エディター・岡村佳代が出会った、あんな人やこんな人…。
長年ご愛読いただいた「メール内『男心』連絡網』改め、Oggi2024年1月号からのリニューアル新連載です。ざっくりいうと、日々私が見えない網を持って出かけ、「クセあり」人間採集を行い、ご報告するというあいも変わらぬ下世話さですが、よろしくおつきあいください。
私が身を置く業界は「クセあり人間」の宝庫です。「クセ」とはある意味「強めの個性」なので、クリエイティブな仕事には不可欠なのかもしれません。
第4回は、PR会社勤務の親方(仮名)のお話。PR会社には仕事ができる女性が多く、いつもお世話になっているのですが、親方はその中でもひときわ優秀で、親方の部下たちは恵まれているなと思ったものです。
そんな頼もしい親方にも意外な一面が…。
▲親方(仮名) 推定アラフォー/PR会社勤務
都内の大手PR会社の辣腕ディレクター。自ら「親方」を名乗り、部下の女性たちをきっちりまとめ上げ、数々の大きいプロジェクトを仕切っているが、威圧感はなく、明るくおおらか。…に見えるけれど、実はガラスのハートをもつ乙女。
メンタル繊細系親方
「岡村さんも親方って呼んでください!」
初めて会ったとき、彼女はそう言って胸を叩きました。本当に「ドン!」という音が聞こえてきそうな勢いで。
「お、親方」頼り甲斐のある言葉、たたずまいに、同性ながら私の目はハートになっていたと思う。惚れてまうやろー!
PR会社との関わりが深い、我々、編集やライター。PR会社には仕事ができる女性が多く、いつもお世話になっているのですが、親方はその中でもひときわ優秀で、親方の部下たちは恵まれているなと思ったものです。
そんな親方が率いるチームとの仕事が一段落し、親方と部下の女性3人と私で打ち上げをしたのですが、そこで事件が勃発しました。
「シクシク」――いい感じにできあがってきたと思っていた親方がすすり泣きし始めて。
「これだけルッキズムが社会問題になっているのに、なんでみんな親方って呼ぶの?」
えー!? 親方が「親方って呼んで」って胸叩いたんじゃんよー。混乱する私にOggi世代の部下たちは目で「ほっとけ」と。
親方がトイレに行った隙に彼女たちに聞いたところ「いつものこと」らしく、翌日にはケロッと「親方」に戻るのだそう。でも心配だなあ、親方、実は自分で自分を傷つけているんじゃないかなあ。
今度はサシで飲みに誘って話聞こうかな。と、思っていたら翌朝、親方からLINE。おすもうさんが「チラッ」しているスタンプ。愛の叩き込みかましてもいいですか?
2024年Oggi4月号「クセあり人間観察ファイル」より
文/岡村佳代 イラスト/平松昭子
再構成/Oggi.jp編集部
岡村佳代(おかむら・かよ)
エディターでもあり、文筆家でもあり、ジュエリー&ウォッチジャーナリスト。バーゼル&ジュネーブの時計フェアなどの取材をこなす傍ら、その人脈を生かして、クセあり人間採集という新たなミッションに取り組む。