マイナー過ぎる学問「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」の知識を人知れず学ぶことで、宇宙レベルの視野の広さ(?)を習得し、日常生活の面倒なアレコレが小っちゃいどうでもいいことに思えてくるこのコーナー。
前回の「インフルエンザは宇宙からやって来たって本当!?」では、インフルエンザウイルスをはじめとしたウイルスが、実は宇宙からの侵入者である可能性があるカモ!?ということをお伝えしました。
本日はアストロバイオロジーを語る上で欠かせないその「ウイルス」について、盲点となっている豆知識を中心に進めていきたいと思います。ええ、ええ、知らないとどこかで恥をかくことになるかもしれないので、ぜひこの機会にウイルスについて知ってくださいませ。
ウイルスを100%除菌する!?
さて、あなたは「ウイルスを100%除菌する〇〇」というキャッチコピーを見て、このキャッチのどこに間違いがあるかわかりますか? ええ、ええ、わからなくても恥ずかしく思うことはありませんが、普段こんなことを言ってしまっていたらちょっとアレですね。
除菌とは細菌を取り除くことを言います。細菌はバクテリアとも呼ばれている微生物、すなわち生き物です。
これに対してウイルスは、生物ではありません。ええ、ええ、ウイルスは生物の要件を満たしていないため、「非生物」とされているのです。あのウヨウヨ自由に動いているウイルスが生き物じゃないなんて…私的には納得がいかないのですが、ウイルスは細菌とは似て非なるものであり、「ウイルスを除菌」することはできないのです。正しくは「ウイルスを除去」ですね。
ちなみにウイルスは小さ過ぎて、肉眼ではもちろんのこと普通の顕微鏡でも見ることが出来ず、電子顕微鏡を使ってやっと見ることができる物体です。会社でちっちゃいことを言ってくるタイプの人に気が滅入ることがあったら、「ウイルスみたい…」と相手を俯瞰してみましょう。少しは気が楽になるかもしれません(ウイルスに悪いですね)。
ウイルスは病気をもたらすだけの悪者じゃない!
また、ウイルスと聞くと、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、C型肝炎ウイルスなど枚挙に暇がない程「THE病原体」と思ってしまいがちですが、実はウイルスの中にも超善玉ウイルスと言っても過言ではないくらい、ありがたい存在のウイルスもいるのです。
今知られている善玉ウイルスで代表的なものは、妊娠時に胎児を母親の免疫細胞から守る役割を果たすウイルスです。ええ、ええ、赤ちゃんというのはお母さんの体にしてみたら「異物」であるため、放っておくと母親の免疫細胞が赤子に対して攻撃をして死滅させてしまうところ、その善玉ウイルスくんが防御のための膜を作って赤ちゃんを守ってくれているのです。そのウイルスくんがいなければ、今こうしてのほほんとこの宇宙コラムを書いている私も、読んでいるあなたも存在しないわけです。善玉ウイルスくんに感謝ですよね。
地球上に100億種類はいると言われているウイルス
今は病気の原因として発見されることが多いため、ウイルスは悪者的な視点が優勢ですが、研究者の推定によるとこの地球上には、約100億種類のウイルスが存在していると言われておりまして、ウイルス研究の進展とともに善玉ウイルスも今後たくさん見つかってくるかもしれません。
また2003年には、ヒトゲノムという人間のDNA(遺伝子)情報が完全解読されたのですが、そのうちの46%の部分がウイルス由来であることがわかっています。ええ、ええ、ウイルスと私達人間とは切っても切れない仲にあるようなのです。これについては連載のどこかであらためて解説をば。というわけで、次回もお楽しみに。
【参考図書】
『YouもMeも宇宙人』いけのり著/東京大学名誉教授松井孝典監修(地湧社)
『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』チャンドラ・ウィクラマシンゲ著(恒星社厚生閣)
いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信(http://ikenori.com/)」の更新がライフワーク。