新型コロナワクチンは妊活・妊娠に影響する?
この夏、猛威をふるった新型コロナウイルスの第5波が落ち着いて、ようやく緊急事態宣言も解除。マスクの着用や手指の消毒、人流の抑制、店舗での感染対策などとともに、ワクチンの普及や治療薬の開発によって重症患者が減少していることが、その理由として挙げられています。しかし、種々の変異株の出現により、まだ次の第6波が懸念されるところでもあります。
新型コロナウイルスが出現した昨年冬より、妊活あるいは妊娠中の方々から、ご自身の体のことだけでなく、生まれてくる赤ちゃんへの影響について心配する相談を多くいただいてきました。妊娠中の感染の重症化率は、非妊時よりも高くなるという情報もあり、日本産科婦人科学会も一時、妊娠を控えるようにという声明をだしたこともありました。
新型コロナワクチンは、世界で初めてのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンとして開発され、海外で先行投与された後、今年2月より日本にも導入されました。ワクチンの普及とともに、その副反応として発熱や、投与部位の腫脹なども知られるようになりました。
日本産科婦人科学会ではワクチン接種を推奨している
現在、日本産科婦人科学会では、「妊娠中の女性はワクチンを接種することを推奨する」という声明をだしています。しかし、妊活や妊娠に対するワクチンの影響は、まだ不明な点もあるため、不安をお持ちになられている方も多くいらっしゃいます。
既存のワクチンの中には、生ワクチンといわれるウイルスを弱毒化したものがあります。風疹や麻疹などのワクチンは、妊娠中に接種することはできず、接種した場合は2ヶ月間の避妊期間をおく必要があります。
一方、新型コロナワクチンは、生ワクチンではなく、ワクチンが人の体内でウイルスを構成するタンパクを誘導することによって、そのタンパクに対する抗体が産生され免疫を獲得すると報告されています。
こういった機序から、新型コロナワクチンの胎児への影響は考えにくいことや、海外や日本を含め、胎児の奇形の発生・発育不全、流産や早産を有意に高めるという報告がないことより、妊娠中はもとより妊活中の女性にワクチン接種が推奨されています。
それでも、どうしても心配な場合は?
胎児には「器官形成期」と呼ばれる体の臓器の基本構造が作られる時期があります。妊娠6~12週が相当し、外部からの影響を受けやすいと考えられています。かつてはインフルエンザワクチンも、この器官形成期を避けて投与していた時代もあります。
新型コロナワクチンについては、特に器官形成期を避けるようにという報告はありませんが、どうしても心配な場合は、この時期を避けて接種を受けるようアドバイスしています。
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麻布モンテアールレディースクリニック・院長 山中智哉
日本産科婦人科学会/日本生殖医学会/日本卵子学会所属
不妊治療のクリニックとして、体外受精や高度な技術が求められる治療にも幅広く対応している。いずれは不妊治療だけではなく、アンチエイジングや健康医療を軸にした分野にも着手し、様々な側面でお悩みを抱える多くの女性のトータルケアを促進できるようなクリニック、夫婦にとって信頼できるクリニックを目指している。