃないですか。料理を仕事にしている私だって何品もつくったりしないし、味つけだって自分にとってちょうどよければ適当でいい。そこに手間と時間をかけるくらいなら、早く寝たほうがいいと思うんです。働く女性は忙しいんだから」と笑う按田優子さん。
食べたいと思ったときにサッと、ちょうどいい量でお腹を満たし、体調よく過ごせる食事、それが按田さんにとってのおうちのごはんなのです。
お腹が空かない日もあれば急に友達とごはんに出かける日もあるから、つくりおきはしないけれど、毎食「一から料理しなきゃ」と思うと気が重い。そんなわけで、按田さんの自炊は、食材の寿命を長引かせながらさまざまな料理に使えるパーツの状態にしておく作戦。
「それも保存食としてわざわざつくるというよりは、何かのついでに『余ったけど、放っておくと傷んじゃうから』という流れで、塩と一緒に保存袋に入れたり火を通したりしているだけ。具体的には、ゆで豚肉や〝チチャロン〟などのたんぱく質と、ふかしてすぐに食べられる状態にしたお芋などの炭水化物、あとは余り野菜を塩漬けにしておいて、必要なぶんだけ少しずつ食べつなぐのが、私が無理なく続けられる自炊のスタイルです。ちなみにお芋は、仕事でペルーに行ってからというもの、現地の食事をまねて定番に。『主食はごはんかパンじゃなきゃ』という思い込みから解放されたら、料理がさらにラクになりました」
撮影をしたこの日のように、休日は友達と一緒にごはんをつくって食べることも多々。それもおうちのごはんとひと続きになっているとか。
「たとえば今日つくったチチャロンは、半分はみんなで食べて、残りの半分は向こう一週間分の自分のごはんに回す。お豆をふかすときは、平日に食べるさつまいももついでにふかしておきます。みなさんももっと気楽に、自分にとってちょうどいい自炊のスタイルを見つけてください」
Oggi8月号「おうちごはんはがんばらなくていい!」より
撮影/鈴木陽介 構成/酒井亜希子・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部
按田優子さん
あんだゆうこ・料理家。菓子・パン製造、乾物料理店などを経て独立。世界各国の保存食や発酵食品の研究を行う。ペルーのアマゾンに6回通い、国際協力事業に参加した経験も。写真家の鈴木陽介氏と「按田餃子」を営む。著書に『たすかる料理』(リトルモア)など。