エディター・岡村佳代が出会った、あんな人やこんな人…。
長年ご愛読いただいた「メール内『男心』連絡網』改め、Oggi2024年1月号からのリニューアル新連載です。ざっくりいうと、日々私が見えない網を持って出かけ、「クセあり」人間採集を行い、ご報告するというあいも変わらぬ下世話さですが、よろしくおつきあいください。
私が身を置く業界は「クセあり人間」の宝庫です。「クセ」とはある意味「強めの個性」なので、クリエイティブな仕事には不可欠なのかもしれません。
第5回は、コードネームTeppeyくん。繁忙期だけアシスタントをお願いしている彼はどこかロボットのような人というイメージで、仕事のやりとりもAIとのやりとりのよう…。
そんな彼が見せた意外な一面に私は反省することに。
▲哲平くん(仮名) 19歳/大学2年生
東京・四谷にあるカトリック系の私立大学生。ブランドやメディアの仕事に興味があり、新聞社でインターン中。とても賢く、仕事はソツなくこなすが、対面でもLINEでもまるでAIのような返ししか来ない無味無臭男子。だったが…。
コードネームTeppeyくん
巷では「人間みたいなロボット」が活躍しているようで、一度お目にかかりたいと思っています。
が、今、身近に「ロボットみたいな人間」がいることに気づいてしまいました。私は心の中で、彼を「Teppey」くんと呼んでいます。
アクセントは「テ」。そう、名前の「哲平」と人型ロボット「Pepper」を掛け合わせたニックネームです。彼には仕事の繁忙期だけアシスタントをお願いしています。
しかし、ムダのなさすぎるやりとりに「キミに感情はあるのか!?」と肩を揺さぶりたくなる衝動にかられます。
こちらが「少しは育てなきゃ」という愛情を込めつつ、仕事のミスをていねいに説明するメールを送っても、
「大変申し訳ございません。承知致しました。引き続きよろしくお願い致します」
と人工知能のような返事しか来なかったり…。
まあ、めんどくさい年長者とのやりとりは、さっさと終えたくなる気持ちはわかる。
そんなある日、1週間後に控えた海外出張用に、英文オンリーの長文プレスリリースが送られる事案が発生。
必死に翻訳していた私の横にTeppeyくんが音も立てずに現れ、「岡村さん、翻訳しましょうか」。
そういえば、キミ海外留学の経験があったっけ。定時を過ぎているにもかかわらず、鮮やかにプレスリリースを訳してくれたのです。
彼の気使いと、仕事の正確さ、素早さに感心しきり。ロボットみたいなんて言って「大変申し訳ございませんでした」。
2024年Oggi5月号「クセあり人間観察ファイル」より
文/岡村佳代 イラスト/平松昭子
再構成/Oggi.jp編集部