未来の自分を、想像したことはありますか? 5年後、10年後、どんな自分でありたいか。その理想を描き、その未来から逆算して今すべきことを考える——これが「バックキャスト」という思考法です。ただ漠然と未来を待つのではなく、自分の手でその未来を引き寄せるための術を、あなたも手に入れてみませんか?
バックキャストってそもそも何?
バックキャスト(バックキャスティングともいいます)とは、未来の目標を決め、それを実現するためのステップを設定して、現在の行動を決める思考法のことです。つまり目標への達成意欲がなければバックキャストも機能しないのかも? バックキャストを基本から理解することから始めましょう。
バックキャストの基本
バックキャストの基本は、まずは、達成したい未来の状態を明確に描くことです。その未来の状態を達成するために、現在から逆算して必要なステップや行動を特定します。
このアプローチおいては、目標に対する強い達成意欲が重要になります。理想の状態を描き必要なステップを具体化することで、モチベーションもアップして目標達成の可能性も高まります。
バックキャストとフォアキャストの違い
バックキャストとフォアキャストは、未来を考える方法として対照的です。フォアキャストは、現在のデータやトレンドをもとに、未来の状態を予測するアプローチです。
分かりやすい例を挙げると、過去の業績データを用いて来年度の売上を予測します。それに対してバックキャストは、最初に未来の理想的な状態や目標を設定し、その目標を達成するために現在から逆算して計画を立てる方法です。
フォアキャストが現状の延長線上で未来を予測するのに対し、バックキャストは未来から逆算して行動を計画する点が大きな違いです。
こんなところで役立つ! バックキャストの実例
バックキャストは、日常生活やビジネスにおいて幅広く応用されています。みなさんもよく知っている、身近な例を紹介しましょう。日本政府は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を、全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。
その目標を実現するため、省エネルギー化やバイオ燃料の混焼割合を引き上げる技術開発等を進めたり、植林や廃材の利用等を組み合わせるなど、ライフサイクルでのCO2排出量を削減する取組が行われています。
バックキャストを取り入れるための具体的なステップ
バックキャストを実際に取り入れるには、具体的なプロセスを理解することが大切です。以下のステップを実践することで、あなたのビジネスやキャリアに活かすことができます。
ゴールから逆算する具体的なプロセスとは?
ゴールから逆算するプロセスでは、第一に「達成したい目標」を明確に定めます。ビジネスシーンでよくあるのが、「次の年度末までに売上を20%アップさせる」という目標を立てるというもの。
このような目標を達成するために、大まかな施策(例:新しいマーケティング戦略の導入、顧客データの分析強化など)を洗い出します。
その上で、それらの施策を実現するために必要な具体的なアクション(例:毎月のキャンペーン企画、定期的な顧客レビューなど)を設定し、それを逆算してタイムラインを作成します。これにより、目標達成に向けて、今からなすべき行動が明確になり、計画がより現実的なものになります。
バックキャストで勝ち取った成功事例
バックキャストを取り入れる方法やステップは、ある程度、理解いただけたのではないでしょうか? その上で、バックキャストによって成功した事例を見てみましょう。
これも広く知られているエピソードになります。それは、Apple社のiPhone開発です。Appleは「未来のスマートフォンの理想像」を描き、そのゴールから逆算して技術やデザインを選定したといわれています。従来の携帯電話の概念にとらわれず、タッチスクリーン技術などを導入するという大胆なアプローチを取ったことは有名な話です。
このバックキャストにより、iPhoneは市場に革命をもたらし、Appleは業界をリードする企業として成長を遂げました。
バックキャストでキャリアデザイン
キャリアの成功にもバックキャストは有効です。理想のキャリアを描き、それに向けて逆算して計画を立てることで、より確実に目標に近づくことができます。
理想のキャリアから逆算して、今すべきことを見つける
理想のキャリアを実現するためには、まず自分がどんな仕事や役職に就きたいのかを具体的にイメージすることが大切です。
例えば「5年後に部門のリーダーになる」という目標を設定したら、そのポジションに必要なスキルや経験をリストアップし、逆算して今から何を学ぶべきか、どのプロジェクトに参加すべきかを決めます。このようにステップを明確にすることで、漠然とした未来の目標が、今すぐに取り組むべき行動に変えることができます。
計画的に職業経験を積み重ねる方法
計画的に職業経験を積み重ねるには、最初に目指す職業に必要なスキルセットや知識をリスト化することが肝心です。それらを、一つ一つ段階的に習得していくことが実現への足掛かりとなります。
日々の業務や学習の中で、どのように新しいスキルや知識を取り入れるかを考え、具体的な行動計画を立てます。小さな目標を設定し、それを達成するたびに次のステップに進むことで、最終的に目指す職業やキャリアに近づいていくことができます。
リスクを回避するバックキャストの活用法
バックキャストによるリスクの回避をするためには、未来から逆算して問題が起こりそうなポイントを事前に特定することです。その上で、想定できる問題への対応策を講じることが必要ですね。
もしも、近い将来、キャリアップ転職を考えているならば、目指すポジションで必要となるスキルは、あらかじめ習得すべく努力した方がいいでしょう。このようにバックキャストを活用することで、予測されるリスクに先手を打ち、計画を柔軟に修正しながら安全に進むことができます。
最後に
バックキャストは、未来を逆算して計画を立てる強力なツールです。ビジネスやキャリアにおいて、理想の目標を実現するためにぜひ取り入れてみてください。計画的に行動することで、成功への道を確実に切り開きましょう。
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