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LIFESTYLE

2025.03.03

トランプ氏が選ばれた理由は? 強気な政策の影響は? 世界が見つめる「トランプ2.0」を深堀り

2025年が始まってからその名を聞かない日はないほどの注目度。4年ぶりに米大統領に返り咲いたトランプ氏の動向は世界中が注視しています。アメリカファーストと銘打った政策やその決断力には驚かされることばかりですが、気になるのは日本や世界への影響。そこで今回は、トランプ2.0がスタートし、これから世界や私たちの暮らしはどう変わっていくのかジャーナリスト・増田ユリヤさんに教えてもらいました。

トランプ2.0スタート! 私たちの暮らしはどう変わる?

4年ぶりに米国大統領へ返り咲き。インフレは? 戦争は…? 世界各国とのパワーバランスや、日本経済への影響は? ジャーナリスト・増田ユリヤさんに伺いました。

今回の先生は…

ジャーナリスト・増田ユリヤさん

▲ジャーナリスト・増田ユリヤさん
ますだ・ゆりや/1964年、神奈川県生まれ。27年にわたり高校で世界史・日本史・現代社会を教えながら、NHKのリポーターを務めた。『揺れる移民大国フランス』『チョコレートで読み解く世界史』(共にポプラ社)など著書多数。

何かとお騒がせなあの彼が大統領に選ばれた理由は?

Oggi編集部(以下Oggi):1月20日、いよいよアメリカで第二期トランプ政権が発足しましたね。2017年〜’21年の第一期以来、4年ぶり。トランプ氏の動向は日本のメディアでも連日取り上げられていますし、私たちにも関係があるのかな、って…。

増田さん(以下敬称略):大統領選も、注目されていましたしね。

Oggi:そもそも今回、トランプ氏が勝利したのは、なぜですか? 民主党のカマラ・ハリス氏が優勢だという報道もありました。

増田:ハリス氏は、国民のバイデン政権に対する不満を、受け止めることができなかったんです。バイデン前政権で副大統領を務めていて、バイデン政権を批判するのは、自分の落ち度を認めるのと同じこと。だからテレビ番組でも、バイデン政権を全肯定するような発言をしてしまったりして。

Oggi:民主党は、ジェンダー平等やLGBTQの問題など、多様性に理解があるのがいいな、と思っていたんですが…。

増田:確かに、リベラルな理想は支持されているのですが、アメリカ国内の不景気に苦しむ人々に「この人なら自分の生活を守ってくれるかもしれない」と思わせるのは、トランプ氏のほうが一枚上手でした。

トランプ陣営は辺鄙な農業地帯などにもくまなく足を運んで、国民が何に不満を持ち、何を希望しているのか、話を聞いて回っていたんです。民主党はそういうことをしないんですよね。

Oggi:アメリカって、今そんなに不景気なんですか?

増田:コロナ以降、物資不足でインフレが進み、たとえば卵の値段は一時期3倍近くまで跳ね上がったそう。私も大統領選の取材で滞在中、ごくふつうのレストランでお酒も飲まず、ピザやパスタをひとりひと皿頼んだだけなのに、ひとり7000円近くの支払いに!

物価高騰のイメージ
(c)AdobeStock

Oggi:円安とはいえ、想像以上に高い! そんな中でトランプ政権が始まって…私たちの生活にも影響はありますか?

増田:日本経済への影響は避けられません。トランプ氏はまず、関税の引き上げを表明。これまでほぼ無関税だった、メキシコとカナダからアメリカへの輸入品には、25%の関税をかける、としています。

メキシコにはトヨタ、日産といった日本の自動車メーカーの工場や関連企業が数多く進出していて、製品の大半はアメリカ向け。関税が上がれば値段が上がり、アメリカで売れにくくなります。

Oggi:日本企業の業績に影響する、ということですね。

増田:また、トランプ氏は中国からアメリカへの輸入品にも、10%の追加関税を課すと。中国にとってアメリカは最大の貿易輸出国で、中国経済への打撃は必至です。さらに中国は、アメリカと並んで日本にとって最大ともいえる輸出相手国。中国が不況になれば、日本のモノも売れません。

Oggi:世界の経済がつながっていることを実感しますね。円安はどうでしょう? 海外株に投資している友人が「トランプ政権になれば儲かる」なんて言っていて。

増田:トランプ氏が大統領選の公約で、法人税の引き下げなど、投資家や富裕層に有利な政策を掲げていたのは事実。大企業はますます潤い、格差は拡大するでしょう。

一方で、メキシコの関税の話が出たときは、日本の大企業の株がドンと下がりました。正直、不透明なことが多すぎて見通しが立ちませんが、すぐに円高になることはないし、株価もしばらく安定しないと思いますよ。

地球の環境問題には無関心。世界の流れと逆行する米国

Oggi:ほかにも、特筆すべき点はありますか?

