エディター・岡村佳代が出会った、あんな人やこんな人…。
長年ご愛読いただいた「メール内『男心』連絡網』改め、Oggi2024年1月号からのリニューアル新連載です。ざっくりいうと、日々私が見えない網を持って出かけ、「クセあり」人間採集を行い、ご報告するというあいも変わらぬ下世話さですが、よろしくおつきあいください。
私が身を置く業界は「クセあり人間」の宝庫です。「クセ」とはある意味「強めの個性」なので、クリエイティブな仕事には不可欠なのかもしれません。
第2回は、先日ご一緒させていただいた大御所スタイリストの、通称「マドモアゼル」。〝シャネル〟をこよなく愛し、撮影現場にもシャネルジャケットを着てきちゃったりする浮き世離れっぷり。
▲マドモアゼル(通称)推定アラ還・スタイリスト
タカラヅカ出身の人気女優さんをはじめ、数々の大物芸能人を長年担当している大御所。にもかかわらず、気さくで謙虚な人柄である一方、譲れないナゾのこだわりがあり現場でスタッフを困惑させることもしばしば。愛称は〝シャネル〟の創業者に由来する。
〝とんちんかんな 孤高のファッショニスタ〟の珍事件
でも、「姫体質」というわけではなく、ロケの朝食準備ではあらかじめご希望をうかがうのですが、「私は自分で持参しますのでお気使いなく」とわがまま成分ゼロ。「エレガントだなあ」と尊敬の念を抱いておりました。
が!ロケ先の某地方都市で珍事件が勃発しました。
女優さんがコーヒーをご所望されたのですが、その街にはコーヒーの専門店がありません。でも女優さんは「コンビニので全然OKよ」とおっしゃってくださりホッとした瞬間、「スタバじゃなきゃヤダ!」とマドモアゼル。駄々っ子か(笑)。
一瞬、緊張が走りましたが「マドモアゼルは女優より女優さんよね(笑)」という本物の女優さんのひと言でなし崩し的に場が和み、ことなきを得ました。
撮影後、衣装のブランド名や価格のテキストをメールで送っていただくのですが、マドモアゼルからまさかのひと言。「Wi-Fiの調子が悪いのでファクスで送りますね」
ファクス! 令和のこの時代にファクス! このエレガンスととんちんかんの絶妙なバランス、今後も珍事件が期待されます。
2024年Oggi2月号「クセあり人間観察ファイル」より
文/岡村佳代 イラスト/平松昭子
再構成/Oggi.jp編集部
岡村佳代(おかむら・かよ)
エディターでもあり、文筆家でもあり、ジュエリー&ウォッチジャーナリスト。バーゼル&ジュネーブの時計フェアなどの取材をこなす傍ら、その人脈を生かして、クセあり人間採集という新たなミッションに取り組む。