コロナ影響の中、フードデリバリーサービス企業で執行役員になった、オッジェンヌ 大枝千鶴さんにインタビュー!
「今はきっと、知識やスキルを蓄えるとき。2020年にひとり暮らしであることの意味を考えた」
大枝千鶴さん(35歳・IT関連会社勤務)
東京都出身。大手IT関連会社を経て、同業種にヘッドハンティングされ新サービスの立ち上げに従事。2020年春よりグループ会社の管理職に就任。多忙な日々でも歌舞伎鑑賞と読書を欠かさない。
ブラウス¥15,400(バナナ・リパブリック) ピアス¥63,800・リング¥159,500(ウノアエレ ジャパン〈ウノアエレ〉)
プレッシャーと闘いながら約100人をまとめる日々です
最近はほぼ毎日出社し、10~18時の間は8~10本のミーティング。オンラインでは表情が読めなくて相手を困らせたくないので、マスクを取って参加できるようにひとり会議室へ行きます。自宅でも最新ガジェットと大きなデスクを完備してリモートワーク時も快適に集中。ワークライフバランス大丈夫!? とたまによぎるけど(笑)、今の自分にしかできない仕事に、本気で打ち込めるのが幸せ。
「『フードデリバリーの日本一を獲る』そんな経営目標を受けて、グループ会社への出向が決まったのが2020年の4月です。元々勤めていたIT企業が成長性を見込んで経営統合した会社。マネージャーとして入ってから営業本部副本部長を務め、半年後に執行役員になりました。
2社が一緒になるのはただでさえ難航しますし、私は飲食業界未経験です。外からズカズカ入ってしまうと反発もあるだろうと覚悟していたのですが、まだ本格着任する前にコロナの影響が拡大。外出自粛で、出前の需要が急に高まって業務がパンクしてしまっていたんです。疲弊しきったメンバーを前に遠慮している場合ではなく、『こうしたほうがいい』とできうるかぎりの提案をしていきました。
デリバリー業界にとってはある意味追い風のような『緊急事態』でしたが、従来のオペレーションが通用せず、成長規模とスピードは10倍!? というような状況。まずは全部自分でやってみないと現場のことがわからないし指示も出せないので、泥臭い仕事も含めて手を動かして。とにかく毎日、目の前のことに必死でしたね。
執行役員になると100名弱の部署を見ながら、さらに会社全体のことを考える視座が必要とされます。自分の仕事に自分で100点をあげられず、妥協案を選択する日々。これで評価されていいのかなと思っていたけど、仕事って妥協案の中でも、なんとかよりよくしていくもの。1mでも1cmでも前に進もう、という思いでやってこれた気がします」
マネジメントの正解がわからず、何冊もの本が心の支えに
在宅勤務が一般的になり、体制も変わる中でのマネジメントに迷い、本をたくさん読みました。大きなヒントになったのは、「心理的安全性」。
人は畏縮すると本来の力を発揮できないので、ゴールを示したら行き方には細かく口出しせず、メンバーの主体性に任せるようにしています。ただし、同等以上の役職の人には臆せず主張。心理的安全性を担保してくれる仲間のおかげです。
シャツ¥18,700(T-square Press Room〈メゾン マヴェリック プレゼンツ〉) パンツ¥12,100(ノーク) リング¥104,500(ウノアエレ ジャパン〈ウノアエレ〉)
「コロナ禍で『ワークライフバランスを考えるようになりました』という人が多いと思うのですが、私はむしろ逆かもしれません。家族とずっと一緒の在宅勤務で大変な思いをしている人たちがいる中、私はなんの障害もなく仕事にも勉強にも集中できる環境にいる。
こういうときは、頑張れる人が頑張らないと。飲食店の方の声を聞くことも多く、本当に困っている業界で活路を見出すための仕組みを担っているんだという自負も、原動力になっていますね。出産を視野に入れるなら働き方をバランス型にシフトしていく時期なのかもしれませんが、この2020年からの数年間に、成長分野の最前線でキャリアを積むことは、社会人人生の中で光るものになると信じて『今は仕事だ!』と夢中になってやっています。
ただし、多忙でも体調を崩さないように自己管理にはいっそう気をつけるようになりました。ランチ時はバタバタなので、栄養たっぷりの朝ごはんをつくって満腹になって会社に歩いて行きます。ほかにも赤紫蘇酢をつくって毎日飲んだり、ストレッチを日課にしたり。ジムにも通って体力がつき、23時まで仕事をする日も疲れにくくなりましたね。
こんなに仕事第一の生活なんですが、実は夢や出世欲があるわけでもなく。熱量を注げるのは、やるべきことにベストを尽くしている自分じゃないと『ダメな私…』とストレスを感じてしまうから。たとえ会社から下りてくる目標であっても、やりきると気持ちがいいんです。
それに、マネジメントで組織を変革していくと、本当に生き生きとしだす人がいて。楽しくなって、表情や動き方も変わっていく。そういうメンバーの姿を見るとうれしいですね。自分も含めて、視座が上がると見える景色が変わる。本気になると、こうやって仕事って面白くなっていくんだと気づきました。
業界1位を達成したら、次はPR活動で文化づくりに取り組みたいです。こんなにデリバリーが日常になかったのは、アジア諸国の中でも日本だけ。毎日料理するのは大変だし、おかずはデリバリーして、家でみそ汁とごはんだけ用意すればいいじゃんって思うんです。毎日全部手づくりのごはんじゃなくても罪悪感を感じなくていい。働く女性たちを〝手料理の呪い〟から解放して、助けになれたらと思っています」
貴重なオフは、歌舞伎鑑賞へ。悠久の世界に浸って仕事を忘れる
25歳から通っている歌舞伎は、唯一自粛なしで堪能! 無観客での生配信を家で観ることもありますし、昼の部・夜の部通しで4、5時間劇場にいることも。ゆったりした空間で美しい芸を観る時間は、日ごろの分刻みのスケジュールと真逆で、心のバランスがとれる気がします。
いつも仕事では生産性だなんだと言ってる私ですが、大好きな玉三郎さんや七之助さんを観た後は観劇友達と一緒に時間も忘れて延々と魅力を語り合ってます(笑)。
「歌舞伎座は客席内での私語、会話は厳禁。感染対策もしっかりされていて安心です。ずっと続けられる趣味だから、おばあちゃんになったら銀座の徒歩圏内に住んで通うのが夢!」
ワンピース¥80,300(フィルム〈コルコバード〉) 〝ビームス ライツ〟の手に持ったジャケット¥23,100・〝マルコ ビアンキーニ〟のバッグ¥15,950(ビームス ライツ 渋谷) 〝ワンエーアールバイウノアエレ〟のピアス¥9,900・〝ウノアエレシルバーコレクション〟の2連リング¥19,800(ウノアエレ ジャパン) 靴¥26,400(ダイアナ 銀座本店〈タラントン by ダイアナ〉)
●この特集で使用した商品の価格はすべて、税込価格です。
2021年Oggi12月号「こんなに、生き方が変わるなんて」より
撮影/須藤敬一 スタイリスト/角田かおる ヘア&メイク/川嵜 瞳 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)、佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部