人が心をひらくには順番がある
人と話をする時、理解しておくべきことがあります。
それは「人は誰しも、なんらかの不安を抱えている。まずは相手に好かれようとたくさん話すことより、その不安をなくしていくことのほうが先である」ということです。
不安な状態のまま、心をひらくことはありません。まずは相手の不安を安心に変える必要があるのです。人といいコミュニケーションを取っていくためにまず大切なこと。それは「好かれる前に、まずは嫌われないこと」です。
「あ、この人は安心できるな。話しても大丈夫かも」と相手に思ってもらうことが大切なのです。私自身、これまでたくさんの人と出会ってきました。
その中で、「この人はなぜ初対面でこんな聞き方をするんだろう?」と、とてももったいなく感じてしまう人は少なくありませんでした。ただでさえ警戒心を持っている人の心の鍵をさらに強化させてしまうと、その後にいくら相手に好かれようと思っても、鍵を開けるのにものすごくエネルギーがかかってしまいます。
北風の話し方、太陽の聞き方
有名な寓話で「北風と太陽」という話があります。ご存知の方も多いですよね。
ある日、北風と太陽が話をして「どっちが先にあの旅人の服を脱がせることができるか競争しよう」とゲームをします。北風は「これでもか」というくらい風を吹かせますが、旅人は服を飛ばされないようにコートをしっかりと握り締めます。これに対して太陽は暖かく旅人を照らします。やがて暖かくなった旅人は、自分からコートを脱ぎます。太陽の勝ち。
簡単にまとめるとこんなストーリーです。これは私たちのコミュニケーションや人間関係において、とても役に立つ話です。
旅人は、まさにあなたの目の前にいる人です。
その人に自分の思いばかりを一方的に話したり、自分の考えばかりを押しつけるのは北風タイプ。
これに対して、相手の話を小さなことから真摯な態度で、まるで毛布で包みこむように温かく傾聴していくのが太陽タイプ。
どちらが先に相手の心をひらくかは、簡単にイメージしていただけると思います。
プレッシャーのかからない会話ができるところに人は集まる
「生きとし生けるすべてのものは幸せへと向かう」
これは私が大切にしている考え方です。あらためて覚えておくととても役に立つ真理です。
「そんなの当たり前のことじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、このシンプルなことを、意外と人は見落としがちになってしまいます。
そのせいで相手のことを考えずに、自分の話ばかりを優先してしまったり、人の気持ちを傷つけたりしてしまうこともあります。
あなた自身が幸せに向かっているように、相手も幸せに向かって生きているのです。
ですから自分を傷つけようとしたり、否定しようとする人のところからは離れていきます。そして自分の心を明るい方向に導いてくれる人、自分のことを理解してくれる人、自分を温かく迎え入れてくれる人、自分の話をちゃんと受け止めながら聞いてくれる人のところに集まります。
特に日常会話を基本としたコミュニケーションの場では、なるべくプレッシャーのかからないところに集まります。仕事ならともかく、プライベートの場で、進んで嫌な気持ちになる人との時間を過ごすことはまずありえません。
相手に好かれる前に、まずは相手の心に安心感を与え、不安を取り除くこと。
そのために、まずは「やるべきこと」より「これはやらない」と決めることが大切です。
話を聞く時に、やると損することを9個にまとめてみました。この連載では、「聞き方で損しないために覚えておくと役に立つこと」をお伝えしていきます。ともに考えていきましょう。
最後に、100%好かれる聞き方のコツは、「否定せずに聞いてくれる人のところに人は集まる」です。
次回は、嫌われない聞き方について紹介します。
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永松茂久(ながまつ・しげひさ)
株式会社人財育成JAPAN代表取締役。大分県中津市生まれ。「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で数多くの講演、セミナーを実施。「人のあり方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累積動員数は延べ45万人にのぼる。2021年1番売れた本『人は話し方が9割』(すばる舎)をはじめ、著書多数。