飲食店やスーパーなどでよく見かける「黒ビール」。どうして色が真っ黒なのだろう? と疑問に思ったことはありませんか? そこで今回は、「黒ビール」が黒い理由や味の特徴、「黒ビール」によく合うおつまみなどを紹介します。
「黒ビール」とは?
「黒ビール」とは、麦芽を焦がして醸造した濃い色のビールのこと。日本では濃い色の麦芽を原料の一部に使用したビールを「黒ビール」と呼んでいます。真っ黒な見た目がインパクトがある「黒ビール」ですが、その味の魅力はコクと風味の強さ。じっくりとローストした麦芽を使っていることで、深みのある味わいが楽しめます。
通常のビールは、冷蔵庫でキンキンに冷やして喉越しとキレを楽しみますよね。しかし、「黒ビール」で重視したいのは、コクと香り。あえて少しぬるめの温度(13℃程度)にして飲むことで香りが際立ち、豊かな風味を感じられるのが「黒ビール」の魅力なのです。
ちなみに、通常のビールはアルコール度数が5%程度ですが、「黒ビール」は5%〜10%とやや高め。いつも飲むビールと同じ感覚で飲んでいると、思った以上に酔いが回ってしまった! なんてこともあるでしょう。
「黒ビール」はなぜ黒い?
ではどうして、「黒ビール」は黒いのでしょうか? それは、ビールの原材料に理由があります。ビールの主な原材料は「麦芽、ホップ、水、酵母」の4つ。どれか一つでも欠けてしまうとビールは出来上がりません。「黒ビール」が黒いのは、使用している「麦芽(モルト)」の色が黒いためです。
そもそも「麦芽」とは、大麦を発芽させて乾かした後、さらに80℃の熱風を送り込み焙燥させたものです。このときの温度や乾燥時間で麦芽は2種類に分けられます。
1つ目が、80℃の低温でじっくり焙燥して作られる「ベールモルト」。文字の通りビールの基礎となる麦芽で、アルコールの素となります。2つ目が、100℃以上の高温で焙燥する「スペシャルモルト」。焦がして濃い色になったことから、ビールの色を変化させたり、味にコクや甘み、フレーバーをつけてくれますよ。
「黒ビール」が黒いのは、この「スペシャルモルト」の中でも濃い「ブラックモルト」や「チョコレートモルト」と呼ばれる麦芽を使っているからなのです。ただし、たくさん使ってしまうと渋みが出てしまうので、焦げた麦芽の割合は全体の数%〜10%のみ。ほんの少し加えるだけで、しっかりとビールを黒くしてくれるのです。
「黒ビール」の種類
日本では、色が黒っぽいビールのことをまとめて「黒ビール」と呼ばれています。しかし、実際には生産している国や原材料によって味わいが変わるので、「黒ビール」には大きく分けて4つの種類があるのです。
1:デュンケル
「デュンケル」は、ドイツ発祥のビアスタイル(種類)。ミュンヘンで古くから作られているブラウン色のラガービールです。デュンケルとはドイツ語で「暗い」という意味で、「ダークビール」とも呼ばれます。真っ黒になるギリギリまで焙煎していることから、麦芽の風味が強く、ホップの香りと苦味は控えめ。口当たりが軽く、すっきりとした味わいです。
2:シュバルツ
「シュバルツ」は、ドイツのバイエルン発祥とされる黒色のラガービール。シュバルツはドイツ語で「黒」のことです。真っ黒に焙煎した麦芽には、ビターチョコレートやコーヒーのような香ばしさが感じられます。色は真っ黒ですが、喉越しがよくすっきりとした味わいです。ちなみに日本の大手メーカーの「黒ビール」は、この「シュバルツ」が多いそう。
3:ポーター
「ポーター」は、イギリス発祥のエール系ビール。「黒ビール」ならではの香ばしさとホップの苦味が味わえます。炭酸があまり強くなく、アルコール度数も比較的低いので、アルコールが苦手な方はこちらが飲みやすいかもしれません。濃厚な味わいや、まったりとした口当たりが楽しめるビールです。
4:スタウト
「スタウト」は、アイルランド発祥のエール系ビール。「黒ビール」らしい真っ黒な色合いと、ほろ苦さ、クリーミーな泡が楽しめます。「強い、どっしりとした」という意味の「スタウト」が由来で、アルコール度数が高く濃厚な味わいが魅力です。
おすすめの「黒ビール」
もともとはあまり馴染みのなかった「黒ビール」ですが、近年スーパーなどで様々な種類を見かけるようになりました。せっかくならお家でも気軽に楽しみたいですよね。日本で定番の「黒ビール」をみていきましょう。
1:サッポロエビス プレミアムブラック
日本の大手ビール会社、サッポロビールが手掛ける「黒ビール」。麦芽を炭火でじっくりと焙煎した「プレミアムロースト麦芽」を贅沢に使用した、とっておきの「黒ビール」です。麦芽の香ばしさと芳醇なコクを楽しみたい方に。
2:ドラフトギネス
アイルランドで創業したギネスが手掛ける「黒ビール」。甘味と苦味のバランスが良く、滑らかでクリーミーな口当たりが特徴です。アルコール度数は4.5%と一般的なビールとほぼ同じなので、強めのお酒が苦手な人にも飲みやすい味わい。
3:よなよなの里 東京ブラック
1996年に創業以来、こだわりのエールビールを綴り続けてきた「よなよなの里」の「黒ビール」。コーヒーやココアを思わせる香りと滑らかな口当たりが特徴です。日本での喉越し命のビールとは違い、エールビールは香りとコクが命。少しぬるめの13℃が香りが引き立つ美味しい温度です。
「黒ビール」に合うおつまみ
通常のビールのおつまみといえば、枝豆や焼き鳥などが定番ですが、「黒ビール」にはどんなものが合うのでしょうか? 「黒ビール」と合わせたい、おすすめのおつまみを紹介します。
1:いぶりがっこのクリームチーズ和え
スタウトのどっしりとした深みのある味には、癖のあるおつまみを合わせると○。いぶりがっこの燻した風味がスタウトの香ばしさとマッチするのだとか。いぶりがっこを刻みクリームチーズと和えるだけなので、自宅でも簡単に作れるのが嬉しいですね。
2:ジャーマンポテト
ビールに合った洋風のおつまみなら、ジャーマンポテトがおすすめ。ドイツビールには定番の一品です。じゃがいもの素朴な味わいに、「黒ビール」のロースト感がいいアクセントになります。じゃがいもとベーコン、玉ねぎとシンプルな材料で作れるのも高ポイント。ぜひ「黒ビール」と合わせてみてはいかがでしょうか?
3:ティラミス
香りとコクのある「黒ビール」には、ティラミスやチーズケーキなどのスイーツとも相性抜群。ティラミスのカカオパウダーのほろ苦さと、マスカルポーネの滑らかな甘みが「黒ビール」と絶妙にマッチします。大人の味わいを楽しみたい方に◎。
最後に
「黒ビール」が黒い理由は、じっくりローストした麦芽に秘密があったんですね。「黒ビール」は、通常のビールより炭酸が控えめで時間を気にせず飲めるのも魅力。ゆっくりしたい日の夜に、「黒ビール」を飲みながら素敵な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
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