UKの超イケメンミュージシャンが日本に移住! それは誰? 何故? どういうこと?
KYTEのフロントマンとして、イギリスから初来日したのは10年前。その時から「日本にも東京にも特別に感じる何かがあった」と話すニック・ムーン。ソロ・デビューを機に東京に移住してGotch(後藤正文:ASIAN KUNG-FU GENERATION)が運営するレーベルに所属、この6月7日からスタートするASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国13都市22公演のツアーにオープニング・アクトとして同行することになった。移住したきっかけやソロ・デビューアルバム『CIRCUS LOVE』などについて話を聞いた。
▲ニック・ムーン。KYTEではサマーソニック2013やフジロックフェスティバル’13など計6回来日した。
「30歳になって、いろんな行動を起こすのに抵抗感が薄れてきた。」
——日本の女性は30歳という年齢を何かの一区切りとして考えることが多いようですが、ニックも今30歳ですよね?
ニック「そうだよ。確かに年齢も移住のきっかけになったかもね。24、25歳の頃に書いた曲がこのアルバムに入っているけど、それを見てもこの5年の差は凄いし、今はいろんな行動を起こすのに抵抗感が薄れてきた。5年前でも1年前でも日本には来られなかったと思う。今だから自分の中で何か落ち着いて、新しいチャレンジをすることができたんだと思う」
「日本で暮らしてみないと何年後には絶対に悔やむような気がする。」
——日本に住みたいと思ったきっかけは?
ニック「日本にいるのが単純に好きなんだ。だから、音楽をやっていなかったとしても日本に来たいという気持ちは絶対に生まれたよ。今まで何度も日本に来たけど、嫌だと思った人はひとりもいなかった。イギリスに長く住み過ぎてしまったから、今、日本で暮らしてみないと何年後には絶対に悔やむような気がするんだよね。全世界の人がもっと世界中を回っていろんな文化を体験して視野を広めて、お互いをリスペクトするようになったら、世界に起きている悪い出来事もなくなるんじゃないかな」
「家で実験的に曲をつくっていたものがアルバムになった。」
——元々はシガー・ロスのようなアンビエント感のある音楽が好きだったそうですが、『CIRCUS LOVE』にはドリーム・ポップが中心とはいえ、いろんなタイプの曲が入っていますよね?
ニック「そうだね。最初は特にアルバムを出す予定もなかったので、誰に聴かせるともなく、家で“こういう曲をちょっと作ってみたら面白いんじゃないかな?”と実験的に曲作りをしていた。後になってから円をぐるっと描くことができた感じになり、“アルバムにできるかな”と思った。だから、『SO WELL』のようにテンポが速くてカラフルでポップな曲を作りたいという気持ちは若干あったかもしれないけど、明確にこういう路線で行くぞ、という感じではなかったんだよね」
——アルバムの最初の方の音色にはシンプルなものが多く、後半に連れて深みが増していき、一方で歌詞は後半に向けてポジティヴなものなっていますよね。サウンド感と歌詞の内容が反比例するようで興味深かったです。
ニック「なるほど、音楽と歌詞が対照的っていう意見は面白いね。確かに後半の歌詞は喜びやハッピーな面などをリスペクトしている」
▲インタビューの合間には和食の作り方について逆質問されました。
「日記を書くことは今後の自分の助けにもなると思う。」
——歌詞を書くことは自分を見つめることにもなりますが、曲を作っていた6年間を振り返って、人として成長した点はありますか?
ニック「まさに曲はできた順に収録したので、最初の何曲かの歌詞をみると、“自分のことを嫌だ”と思えるほど、自分とは思えないほど憎しみを抱えていて、やけになっている(笑)。誰にも聴かせるつもりがなかったから、素の自分が強く出ているのかもね。そこからの変化が曲を通して見えるから、僕の成長のためになっていると思う」
——成長するためにも日記のように書き残すことは良かったという?
ニック「そうだね。人生に起こる問題って、結局は時間が解決することだと思うけど、“こんなことがあった”って思い出せるのはいいことだと思うから、歌詞もいいけど、もっと日記を書けばよかったなと思ったよ。そうすると悪い状況でも“前にこんなことがあって立ち直れたんだ”って思い出せるし。今の世代はフェイスブックに写真を投稿するくらいじゃない? だから、今後の自分の助けにもなるから、自分の感じたことや人生を日記に綴ってもいいと思うんだ」
▲BEST HIT AKG2が大ヒット中の“ASIAN KUNG-FU GENERATION”
——これからASIAN KUNG-FU GENERATIONのツアーに同行したり、フジロックフェスティバル‘18に出演したり、忙しそうですね。ライヴではバンドの頃とは違い、たったひとりで機材を使って演奏して歌っていますが、慣れました?
ニック「楽しいけど、いろいろ難しい(笑)。曲は大事だけど、ライヴでは自在に曲を変化させることができる。だから演奏や歌や熱量など、そのバランスを大切にしないといけない。全ては僕自身に掛かっているんだ。まさに今チャレンジしているところさ。これからミュージシャンとしても成長していくよ!」
▲ソロ・デビューアルバム『サーカス・ラヴ』は、iTunesオルタナティブ・チャートで第1位に。
初出:しごとなでしこ
伊藤なつみ
国内外問わず超人気アーティストなど多数取材している音楽&映画ジャーナリスト。若手ミュージシャンたちからの信頼も厚く、プロデュースやディレクション、スタイリングetcにも幅広く活躍中。フィガロ連載、Spotify のMUSIC SKETCHも人気。料理の腕前はプロ級でコース料理でおもてなしも。