社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化していて、これから先、私たちの暮らしはどうなってしまうんだろう…… と、不安を感じている人も多いはず。
そこで、ジャーナリスト・池上彰氏の新著『池上彰の未来予測 After 2040』から、今からどのように行動していけばいいのかについてのヒントを探ります。
書籍より一部引用・再編集し、生成AI、仕事、物価、退職金、年金…… など、気になるトピックスについて、全7回の連載形式で解説。
チャットGPTは脅威ではない! 「優秀なアシスタント」になる
2023年のビジネス界は、生成AIのひとつ「チャットGPT」の話題で持ちきりでした。
チャットGPTに使われているAI「GPT–4」は、インターネット上から収集した膨大な文章をAIが自ら学習(ディープラーニング、深層学習)することで、「それらしい」「自然な」会話や文章をアウトプットできるようになり、急速に「使える」ようになりました。
そして世間では、チャットGPT脅威論、あるいは活用論が飛び交いました。
チャットGPTの進化と、それによっていよいよホワイトカラーやクリエイティブ系の仕事にもAIの脅威が迫ってきたという点で、多くの人が衝撃を受けたのです。
しかし技術の進化は不可逆的ですし、いつまでも恐れてばかりはいられません。
これからは、それぞれの仕事に生成AIをどう活用するか、前向きな議論をする段階に入っていくことでしょう。
たとえば仕事をする際、「これについてはどう思う?」と生成AIに相談して答えをもらうといった形で、「すぐ隣にいるきわめて優秀なアシスタント」としてビジネスパーソンそれぞれが生成AIを使っていくようになっています。
ただチャットGPTなどの生成AIは、ありきたりな質問をするとありきたりな答えしか返ってきません。
質問の仕方によって答えがまったく変わってくるため、人間側が「良き問いを立てる」ことが活用のポイントです。
私たちは学校で、問いに対する答えばかりを考えてきました。
しかしこれからは、チャットGPTを活用するためにも、「良い答えを出させるための良き問いをどう立てるべきか」という観点が大事になってくるのです。
すでに生成AIの活用が進んでいる会社の事例もあります。
集英社の「少年ジャンプ+(プラス)」編集部では、「アル」というスタートアップ企業と共同で、チャットGPTを活用した独自のマンガ家支援システムを作りました。
マンガ家がテーマに悩んだり、キャラクター名やセリフに悩んだりしたときに、AIに相談できるといいます。
「こういう性格の登場人物が、こういう状況に置かれたらどんなセリフを言う?」などと質問したら、編集者の知見を取り入れたAIが、チャット形式で自動回答をしてくれるそうです。
孤独な創作作業を続けるマンガ家のために、「とにかく励ましてほしい」「とにかく話をしたい」といった要望にも、AIが応えるといいます。
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TOP画像/(c)Adobe Stock
『池上彰の未来予測 After 2040』(池上彰 著/主婦の友社)
あなたは16年後の自分を想像できますか? あなたが今40歳なら、56歳。定年退職が見えてくる時期です。定年後、人生の節目を迎えてなお社会や家族から見放されないためには、過去の出来事から未来を予測し今から準備をする必要があります。とはいえ未来を考えると、暗い将来ばかりを思い描いてしまいがちです。たとえば円安がさらに進み、自分の収入だけでは生活できない経済状況になってしまわないか?大地震や富士山の噴火など未曾有の災害に襲われないか……などなど。不安というものは、いったん考え始めると次から次へと出てきて、思考が不安に支配されてしまいます。私はそうならないために、未来をなるべく楽観的に考えることを心掛けています。ですので、本書では明るい未来と暗い未来の両方を想像しています。あなたの未来が暗くならないために、今からどう行動していけばいいのか? 本書をそのきっかけにしてもらいたいと思います。