「ナデシコ」ってどんな花?
小さく淡いピンク色の花が可憐な「ナデシコ」。花びらがギザギザとしており、どことなく繊細な印象を与えるため、古くから女性に例えられてきました。日本の理想的な女性を表す「大和撫子」や日本の女子サッカーチーム「なでしこジャパン」が有名ですね。今回は、日本で古くから親しまれてきた「ナデシコ」を紹介します。
「ナデシコ」の特徴
「ナデシコ」は、ナデシコ科ナデシコ属の多年草で、原産地はアジア、ヨーロッパ、北アメリカなど。北半球地域を中心に約300種類が分布しています。日本では、秋の七草の一つである「カワラナデシコ」や「ハマナデシコ」など4種類が古くから自生しています。ちなみに、母の日に贈られる「カーネーション」は、「ナデシコ」の一種である「セキチク」などを交配させて作った園芸品種です。
主に4月から8月頃に開花しますが、園芸品種では四季咲きのものも多く、通年に渡り鑑賞できるものも。耐寒性が強く花壇や鉢植え以外に、切り花として利用されることもあります。
自宅の庭で育てる際には、日当たりが良く、水捌けの良いところを選びましょう。暑い時期の湿気に弱いので、蒸れないように風通しをよくしておくことも必要です。何年か育てて古株になると弱って枯れることもあるため、種をまいたり挿し芽をして増やしましょう。
「ナデシコ」の由来
「ナデシコ」は、漢字で「撫子」と書きます。小さなピンク色の花を昔の人は、可愛らしい子供や女性の姿に重ね合わせたのでしょう。「撫でたくなるほど可愛い子」ということから「撫子」といわれるようになったそう。日本最古の和歌集である『万葉集』にも「ナデシコ」を歌った歌が26首ほどあり、そのうちの8首が愛しい女性を「ナデシコ」に重ね合わせたものとなっています。昔から、女性との関わりの深い花だったようですね。
「ナデシコ」の花言葉とは?
繊細ではかなげなイメージを持つ「ナデシコ」。「ナデシコ」の一般的な花言葉は、「純愛」や「貞節」「無邪気」。いずれも、女性や子供を連想させますね。実はこの花言葉以外にも、「ナデシコ」には、花の色別に花言葉がつけられているのです。ここでは、ピンク・赤・白の花言葉を紹介しましょう。
1:ピンクの「ナデシコ」の花言葉
ピンク色の「ナデシコ」の花言葉は、「純粋な愛」。桃色の小さな花であることから女性の姿にも例えられ、この花言葉が付けられたとされています。繊細な花の様子が一途な愛を物語っていますね。
2:赤い「ナデシコ」の花言葉
赤い「ナデシコ」の花言葉は「燃えるような愛」「大胆」です。情熱的な赤いイメージからでしょうか。ちなみに「大胆」は英語の花言葉で、西洋の赤い「ナデシコ」から付けられたといわれています。日本と海外では異なる意味をもつことも面白いですね。
3:白い「ナデシコ」の花言葉
白い「ナデシコ」の花言葉は、「器用」「才能」です。詳しい由来は定かではありませんが、何色にも染まらない白い花姿に、特別な能力や才能を感じたのかもしれません。
「ナデシコ」の種類
日本特有の花というイメージのある「ナデシコ」ですが、意外にも世界各地で自生している植物です。ここでは日本の「ナデシコ」を中心に紹介します。自宅で育ててみたい方は、参考にしてみてくださいね。
1:カワラナデシコ
日本各地に自生する代表品種で、「ヤマトナデシコ」とも呼ばれます。花びらに深く切れ込みがあるのが特徴です。萩や桔梗、女郎花(おみなえし)などとともに「秋の七草」のひとつ。名前に「河原」がつきますが、日当たりのいい草原や山地などにも生息します。
近年では、外来種の影響で、数が減少している品種です。背丈がすらっと高いので、株をまとめて植えて華やかさを求めるよりは、和風の庭に点在させるような植え方が似合います。
2:セキチク
「セキチク(石竹)」は、平安時代に中国から渡来した品種で、「カラナデシコ(唐撫子)」とも呼ばれます。葉の形が竹に似ていることから名付けられたそう。開花時期が長い四季咲きの品種です。この「セキチク」が品種改良され生まれた「トコナツ(常夏)」は、江戸時代に流行したといわれています。
3:ヒゲナデシコ
「ヒゲナデシコ」の原産地はヨーロッパ。苞の先端がひげのように伸びていることから、この名がつきました。茎の先端にたくさんの小花が咲き、種からもよく育ちます。
4:タツタナデシコ
「タツタナデシコ」は、ヨーロッパに分布するナデシコ科の多年草です。カーネーションなどの園芸品種の親であるともいわれています。花には蛇目模様があるのが特徴で、4月から5月にかけて開花しますよ。
5:ヒメナデシコ
「ヒメナデシコ」は、ヨーロッパ原産の園芸品種。草丈が低く、秋になると鮮やかな紫色の花を咲かせます。欧米では人気の品種で、発芽しやすく、こぼれ種でもよく増えるそうですよ。
6:ハマナデシコ
日本や中国で分布する「ハマナデシコ」。海岸や砂地に生息することからその名がついたとされています。別名「フジナデシコ」「ベニナデシコ」とも呼ばれ、葉が厚くつやつやしているのが特徴です。7月から10月頃に開花します。
7:伊勢ナデシコ
江戸時代の園芸ブームで人気となった植物の一つが「伊勢ナデシコ」。花弁の先が細く裂け、長く垂れている姿を幽玄と表現する人もおり、独特な印象を持つ品種です。「カワラナデシコ」と「セキチク」を交配させて作られました。寺院の庭などで育てられていることもあります。
最後に
小さく可憐な花が印象的な「ナデシコ」。古くは『万葉集』の書かれた時代から、女性や子供のたとえとして用いられてきたなんて驚きましたね。花束やフラワーアレンジメントで使われる花とは違い、どこか古風で奥ゆかしさを感じさせる「ナデシコ」。まさに、理想の日本女性「大和撫子」とそっくりな魅力がありますね。
「ナデシコ」は、高温多湿に気を付けていれば、比較的育てやすい品種でもあります。四季咲きのものを選べば、長い期間花を鑑賞することができますよ。たくさんの種類の中からお気に入りのものを見つけて、自宅のお庭でも楽しんでみてはいかがでしょうか?
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