増田:地球温暖化対策として温室効果ガス排出削減を目指す「パリ協定」から、アメリカが抜けると言っています。第一期トランプ政権で離脱して、バイデン政権で復帰しましたが、再び離脱の見通しに。

Oggi:地球温暖化は、世界で連帯して取り組むべき問題では?

増田:世界はクリーンエネルギーへの転換を推進していますが、彼にとってはアメリカの利益が最優先。’10年代に生産が急増した石油の一種、シェールオイルのおかげでアメリカは今や世界一の石油産出国です。温暖化なんてお構いなし、とばかりに、まだまだ化石燃料を増産しようとしています。

Oggi:戦争は終わりますか?

建物が倒壊するイメージ
(c)AdobeStock

増田:トランプ氏は選挙中から「俺の時代に戦争はなかった。すぐに終結させる」と豪語していましたね。実は民主党が支持を失った理由のひとつに、戦争をなかなか収束させられなかったこともあるんです。

イスラエルに武器や資金を援助し、ガザの攻撃に加担し続けるバイデン氏に、多くのアラブ系住民は失望していました。とはいえ、トランプ氏はバイデン氏に輪をかけてイスラエル寄り。

浮動票が多い激戦州である〝スイング・ステート〟では、民主党でも共和党でもない、第3政党に支持を変えた有権者も少なくありません。

Oggi:ロシアとウクライナの戦争については…?

増田:バイデン政権によるウクライナへの兵器供与などを、トランプ氏はたびたび批判していました。トランプ政権では、ウクライナが領土を奪われたまま、不利な形で停戦に追い込まれる可能性があります。その影響がヨーロッパ全体に、どう広がるか…。

Oggi:どういうことですか?

増田:そもそも、ヨーロッパがEUやNATOといった枠組みで結束するのは、それぞれ規模が小さい国家だから。トランプ氏は、NATOからの離脱もチラつかせています。

もしアメリカという強力な後ろ盾が抜けてしまったら、たとえばバルト三国など、ロシアと国境を接する小さい国々は、ウクライナのようにロシアに侵略されてしまう危険性も。

トランプ氏は、「守ってほしけりゃ、軍事費をもっと払え」と、〝NATO離脱〟を切り札にヨーロッパの国々に揺さぶりをかけているわけです。

NATO加盟国の国旗
(c)AdobeStock

Oggi:そんな強引な方法で…。

増田:トランプ氏の政治や外交スタイルを表すキーワードは〝ディール(取引)〟と〝アメリカ・ファースト〟。彼は政治家というより、どこまでも実業家なんです。自分の発言をひっくり返す自己矛盾も気にしない。

損得勘定で物事を捉え、相手を挑発しながら自分に有利な取引を進める。諸外国に対しても、無理難題を吹っかけて、最終的にはアメリカの国益を最優先に、物事を運んでいくでしょう。

Oggi:手強すぎる。交渉相手にしたくない人物ですね。

増田:「よその国の揉めごとは自分には関係ない」と、世界で起きている民族や人権の問題よりも自分たちの暮らしを優先する層が、アメリカでも増えてきている気がしていて、そんな人々にとっては〝強いアメリカ〟を取り戻そうとするトランプ氏は理想のリーダーなのかもしれません。

Oggi:それだけ暮らしが苦しくなっているんでしょうが…。

増田:現在、物価高やエネルギー問題、足踏み状態の景気などで多くの国が疲弊しています。トランプ氏が今後どう動き、世界の均衡がどう変わっていくのか、どの国も固唾をのんで見守っているところだと思いますよ。

アメリカへの旅行や就労…入国は難しくなる?

Oggi:トランプ氏は、アメリカから移民を締め出す、とも言っていましたね。私たちもアメリカに行きづらくなる、なんてことは?

