肥前吉田焼の伝統の技が光る、いつもの1杯を極上にしてくれるオシャレアイテム
コレ、なんだと思いますか? シンプルで洗練されたデザイン。でも一体何に使うの?
◆その名は、Private Roaster(プライベート・ロースター)
これ、実はおうちでコーヒー豆を焙煎できるアイテムなんです。ここ数年、日本は空前のコーヒーブーム。
街には焙煎もお店でするところなど、こだわりのコーヒー店が増えています。今まではコーヒーに特にこだわっていなかったけど、ルーティーンで毎朝欠かせないという人も多いですよね。コロナ禍でおうち時間が増えた分、いつもの習慣をワンランク上げるべく、注目されているアイテムなんです。
◆「こんなのがあったらいいな」から、デザインコンペグランプリ受賞へ
Private Roasterは、肥前吉田焼という産地で作られています。長い間、有田焼などの有名産地の名に隠れて、あまり全国に知られてこなかった産地でした。
そこで、もっと多くの人に肥前吉田焼の魅力を知ってもらえる商品を作るため、2016年にデザインコンペが開催。この時グランプリを受賞したのがPrivate Roasterでした。
デザインをした807designの濱名剛さんに、なぜ、Private Roasterをつくったのか、お話を聞いてみました。
「コンペ前に肥前吉田焼の産地紹介ツアーに参加し、窯元などを見学する中で、大量生産は難しいのではと感じました。加えて、すでに日本各地には伝統的な磁器の名産地が多くあることを考えると、肥前吉田焼の魅力を最大限に見せるには、ニッチで他にはないものの方が注目されやすいのかなと考えました」(濱名さん)
◆なぜ、コーヒーのロースターに?
「インパクトがあってここにしかないもので、受注量を考慮した時に製造し続けやすいものってなんだろう? って考えていたんですよね。
そんな中、趣味で10年以上続けている自家焙煎をできるものがあったらいいなーっていう個人的な希望もあって、陶磁器で作ったら良い焙煎器ができるのではないかと思ったんです。肥前吉田焼の特徴と、“こんなのがあったらいいな”がマッチしたということですね」(濱名さん)
古き良き伝統工芸の特徴を活かし、現代の生活を豊かにしてくれる道具の誕生にはこんな背景がありました。現代の伝統工芸の在り方としては理想的なのではないでしょうか。
◆「こんなのがあったらいいな」の実現は、ハードルだらけだった!
「頭の中で思い描いていたより、だいぶ苦戦しました(笑)」と、濱名さん。一体どんな苦労があったのでしょう?
「普段仕事でしているプロダクトデザインでは、設計通りにできるものが圧倒的に多いのですが、まず、焼物は設計通りには出来上がらないという壁に当たりましたね。
このPrivate Roasterは焼物と木という異素材の組み合わせということもあり、乾燥、焼込の工程によって形が変わったり、気候に左右されて本体の仕上がりが大きく変わる磁器と、それに比べると生産精度の圧倒的に高い木材とがうまく噛み合わせられないという課題がありました。
また、本来磁器は直火にかけられないので、耐熱性の素材を使用したため、普段生産している通常の磁器とはまた作る工程に差があり、製造上のハードルもありました」(濱名さん)
試作を重ね、数々のハードルを乗り越え、ついに2017年から一般販売にこぎ着けたのだそう。
Private Roasterの楽しみ方いろいろ
用意するのは、Private Roasterとコーヒーの生豆。直火じゃないと使えないので、IHしかないという場合には、カセットコンロなどで使用できます。
まずは白い器だけを火にかけて予熱し、ハンドルを挿して生豆を入れ、焦げないように適宜振りながら焙煎を始めます。
大体100グラムくらいで10分くらいが目安ですが、何回か使ってみる中で自分の好みを見つけてみるのもPrivate Roasterの魅力。
真ん中の窓から豆の具合を観察して、「頃合いだな」というところでハンドルを外し、ミトンなどで器を持ち、豆を出します。
紹介動画ではハンドルを持ったまま豆を出していますが、慣れていないと外れてしまうこともあるので、ミトンなどで火傷をしないように器を持って出すのが安心です。
濱名さん曰く、焙煎経験がある人ならわかるかもしれないのですが、網で豆を焼くよりもふっくら均一に焼けやすいとのこと。
◆こんな使い方も!
コーヒー以外にも、お茶を煎ってほうじ茶にしたり、ごまやナッツ、銀杏などを煎ったり、焙烙としても使えます! 使い方の幅が広がると日常の楽しみも増えますね。
▼気になるPrivate Roasterはこちらで購入できます。
▼今後もこちらから新しいコーヒー関連グッズが展開される予定!
224 Porcelain(Private Roaster製造窯元)
▼Beanie Beanスターターセット(生豆セット)を共同で企画している生豆販売店
取材協力/807 design 濱名剛
▲撮影/大畑陽子