本日のテーマは、前回に引き続き「極限環境微生物」です。まさに宇宙空間という極限環境で粛々と生き延びていた生物についてもお伝えします。
「クマムシ」をなくして極限環境微生物は語れない
極限環境微生物は、地球上の極限状態と呼ばれるような環境下でも生きられる微生物のことでしたが、中でもファン(?)が多いのが、「クマムシ」です。あ、クマと付きますが熊の種類ではなく、ムシと付きますが虫の種類でもありません。クマムシくんは8本脚の無脊椎動物(背骨がない動物)で、「緩歩(かんぽ)動物」という種類に属します。クマムシを一言で表現すると、「キモかわいい」ですね。
見てくださいコレ。
写真=Eye of Science/Science Source
…ちょっと化け物みたいですね。その口はなんだ? と言いたくなります。
普通、生物というのは水がないと生きていけないとされていますが、このクマムシくんは乾燥した状況下でも「普通に」生き延びることができます。しかも、高温や超高圧の極限環境もOK!
身近な場所では道端のコケの中などにも潜んでいるらしいので、ちょっとがんばって探せば、あなたもその辺でも捕まえることができます。サイズは0.2~1mm弱程度と微小動物ながら、“史上最強”の生物と呼ばれています。
クマムシは地球外生命体!?
クマムシくんにはこれまでの生物にはなかった特異性があり、ひょっとしたら地球外生命の手掛かりになるかもしれない…と、研究チームによる解明が行われています。
その特異性とは、クマムシくんは水分がなくなると、体がたるのような形に収縮して「乾眠」と呼ばれる仮死状態に入ります。そしてここからが凄い…水を与えると何事もなかったかのように蘇生して歩き出すのです。ちなみに乾眠の間は代謝もしておらず、まるで死んでいるように見えます。代謝をしないということは、呼吸もしない、ご飯も食べない、うんこもしないということです。意味がわからない生き物ですよね。
専門家によると、この乾眠状態は生きているのでも、死んでいるのでもない「潜在生命」と呼ばれる第3の姿だそうです。これまでの研究での乾眠の最長期間は9年、凍結保存の場合で20年後に復活した記録もあるそうです。
乾眠状態のクマムシくんがどれほどの極限環境に耐えられるのかというと、温度はマイナス273℃~151℃。そして気圧はなんと75,000気圧まで大丈夫!
クマムシくん、あなたヤバいですね。
致死量の放射線を浴びても生き延びた生物も…
遥か昔、アポロ12号の無人探査機サーベイヤー3号が2年もの間、月面で放射線と真空にさらされていたにもかかわらず、表面に付着していた連鎖球菌(地球からの出発時に地球で付着したと思われるもの)が生き残っていたのが発見されたことがあります。
さらに、史上最強生物クマムシくんでもご臨終になってしまうような放射線下でも、死なない細菌が存在するとのことなので、そちらも紹介しておきましょう(この時点でクマムシは最強じゃなくねーか? という声が遠くから聞こえてくる…)。
その名は、「デイノコックス・ラジオデュランス」。日本語に訳すると「放射線に耐える恐るべき球菌」です。なんと、人間の致死量に当たる500倍の放射線を浴びせても、全然平気。2,000倍でも生き残るという…
また、乾燥させるとさらに強度が上がる優れものです(?) ええ、ええ、こういったことを知ると放射線が半端ねぇ宇宙空間にも、何か生き物がウヨウヨいるんじゃないかと思えちゃいますね。というか、きっといますね。…宇宙与太話まだまだ続きます。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授 松井孝典監修(地湧社)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信」の更新がライフワーク。