エディター・岡村佳代が出会った、あんな人やこんな人…
私が身を置く業界は「クセあり人間」の宝庫です。「クセ」とはある意味「強めの個性」なので、クリエイティブな仕事には不可欠なのかもしれません。
第9回は、美しい花のような笑顔が素敵な友人の高塚さん。そんな彼女にも、親しい人間しか知らない一面があるのでした…。
▲高塚さん(仮名) 45歳/会社経営
美貌と豊かな人間性を併せもつ、ファッション界では知らない人がいない名物バイヤー。大手商社勤務の夫と都心のタワマンに暮らし、私生活も華やか。美容医療には多額を注ぎ込み、そのことは公言もしている。
戦慄のカサブランカ
顔だけではなく性格まで美しい高塚さんは、私の自慢の友人です。しかし、ごく親しいわれわれだけは知っている。彼女がとんでもなく凶悪な(笑) 一面を持っていることを。そう、高塚さんはおそらく日本でトップレベルの「顔圧」の使い手なのです!
怒りの地雷は人それぞれですが、高塚さんのそれは、「一流のサービスを提供するのが仕事なのにそれを怠った人」。主な舞台は高級なホテルやレストランなので、まあ、当然といえば当然。仕事に関しては自らにも厳しい高塚さんらしいのですが、何が怖いってクレームを伝える際の「花のような笑顔」! そして非常にていねいな言葉選びと口調!
先日、高塚さんが予約してくれたレストランでのこと。
(1)オンタイム過ぎても席に案内されず5分弱入り口で待たされる。
(2)ようやく案内されたのはリクエストしたテーブルではなく入り口近くの落ち着かない席。高塚さんの怒りは静かに満ちてゆき、スタッフの若い女性に(1)と(2)を、まるで大輪のカサブランカの花のような笑顔で指摘。その恐ろしさを伝えきれない自分の筆力が情けないけれど、まじ怖いんだって!
見事なまでの是々非々なジャッジ。また、後腐れない振る舞いを見せるところが高塚さんのカリスマたるゆえん。
その後のスタッフちゃんのグッジョブな仕事ぶりには、甘い香りを放つカサブランカのような笑顔で褒め称えていたのでした。ある意味、これも怖いか?
2024年Oggi9月号「クセあり人間観察ファイル」より
文/岡村佳代 イラスト/平松昭子
再構成/Oggi.jp編集部