Oggi読者が抱える将来の不安とは
Q. 将来について、不安はありますか?
なんと9割近くの人が将来が「不安」と回答。コロナ禍や世界情勢など、先行きが見えない今を映し出す結果に。ちなみに不安に思う項目としては、「お金」がダントツ、次いで「仕事」「健康」が上位にランクイン。
Q. 将来の不安、具体的には?
「老後のお金、いくらあれば生きていける?」(38歳・ライター)
「この先、どれくらいの仕事がAIに取って代わられる?」(34歳・販売)
「今後、戦争がなくなり平和に暮らしていけるの?」(29歳・IT)
未来を数字で見てみたら、今、やることが見えてくる
30代前後の読者の多くが抱えている将来の不安について、未来を示す数字をもとに4人のプロが独自に分析。
長生きすると、老後に必要なお金もそれだけ増える!?
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年推計)より
「老後が長くなるほど生活資金が増えるのは当然。でも、老後にいくら“かける”かは自分しだい。自分が望む将来にはいくらお金が必要か、逆算して備えるしかありません。ただ、今使いたいお金もあるはず。将来ばかりを恐れず、“今を楽しみながら備える”意識は忘れずに」(横川さん)
「寿命の延びに伴い、仕事を辞める時期も後ろ倒しになるはず。終身雇用制度の廃止が相次ぐ中、企業が敷いたレールに乗るだけでは働き続けることは難しく、レールがあり続けるかもわかりません。長いキャリアを見据えて、『自分の喜びとなる働き方』を考え始める時期です」(土屋さん)
少子高齢化が、若者のお財布事情に直撃!
内閣府「05年度版・年次経済財政報告」の付注を参考に、法政大学教授・小黒一正氏が試算
「国民が生涯を通じて得る年金や医療費などの“受益”と、政府への“負担”との差額を世代別に計算した“世代会計”の格差が深刻に。たとえば年金は現役世代が高齢者を支える仕組みになっている以上、少子化が進めば、私たちがもらえる額が実質的に目減りしていくのは避けられません。
また、所得税や社会保険料は給料に対して決まるので、納める人口や額が減れば、雇用保険や育休手当など、各種給付金も下がる可能性が。いいことナシですが、まずはなぜこんな状況になっているのか知ること。『おかしい』と気づければ、選挙で意思表明するなど、具体的な行動も起こせます」(横川さん)
世界の勢力図にも変化が?
PwC「長期的な経済展望 世界の経済秩序は2050年までにどう変化するのか」(2017年)より
GDP=国内総生産とは、『ある国で一定期間に生み出された付加価値の総額』のこと。人口とGDPの伸びはある程度比例するため、世界で急速に人口が増えているインドはGDPも急成長、中国も緩やかに増加を続けるでしょう。ただ私はこの予測には懐疑的で、少なくとも今世紀中は、世界の貿易を握っているアメリカがトップをキープすると思います。
そもそも中国、インドは民族問題など抱える問題が多く、国内の統治に精一杯。世界情勢的に見ても、中国がいきなり世界の覇権を握るといった事態には至らないと考えてよさそうです」(田中さん)
少子化による人材不足も心配だけど…
マッキンゼー・グローバル・インスティテュート「The Future of work in Japan」(2020)より
「AIにできることは、任せてみるのもひとつの考え方です。『いいシステムがあれば導入する』『部下に任せられる仕事は任せる』のと同様に、『自分にしかできない仕事は何か』を考えるほうが建設的。人ともシステムとも上手に協力関係をつくれる人が、多くの組織から求められる人材になるはずです」(土屋さん)
「労働力不足を解消するなら、移民の受け入れも手。宗教の違いといった課題もありますが、日本が国を開けさえすれば人口構造のバランスなど改善される点も多い。多様な文化に刺激を受けるなど、ポジティブな側面もあります」(田中さん)
地球温暖化がすべての元凶に?
環境省「IPCC 第5次評価報告書の概要-第1作業部会(自然科学的根拠)-」(2014)より
「地球温暖化が進めば、海面水位が上昇して住んでいた場所を追われたり、気候の変動で食糧が育たなくなったりする。そんな現象が世界中で起きていて、そして確実に、刻々とひどくなっています。それでも世界の食料の1/3が毎年廃棄されているし、日本では二酸化炭素を多く排出する化石燃料への投資がまだ続いています。
環境問題に簡単な解決策はなく、また日本ではメディアや政治の場で環境問題が取り上げられることも少ないのが現実。まずは関心をもち、仲間たちと『どう思う?』と話題にするだけでも、大きな意識改革につながるはず」(マクティアさん)
水不足が紛争の原因にも…
世界気象機関(WMO)「The State of Climate Services 2021」©World Meteorological Organization, 2021より
「日本にいると飲み水に困ることは少ないですが、’20年時点ですでに20億人もの人が、安全な飲み水にアクセスできない状況になっています。このまま水不足が続けば、作物が育たなくなるのはもちろん、飲み水をめぐって国同士の争いが増えるとの予想も。人類にとって大きな課題になることは確実です」(マクティアさん)
「世界の人口が増えると、新興国での食の欧米化が進み、肉食が盛んになります。ただ、畜産は水や飼料穀物を大量に使い、環境問題の視点で言えば効率が悪すぎる。今後は代替肉やヴィーガンなど、食文化の変革も進んでいくのでは」(田中さん)
再生エネルギーが中心に?
経済産業省資源エネルギー庁「第7回発電コスト検証ワーキンググループ」(2021)より
「太陽光発電は、大量の設備投資などによって急激に普及。その結果、日本以外の多くの国でも、いちばん安いエネルギーであると発表され始めています。これは20年前には考えられなかったこと。前提を変えれば結果も変わるいい例となりました」(マクティアさん)
「エネルギー問題は正直、何が最も有効な方法かまだ手探りな部分も多い分野。事故などがあったときのためにも、選択肢は多いほうがいい。再生エネルギーはもちろん、原発も新しい炉なら安全性が高いなど、リスクを冷静に見たうえで環境といかに共存していくか、議論と研究を進める時期に来ていると思います」(田中さん)
教えていただいた4人のプロの方々
日本金融教育推進協会 代表理事
横川 楓(よこかわ・かえで)
’90年生まれ。「やさしいお金の専門家」として「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識や金融教育の普及に取り組んでいる。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)。
エスキャリア代表取締役 キャリアコンサルタント
土屋美乃さん(つちや・よしの)
’83年生まれ。慶應義塾大学卒業後、リクルートエージェント(現リクルート)に就職。採用支援、人材紹介などを経て、’09年より現職。「自分らしいキャリアの実現」をテーマにさまざまなキャリア支援を行う。
Social Innovation Japan 代表理事・共同創設者
マクティア マリコ
’89年生まれ。ロンドン大学卒業後、中日新聞社ロンドン支局、駐日英国大使館を経て’17年から現職。サステナビリティ関連プロジェクトの一環として、ペットボトルの削減を図る無料給水アプリ「mymizu」の立ち上げを行う。
国際政治記者
田中孝幸(たなか・たかゆき)
’75年生まれ。新聞記者として20年以上のキャリアを積み、40か国以上で政治経済から文化に至るまで取材。初の著書『13歳からの地政学』(東洋経済新報社)が10万部超のヒットに。
2022年Oggi10月号「私たちの未来予想図2022」より
イラスト/akira muracco 構成/スタッフ・オン
再構成/Oggi.jp編集部