「老舗」の意味や読み方とは?
「老舗旅館」や「老舗料亭」などに使われる「老舗」という言葉。旅館やお店を決める際に「老舗」と名がつくお店についつい目がいってしまう… という方も多いかもしれません。しかし、その「老舗」の定義を聞かれると、案外曖昧なのではないでしょうか? そこで今回は、「老舗」の意味や日本の有名な「老舗」、「名店」や「元祖」などの類語などを解説します。
意味や読み方
「老舗」の読み方は、「しにせ」と「ろうほ」の2通りあります。いずれも意味に違いはないようで、「昔から何代も続いている店」のことを指します。また、一般的に「代々続いて同じ商売をしている格式・信用のある店」「先祖代々の家業を守り継いでいる店」が「老舗」と呼ばれる店の特徴です。
次に「老舗」の文字からその意味を読み解いていきましょう。「老舗」は、動詞「仕似す(しにす)」が由来といわれています。「仕似す(しにす)」とは、簡単にいうと「似せる、真似する」という意味で、創業者から親の代までが受け継いできた技術を真似し、繰り返すことからそう呼ばれたようです。やがて「仕似す(しにす)」が名詞化され、現在の「しにせ」となりました。
また、「老舗」の「老」は、「長い経験を積んでいること」。「舗」は、「商品を並べる店」を指すことから「しにせ」の当て字となったと言われています。
「老舗」とは何年以上のこと?
一体何年以上を「老舗」と呼ぶのか気になるところですが、「老舗」の年数に関しては明確な基準はないようです。ただし、東京商工リサーチによると、創業から30年以上の企業を「老舗」とするという考えも。
一般的に「老舗」が多い業種としては、和菓子製造業、酒類製造業、仏壇・仏具製造・販売業などの伝統産業です。その一方で、IT業界など比較的新しく、企業の競争が激しい市場では、10年程度で「老舗」として扱われることもあるようです。
類語や言い換え表現とは?
「老舗」とよく似た言葉には、「名店」「元祖」「名門」などが挙げられます。それぞれどのような特徴があるのでしょうか? 一緒にみていきましょう。
1:名店
「名店(めいてん)」は、「名高い店、有名店」のことです。TVや雑誌などでは、「老舗」と組み合わせて「老舗の名店」と呼ばれることもありますね。「老舗」には、長い歴史のある伝統に重きをおいた言葉であるのに対して、「名店」は、有名店として人気と実力を兼ね揃えた店という意味合いが強いです。このような有名店が並んでいる町筋を「名店街」と言ったり、デパートの地下の売り場のことを「地下の名店街」と呼びます。
2:元祖
「元祖(がんそ)」とは、「物事を最初に始めた人やその店」のこと。元々は「家系や一族の最初の人(始祖)」や「仏教の宗派の開祖」のことを指す言葉でしたが、後に「ある商品を最初に売り始めた店」にも使われるようになりました。「元祖」と名の付く商品として有名なものは以下の通りです。
・元祖エイセイボーロ… 明治26年に京都で創業した「西村衛生ボーロ本舗」の看板商品。口に入れるとふんわりと広がる、懐かしい風味が美味しい京焼き菓子です。素朴なプレーン味から、抹茶ボーロ、トマトボーロ、紫いもボーロなどがあるそう。
・元祖きびだんご… 安政3年に岡山県で創業した「廣榮堂本店」のきびだんご。岡山名物黍団子の伝統の味です。「元祖きびだんご」は国産のもち米に砂糖と水飴、きびを加えた素朴な味。黒糖きびだんごやきなこきびだんご、白桃きびだんごもあるようです。
・元祖植田のあんこ玉… 昭和4年に創業した「植田製菓工場」が販売するお菓子。あんこの周りにきなこがまぶしてある昔ながらのおやつです。昔は10円で売られており、中に砂糖の玉が入っていると当たりで、大玉がもらえたのだとか。レトロなデザインのパッケージは、お土産に持ち帰りたくなります。
3:名門
「名門(めいもん)」とは、「由緒ある家柄や名家、または有名な学校や団体」を指します。由緒のある点は「老舗」と同じですが、家柄や学校に対して使われるところが異なります。伝統と長い歴史のある有名な学校のことを「名門校」と呼びますね。
日本の「老舗企業」とは?
世界の中でも日本は特に長い歴史を持つ「老舗企業」が多い国と言われています。ここでは、建設業や旅館、和菓子店など各分野の「老舗」を紹介しましょう。
金剛組(建設業)
日本の代表的な「老舗」は、「金剛組」という建設会社。創業1400年以上の世界最古の企業と言われています。場所は大阪の天王寺区にあり、578年に四天王寺建立のため聖徳太子から呼び寄せられた百済人、金剛重光が設立したと言われています。はるか昔から日本の寺社仏閣を支え続けた宮大工集団です。
慶雲館(旅館)
世界最古の宿としてギネス認定も受けている「慶雲館(けいうんかん)」。山梨県早川町の深い山々に囲まれた秘境の地にたたずむ「老舗の温泉旅館」です。その歴史は飛鳥時代まで遡り、開湯以来徳川家康をはじめ多くの武将や文人に愛されてきたそう。地元の山の幸をふんだんに使った「深山懐石」やどんぐりの粉が練り込まれた「どんぐり麺」が名物です。
虎屋(和菓子店)
「虎屋の羊羹」でお馴染みの「虎屋」は、日本を代表する「老舗和菓子店」。室町時代後期に京都で創業しました。安土桃山時代には、後陽成天皇の在位中から御所の御用を勤めています。明治2年に都が東京に移るのに伴い「虎屋」も、天皇にお供して東京に進出しました。小倉羊羹「夜の梅」や季節の生菓子、菊や桜をかたどった最中など様々な和菓子が揃っています。
最後に
和菓子店や旅館、建設業など日本には様々な「老舗」があることがわかりました。「老舗」には明確な定義はありませんが、「創業が古いこと」「代々伝統技術が受け継がれていること」「由緒や信用があること」などが、「老舗」と呼ばれるお店の共通点と言えそうです。自分にとってお墨付きの「老舗」を見つけてみてはいかがでしょうか?
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