DVが理由で離婚した夫婦からみる、DV男の特徴
前回は、DV男のチェックポイントを中心に「結婚してはいけない人」を紹介しました。今回は、DV男性と結婚した女性の事例を紹介します。
DV離婚事例~「勝ち組」と言われる夫から暴力を受け続けた妻〜
東京出身の恵梨香さん(仮名・27歳)は、高校生のときに塾で知り合った同級生の悠人さん(仮名・27歳)と、東大を目指していました。
ところが悠人さんは合格したのに、恵梨香さんは受験に失敗してしまいます。予備校に通い出したものの、悠人さんがひとり暮らしを始めたのを機に同棲を開始。同棲半年で子どもを身籠ったため、受験は諦めて悠人さんと結婚しました。さらに翌年第二子が誕生しました。その後、証券会社に就職した夫の配転に伴い、住み慣れた東京から一家で関西に移り住むことになりました。
恵梨香さんは社会に一度も出たことがないまま子育てに突入しており、一人前の社会人になっていないというコンプレックスがあり、夫に対して卑屈になっていたと言います。
恵梨香さんが当時を振り返ります。
「いまから思えば、交際中も『瞬間湯沸かし器のような怒り方』をする人でした」
夫のDVに悩み続けた末に離婚を決意した恵梨香さんは、結婚前にも前記の兆候があったと言います。
「夫は激高しやすい性格で、頻繁ではなかったものの、年に数回、急に人が変わったように怒り出すことがあり、交際中に一度だけ突き飛ばされたことがありました。ただ、回数が少なかったことと、結婚して子どもができたら変わってくれるのではないか、と思い、気に留めないようにしていました。ところが、結婚して出産した後から、夫はちょっとしたことでキレて暴言を吐くようになってきたのです」
当初、恵梨香さんは、慣れない子育てにかかりきりなこともあり、その不満もあるのかなと思っていたようです。
◆しだいに激化する暴力
しかしそのうち、夫は恵梨香さんに手を上げるようになり、平手打ちをしたり、壁に突き飛ばしたり、足でお腹を蹴ったりしました。
ただ、翌日には、「昨日は悪かった」「もう二度としない」と謝ってくるため、恵梨香さんは離婚までは考えていませんでした。
そのうち治るのではないか、子どもが大きくなったらマシになるのではないか、と希望を持ち続けていたのです。
証券会社に就職が決まったいわゆる「勝ち組」と言われる夫を手放したくないという打算的な気持ちも正直あったと言います。
夫の最初の配属地が関西に決まり、恵梨香さん家族は関西に引っ越しをすることになりました。ところが、関西に行ってからも夫の暴力は収まらず、むしろますますひどくなっていきました。義母に相談したこともありましたが、逆に、嫁である恵梨香さんが至らないから息子がそんなふうになっていると説教をされる始末。義母には二度と相談しませんでした。
◆別居を決意
ある日、酒に酔って帰ってきた夫に馬乗りになって首を絞められたときに、このままでは殺されるかもしれないと思い、別居を決意し、その後、弁護士を立てて離婚を申し入れました。
1年後に無事に協議離婚が成立し、離婚後は、恵梨香さんはネイリストの資格を取り、都内で自分の店を開業しています。
恵梨香さんは、当時のことを次のように語っています。
「当時は、自分にまったく自信がありませんでした。同級生が難関大学に合格して華やかな大学生活をエンジョイしているのに、私は予備校も挫折し、同棲して、できちゃった結婚。本来なら私も大学に入って就職してバリバリ働いていたのに、なぜこんな目に… とずっと思っていました。
私の見栄っ張りな性格のせいで正常な判断ができず、夫のDVを甘んじて受け入れていました。次は、相手のスペックにこだわらず、自然体で、一緒にいて安心できるパートナーに出会えればいいなと思っています」
感情のコントロールが効かない男は、DV予備軍
いかがでしたか? 決してこれは他人事ではないのです。
DVを受ける人は、得てして自己評価が低いです。「自分なんて……」という卑屈な気持ちがあると、DV加害者につけ込まれやすくなります。これはかなり重要なポイントかもしれません。
自己評価が低い人は、無意識下で、自分は暴力を受けても仕方のない価値のない存在だ、という思い込みがあるため、相手からの暴力を甘んじて受けやすく、DVを受けても我慢し続けてしまうのです。
DV加害者は相手のその性格を本能的に嗅ぎつけ、暴力によって支配・コントロールしようとします。恵梨香さんは典型的な事例です。
また、DV加害者の顕著な特徴として挙げられることに、感情のコントロールが効かないということがあります。
気に入らないことがあると、ちょっとしたことでもキレて、物を投げたり暴れたり暴言を吐いたりします。自分を抑えることができず、瞬間湯沸かし器のような怒り方をします。恵梨香さんの夫である悠人さんはまさに典型例です。
前回も申し上げましたが、DVが改善することは残念ながらほとんどありません。少なくとも私は聞いたことがありません。結婚前に少しでもパートナーの言動におや? とおもうところがあったら、強い意志で縁を切ってください。
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フェリーチェ法律事務所代表 後藤千絵弁護士
京都府出身。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。
離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。中でも離婚案件は女性を中心に、年間約300件以上、のべ3000人以上の相談に乗っている。神戸在住。