撮影に臨むときはいつも、“少しローテンションな”“家にいる”感覚で
中学3年生のとき、住んでいた大分でスカウトされ、俳優の道に進んだ森さん。次々とオーディションで大役を獲得し、大ヒットアニメ映画『天気の子』では、2000人以上のヒロイン声優オーディションから抜擢。活動を始めてからの約6年間で、映画・テレビドラマ・配信ドラマなど、30作品近くもの出演を果たしています。
飽きっぽくて気分屋なのが、今の仕事には合っていました
「この仕事は私の天職。本当にそうなのかはわからないけれど、自分でそう思い込むようにしています。オフィスワークができるわけでもないし、何か考えて生み出すことができるわけでもありません。そして…、とっても気分屋です。
でも、飽きっぽくて気分屋なところが、今の仕事には合っていました。3ヵ月ごとに職場(仕事の現場)が変わるから、いつも新鮮な気持ちで臨むことができる。プレッシャーはあるけれど、そのぶん撮影し終わったときの開放感は、格別なものがあります。それまでは、あえて低いテンションに自分を置いているので、終わったとたん、イェ〜イって叫んじゃうくらい。
特に映画では、 “自由さ”を求められることが多くて、そこが難しくもあり楽しいところです。“私にできることってなんだろう”“どう表現しよう”と考えをめぐらすけれど、頑張りすぎちゃうと力が入ってしまうし、考えすぎると段取りになってしまいます。
だから撮影に向かうときは、“少しローテンションなくらい”で“家にいるような”感覚で。私なりの振る舞い方とタイミングで、“自由に”動き、しゃべる。そのせいなのか、緊張することはあまりありません」
落ち込んでも、不安でも、私の答えは「頑張る!」
森さんなりの「自由さ」で臨んだのが、最新主演映画『君は放課後インソムニア』。原作は、『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載中で、ファン層も広く大人気の漫画です。
森さん自身も学生時代から読んでいて、「(実写化するなら)ぜひ参加したい」と願っていた、思い入れの強い一作。念願かなって主人公・曲 伊咲(まがり・いさき)を演じた数カ月は、「かつて憧れていた日々」そのものだったといいます。
「私自身の高校時代は、大分に住みながらも仕事が始まっていて、東京と行き来する生活でした。小さな町では人の目も気にしてしまって、映画『君は放課後インソムニア』の高校生たちのように、自由でのびのびした生活は… あまりできなかったかな。
今思えば、何かに遠慮しながら過ごしていた高校時代だったけれど、映画を体験することで、同年代の仲間と共に改めて青春を味わうことができました」
映画の中では、不眠症を抱える伊咲(森 七菜さん)と丸太(がんた/奥平大兼さん)が、今とこれからの不安や悩みを共有します。主人公たちは高校生だけれど、不透明な将来に対する漠然とした思いは、働くOggi世代にも響くものがあります。
「私自身ももちろん、仕事をしていればうまくいかないこもあるし、自分より秀でている才能を目の当たりにして落ち込むこともあります。不安だって絶えないけれど、そんなときは、こう自分に問いかけます。
『どうする? いつでもやめていいんだよ』
でも自分の心はいつでも、『いや、頑張る!』。そう答えます。その理由は、最初に話したように、私にはやっぱりこの仕事しかないから。そして、つくってきた作品があり、私を推してくれた人たち、関わってくれた人がいるから。
人見知りだし、ネガティブなところもあるし、こんな自分を嫌だなって思うこともあるけれど、こんな私を肯定してくれる人がいる限り、その思いを無駄にしちゃいけない。そう思っています」
無邪気さとひとりでも生きていける強さをもった大人に
では、そんな森さんが目指す未来の自分像は−−。
「無邪気な少女っぽさと、ひとりでも“軽やかに”生きていける強さ、その両方をもった人。それが、私の考えるかっこいい大人です。
それには、まだまだ経験が足りないし、自分に多くを課してしまって軽やかさとは程遠い。でも、焦ってはいません。少しずつでも、きっと進んでるはずだから。
以前は避けていた紫キャベツもちょっと食べてみようか、とか、リュックばかりだったけれどバッグを手持ちしてみよう、とか(笑)。そういうことも含めて。
映画『君は放課後インソムニア』の伊咲は、心の奥に抱えているものがありながらも、私からみると強くてかっこいい。なんて魅力的なんだろうと思います。
(丸太役で共演した)奥平くんは、私のことを『伊咲と重なる』と言ってくれたけれど、いやいや、私は『かっこいい』には程遠いです」
原作の伊咲とそれを演じた森さんが、ビジュアル的に「そっくり」という声は多いけれど、その奥にある芯の強さも、実は共通ポイント。
森さん自身は「まだまだ」という「かっこよさ」ですが、映画の伊咲にはしっかり表れています。こんなところにも注目しながら、この作品を楽しむのも、おすすめです。
WEB Domaniでは、さらなる作品の見どころを森七菜さんが語っています。こちらもご覧ください。
映画『君は放課後インソムニア』6月23日全国ロードショー
原作は、『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で好評連載中、「君ソム」の愛称で大人気のコミック。石川県七尾市の高校を舞台に、曲 伊咲と中見丸太が学校の天文台で出会うことからストーリーが始まる。クラスでは話したこともないけれど、不眠症という秘密で繋がったふたりは、休み時間や放課後に天文台で昼寝をしたり、眠れない夜に街を散歩したり。しかし、ふたりが天文台を勝手に使っていたことがばれてしまい、立ち入り禁止の危機に迫られる。ふたりの安らげる場所を守るため、丸太は休部になっている天文部の復活を決意する。
出演:森 七菜、奥平大兼
原作:オジロマコト「君は放課後インソムニア」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中/単行本1~12集発売中)
監督:池田千尋
脚本:髙橋 泉 池田千尋
企画・制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
製作:映画「君ソム」製作委員会
配給:ポニーキャニオン
HP:kimisomu-movie.com
twitter:@kimisomu_movie
Instagram:@kimisomu_movie
***
衣装:イヤリング¥14,300・バングル¥22,000(ともに ete:0120-10-6616)※すべて税込み価格です。
撮影/渡辺きるけ。 スタイリスト/申谷弘美(Bipost) ヘア&メイク/池田ユリ(éclat) 取材・文/南 ゆかり
森 七菜(もり・なな)
2001年生まれ、大分県出身。映画『心が叫びたがってるんだ』(2017年)で映画初出演。2019年に公開された新海誠監督作『天気の子』、岩井俊二監督『ラストレター』(2020年)と立て続けに大作に抜擢され注目を浴びる。その他の出演作に、NHK連続テレビ小説『エール』(2020年)、『この恋あたためますか』(2020年)、『ライアー×ライアー』(2021年)など。Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』(配信中)では出口夏希とW主演を務める。2023年は映画『銀河鉄道の父』『君は放課後インソムニア』が公開、7月期の月9ドラマ『真夏のシンデレラ』では間宮祥太朗とW主演が決定。