いざ30代。変わる自分と変わらない自分の間で踏み出す新しい一歩
今の福士さんは、内側からわき上がってくる自信を武器に、新しいステージに挑もうとしている。そこには、慣れやおごりの気持ちは一切なく、新しい戸惑いや違和感さえも楽しもうという思いが上回る。
こんなふうに素直に、柔軟な気持ちで迎える30代。心も体もしなやかになるほどに、強く、美しく。福士さん自身がそれを証明している。
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2023年1月、厳冬のニューヨークに福士蒼汰さんは降り立った。この地を訪れるのはすでに3回目。とはいえ、マンハッタン郊外のブルックリンで実際に“暮らす”のは初めてで、わくわくを抑えきれずにいた。と同時に、自分の中でちょっとした変化が起こっているのも、感じていた。
1日も休まなかった英語とトレーニング。「自分への自信」が一緒についてきた
「最初に来たのは、21歳のとき。そのころに比べれば、独学で始めた英語は日常会話を楽しめるほどになったし、フィジカルトレーニングもこの3年休まず続けてきました。すると、自分への自信みたいなものも、一緒についてくる。
英語ができるとか、筋肉がついたから、という単純なことではなくて、“1日も欠かさずに続けてきた自分”への自信のようなものです。
英語もトレーニングも、やらなかったとしても、日常で困るものではありません。それをあえて続けて、乗り越えた先の自分だけがわかる、この感覚。言葉にするのは、少し難しいのですが(笑)。
そして、歳を重ねるほど、素直になる自分もいます。知らないことがあったら恥ずかしい、かっこ悪い、という意識が強かった20代前半。でも今は、知らないことを知らないと言えるし、学ばせて欲しいと人に乞うこともできます」
新しい戸惑いや違和感を楽しめる自分であり続けたい
期待の大きさに身構えても、新しい環境に身を置くことをやめたくない
変化を誇りに思いつつも、憧れていた30代を目前に、「変化しないこと」の大切さも感じている福士さん。
「30代を迎えること、キャリアを積むことで、周囲の目が変わってくることは、すでに感じ始めています。期待が大きくなるほど、身構えてしまいがちだけれど、だからこそ、新しい環境に身を置くことをやめたくない。
むしろ、新しい戸惑いや違和感を楽しめる自分であり続けたいと思います。そういうときこそ、自分が試されているのだと思うから」
「新しい環境に身を置くことを恐れない」のは、29歳で単身ニューヨークに渡ったFUKUも同じ。FUKUとは、“トレーニング・ドラマ”という新ジャンルの配信ドラマ『NoMAD Workout -FUKUトレin NY-』で福士さんが演じた主人公。
トレーニング・ドラマ『NoMAD Workout -FUKUトレin NY-』(U-NEXT独占配信中)
7年間勤めた会社を辞め、トレーニング動画配信者としてニューヨークへ向かったFUKU。トレーナーとしての活動のほか、彼のオフタイムも見もの。全25話。監督・脚本:清水康彦 トレーニング監修:横手貞一朗(Positive Link Studio)
日本での会社員生活を辞め、ニューヨークで配信専門のトレーナーという道を選んだFUKU。彼が配信する“FUKUトレ”は、呼吸から始まる基礎的なもので、運動が苦手な女性にぴったり。椅子に座ったまま仕事の合間にできるものも多いのが特長だ。
新しい挑戦は怖い。でも、自分を知るきっかけにもなる
「FUKUが目指ざした、自分から発信をすること、それで人に影響を与えること。これこそ、仕事の醍醐味なのだろうと思います。役者の仕事にも通じるものがありそうです。
ただ、実際に新しい挑戦をするとなると… 僕だって正直怖いです。でも、初めての場所は自分を知るよいきっかけにもなる。
みなさんなら、新しい職場は緊張するだろうけれど、どんな状況で尻込みをするのか、どんな環境を居心地よく感じるのか、客観的に自分を見ることができるのではないでしょうか。
意外と年上の人と関わるのが得意だとか、こんなこと言われるとムッとするんだ、なんて新たな発見があるかもしれません。そして、初めての段階から徐々に慣れていく気持ちよさを楽しめれば、きっと大丈夫。仕事でも、習い事でも」
自分のやり方に固執せず、逃げ道もつくっておく
FUKUのトレーニングの締め言葉は「You did it!(よくやった!)」。褒めて、励まして、気持ちよくさせてくれる。そして街に出れば、カフェやパブを訪れて、ジョークを交わしたり、新たな出会いを楽しんだり。頑張るだけでなく、力の抜き方もFUKUは上手なのだ。
「トレーニングが続かないという人はよくいるけれど、そんな人こそ、無理をせず息抜きをすること、“逃げ道”をつくっておくことをおすすめします。今日のトレーニングを終えたら甘いものを食べよう、友達とおしゃべりしよう、そんな小さなことでいいんです。
僕が海外で仕事をするときも同じで、逃げ道がないと精神的にキツくなります。だから、最初は自分のやり方に固執しないで、人にアドバイスされたらそのとおりにやってみる。そうやってたどり着いた場所が、きっと自分の居場所。案外、そのほうがうまくいくものです」
ずっと目指してきたのは“余裕のある大人”
学び、自信、そして力が抜けて、やっと目指すものに近づいてきた
ドラマとニューヨーク生活のドキュメントがミックスされたような『NoMAD Workout -FUKUトレin NY-』だが、もうひとつ注目すべきことがある。福士さんの英語力だ。
「最近の僕の勉強法は、ドラマや映画を観て、聞いて、セリフを丸暗記するやり方です。セリフの意味を理解しながら、完コピできるまで何度も繰り返し聞きます。
そして、覚えたセリフはいつでもぶつぶつひとり言で繰り返す。ヒアリング力もスピーキング力も、つきやすいと思います。ただ、英語を仕事で使おうと考えて始めたわけではありません。
何より、人と話すのが好きだから。スーパーのレジでも、カフェでも、店員さんと冗談を言い合うくらいの余裕をもって、暮らしを楽しみたい。… そういえば、僕がずっと目指してきたのは“余裕のある大人”でした。
学んだことが身について、自信がついて、そして力が抜けて。そうやって今、やっと目指すものに近づいてきた気がしています」
●この特集で使用した商品の価格はすべて、税込価格です。
2023年Oggi7月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/中田陽子(maetico) スタイリスト/小松嘉章(nomadica) ヘア&メイク/髙橋幸一(Nestation) 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
福士蒼汰(ふくし・そうた)
1993年生まれ、東京都出身。2011年、ドラマ『美咲ナンバーワン!!』で俳優デビュー。ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』などで注目を集める。近年の出演作にはドラマ『神様のカルテ』、『アバランチ』、ドラマ10『大奥』〈3代・徳川家光×万里小路有功編〉など。現在、主演ドラマ『弁護士ソドム』が放送中。