増田:トランプ氏が前期と同様、ビザの審査を厳格化すれば、日本人にとっても留学ビザや就労ビザの取得がさらに難しくなる可能性がありますね。

Oggi:そうなんですね。

増田:ただ、もとはといえばトランプ氏が一期目に移民規制を強化した反動で、バイデン政権時に一気に移民が流入したという背景があります。

また実生活では、多くの不法移民がアメリカ国内でさまざまな仕事を担っていて、欠かせない存在。彼らの労働力に依存しているというのも、アメリカ社会の現実なんですよね。

Oggi:なるほど。すべてが波瀾含みに聞こえます(苦笑)。日本で働く私たちに、できることはありますか?

ニュースを見る人
(c)AdobeStock

増田:日ごろから国際情勢のニュースを見て、理解しておくことが大事。トランプ氏の政策ひとつで、みなさんが働く会社の株価や、毎日手にする食料品の値段も、変わってくるかもしれません。

難しく感じた情報は、メディアの公式サイトや、書籍などで確認するクセをつけておくといいですね。旅行ガイドブックを入り口にするのも◎。その国の歴史や政治、経済など、情報がギュッと詰まっていて意外と侮れません。

わかりやすく解説してくれるYouTubeなどもありますが、個人で制作されているものは、情報の真偽があやしいものもあるので、ご注意を。

Oggi:私たちの生活も、アメリカや世界と密接な関係があるのだと再認識しました。いろいろな方法で情報収集して、視野を広げていきたいと思います!

トランプ氏が進める政策のポイントは?

地球温暖化なんて関係なく石油を掘りまくる!?

ドナルド・トランプ
(c)ロイター/アフロ

「掘って、掘って、掘りまくれ」と威勢のいいことを言って、石油や天然ガス産業関連に従事する人々から支持を集めたトランプ氏。アメリカ国内での石油採掘を活性化させることで、雇用を生み出すと主張。

「トランプ氏は『気候変動なんてない』と発言し、環境問題には無関心」(増田さん・以下同) 2024年12月には、EUに対し、米国から大量に石油やガスを買わなければEU産品に関税を課すと警告。EUに対する貿易赤字を解消する考え。

関税引き上げで日本経済にも打撃が

車
服

中国やメキシコ、カナダへの関税引き上げを強気に打ち出すトランプ氏。「食料品や衣服など低価格の日用品が売りのウォルマートをはじめ、中国からの輸入品を扱うスーパーマーケットでは、〝トランプ関税〟に備えて大統領就任前から少しずつ値上げを進めています」

日本の自動車メーカーは、生産拠点をメキシコからアメリカ国内や関税対象外の国に移すなど、体制見直しを迫られそう。

NATOからの離脱へ…世界の安全保障は?

左からゼレンスキー氏、マクロン氏、トランプ氏
(c)ロイター/アフロ

NATOからの離脱をほのめかしたと思えば、加盟国に対し、防衛費を現在の約2.5倍であるGDP(国内総生産)比5%に引き上げるように要求するなど、ヨーロッパの国々を戦々恐々とさせるトランプ氏。

ちなみに、ロシアの防衛費はウクライナへの侵攻開始以来増え続け、GDP比約6%と、冷戦以来の最高水準。「ロシアへの警戒から、バルト三国のひとつ、ラトビアのように徴兵制が復活した国も」

覚えておきたいキーワード

「トランプ2.0」に関連するワードや知っておきたいワードをピックアップ!

シェールオイル

原油の掘削機

地中深くの硬い地層に含まれる原油。’10年代、アメリカは掘削技術の発達などにより増産に成功し、世界最大の原油生産国へ。世界のエネルギー事情や政治状況に大きな影響を与えたことから、「シェール革命」と呼ばれた。

スイング・ステート

民主党が地盤とする〝ブルー・ステート〟、共和党が地盤とする〝レッド・ステート〟に対し、勝利政党が変わりやすい激戦州のこと。’24年の大統領選では、ミシガン州やペンシルベニア州など7州が該当。

第3政党

医者で環境活動家のジル・スタイン氏
(c)REX/アフロ

ミシガン州などアラブ系住民の多い州で支持を広げたのが〝緑の党〟。医者で環境活動家のジル・スタイン氏(写真)が’12年、’16年に続き’24年の大統領選に出馬。スタイン氏はユダヤ系だがイスラエルによるガザ侵攻を非難した。

NATO

北大西洋条約機構。1949年、当時のソビエトに対抗する軍事同盟として発足。現在の加盟国は、スイスなどを除く欧州の国々やアメリカなど32か国。加盟国への攻撃があった場合、同盟国が援助する。

※掲載している情報は2025年1月10日現在のものです。

2025年Oggi3月号「Oggi大学」より
構成/中村茉莉花、酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部

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