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「スズラン」ってどんな花?
小さいベルのような形の花が可愛らしい「スズラン」。「スズラン」という名前は、葉が蘭に似ており、花が鈴のように見えることからつけられました。別名「君影草(きみかげそう)」と呼ばれることもあります。「スズラン」は、ユリ科の多年草で、5月頃になると鐘型の純白色の花を5個〜10個ほど咲かせるのが特徴。「スズラン」といえば、白い花のイメージが強いですが、赤やピンク、黄色、紫などもありますよ。
「スズラン」は、うつむくように下を向いて咲いている姿が特徴的で、ほんのりと芳香があります。分布は、中部地方より北の地域や北海道、アジア北部など。一般的に草地や庭に咲く姿を鑑賞するイメージがありますが、切り花としても利用されているようです。
日本では、江戸時代に園芸ブームが起こり、様々な種類の花が市民の間に知れ渡ることになりますが、「スズラン」は姿を見せません。一般に知られるようになったのは、明治時代の終わり頃とされています。ちなみに、北海道のアイヌの人々は、「スズラン」のことを「セタプクサ(イヌのギョウジャニンニク)」や「チロンヌプキナ(キツネのギョウジャニンニク)」と呼んでいたようです。
「スズラン」の名前の由来
「ドイツスズラン」の学名が「Convallaria majalis」であるのに対して、日本に自生する「スズラン」の学名は「Convallaria keiskei」。この「keiskei」は、日本の植物学者・伊藤圭介氏の名前からつけられたといわれています。植物学者、医師、そして理学博士でもあった伊藤圭介氏。長崎に遊学して、世界的に有名な植物学者・シーボルトに師事していたそうです。
「スズラン」の花言葉
「スズラン」の花言葉は、「純粋」や「謙虚」「再び幸せが訪れる」など幸福感のある花言葉が揃っています。花言葉にはよく怖い意味が含まれていることもありますが、「スズラン」に関しては、そのような花言葉はありません。それでは、詳しい意味を見ていきましょう。
1:純粋・純潔
「スズラン」の花言葉は、「純粋・純潔」です。「スズラン」の花の形が、聖母マリアが被っているベールに似ているため、ヨーロッパでは聖母マリアの花とされてきました。純白でどことなく控えめな印象のある「スズラン」に、ぴったりの花言葉ですね。
2:謙虚
「スズラン」には、「謙虚」という花言葉も。「スズラン」の花が大きな葉に隠れるように咲く姿から、このような花言葉がつけられたといわれています。
3:再び幸せが訪れる
「再び幸せが訪れる」も、「スズラン」の花言葉の1つ。ヨーロッパなどの寒い地域に住む人々にとって、春に咲く「スズラン」が温かい季節の象徴とされてきたことに由来します。「スズラン」は春の到来を告げる花でもあるようですね。
「スズラン」の育て方とは?
「スズラン」を自宅で育てたい場合、植え付けの時期は4月〜5月、10月〜12月上旬が適しています。地植えでも鉢植えでも育てることができますよ。「スズラン」は、寒さには強いですが、暑さには弱いため、花壇や庭に植える際には直射日光を避けた場所に植えましょう。
また、「スズラン」は、水捌けのいい土壌を好むため、腐葉土や堆肥などの有機物を混ぜ込むとよく育ちます。鉢植えの場合、土の表面が乾いてきたらたっぷりと水をあたえましょう。5月〜6月頃に可愛らしい花姿を見ることができますよ。
「スズラン」の種類
「スズラン」は、日本では古くから自生している「君影草」と呼ばれる「スズラン」がありますが、現在園芸種として人気が高いのはヨーロッパ原産の「ドイツスズラン」です。ここでは、主な「スズラン」の種類を紹介しましょう。
1:スズラン
日本に古くから自生する「スズラン」は、「君影草」とも呼ばれ、本州中部より北の地域や北海道の山地、高原の草地などに生えています。葉が細く、花が葉よりも低い位置で咲くのが特徴です。夏になると葉が焼けやすくなるため、半分日陰になるところで育てるのがおすすめです。
2:ドイツスズラン
現在日本で多く育てられている園芸品種は「ドイツスズラン」です。ヨーロッパ原産で、花が大きく葉幅も広く、観賞用として人気。ヨーロッパで行われる五月祭では、「ドイツスズラン」を花束にして祝う習慣があるため、「May Lily」とも呼ばれます。芳香が強く、香水の原料にも利用されていますよ。
3:ピンクスズラン
「ピンクスズラン」は、「ドイツスズラン」の園芸品種で、ほんのり淡いピンク色の花が特徴。通常の「ドイツスズラン」よりも花が小ぶりですが性質は丈夫です。
「スズラン」の逸話
「スズラン」には、古くから語られる逸話があるので紹介しましょう。森の守護神である聖レオナードは、ある時、森の中で恐ろしい大蛇と遭遇します。その大蛇はレオナードに火や毒を飛ばし、襲いかかってきました。三日三晩熾烈な戦いを繰り広げ、聖レオナードは見事大蛇に勝ちますが、瀕死の重傷を負い、その場に倒れてしまったのです。
彼の鮮血が、徐々にあたりの草や木を染めていきました。すると不思議なことに、血塗れの草地から「スズラン」が咲き乱れ始めたのです。「スズラン」は、森の聖霊たちが彼を称えたもので、彼のことを癒したとされています。
「スズラン」に毒があるって本当?
「スズラン」は、花と根に多くの毒を持っていることを知っていますか? 毒には強心作用のあるコンバラトキシン、コンバラマリンなどが含まれます。触れる分には特に問題はありませんが、体内に摂取すると、頭痛やめまい、嘔吐、血圧低下、心臓麻痺などの症状が現れ、最悪の場合、死に至ることも。子どもやペットが誤って口にしないよう気を付けましょう。
最後に
聖母マリアの花とされ、清らかさの象徴でもある「スズラン」。日本では、春の到来を告げる花として桜が代表的ですが、ヨーロッパなどの寒い地域では「スズラン」がその役割を担っているようですね。
「スズラン」には縁起のいい花言葉がつけられていることから、海外ではウェディングブーケとして使用されています。また、フランスでは5月1日を「スズランの日」として、親しい人へ「スズラン」を贈る風習もあるようです。春には、花壇や山道にひっそりと咲く「スズラン」に目を向けてみてはいかがでしょうか?
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