なんでもほめればいいというわけではない! 大切なのは…
人をほめる。
このことの大切さを感じている人は少なくないでしょう。話し方教室などでも、「とにかく相手をほめましょう」ということを伝えない教室はないくらい、ほめ方というのは大きなテーマです。
たしかに人をほめることは、会話においてとても大切なことです。しかし、人はその奥にある、言葉を発する人の気持ちを感じ取るセンサーも持っています。
普段人をほめたことのない人が、話し方教室に行った途端、「お、今日も笑顔がステキだね」などとほめても、相手に「突然何? 何の魂胆があるの?」と勘ぐられてしまうのがオチです。
ほめることは大切なことですが、やたらとほめても、必ずしもうまくいくとは限りません。
あくまで大切なのは、相手が何を大切にし、どこをほめられると嬉しいのか…
ここをしっかりと観察し、心からほめることにあります。
ここぞという時に使うと効果的な「やっぱり」
ここでは初対面ではなく、いつも共に時間を過ごしている人をほめる時に大切な魔法のキーワードと言い方をお伝えします。
あなたに絶対に習慣化してほしいキーワード。それは、
「やっぱり」
です。
「やっぱり、やると思ってた」
「やっぱり、美味しい」
「やっぱり」には、ものすごいエネルギーがあります。
「やっぱり」をつけなくても、普段一緒にいる人からほめられることは嬉しいもの。そこに「やっぱり」がつくことで、相手は「えっ、普段からそう思ってくれてたの?」とあらためて嬉しい気持ちが湧き起こります。
「やっぱり」
この言葉には、「普段から思っていたけど」というアンダーメッセージが含まれているのです。
「ボソッとつぶやく」に秘められたすごい威力
さて、次はほめ方です。
面と向かってほめられるのは嬉しいものですが、日本人は面と向かってほめられることがあまり得意ではありません。
ほめられたら謙遜。この文化が知らず知らずのうちに染み込んでいるのです。
ではどうすればいいのか?
それは、
「独り言でつぶやくこと」
です。
あるひと言で状況は変わる
以前、私の経営する飲食店でこんなことがありました。
私たちの店では、年に何度か大きなイベントを企画しています。ある年、イベントが終わった後の懇親会で、参加者の財布からお金が抜き取られる事件が起こりました。
個人の財布は個人管理といってしまえばそれまでですが、懇親会後、私をはじめ、イベントを企画していたスタッフたちは警察に呼ばれ、事情聴取されました。
そのお店にはたまたま防犯カメラがついていたので、犯人は特定できたのですが、事情聴取の後、私たちが店に帰ったのは翌日の夜中。
私をはじめ、スタッフたちはぐったりしていました。
「何でこんなことが起きたんだろう。来年、この企画をやるかどうかもういっぺん考え直そう」
そんな暗い話題になり、私たちはテーブルに突っ伏していました。
そんな時、店で一番若い女性社員が何も言わず、みんなにお茶を出してくれ、ボソッとこう言ったのです。
「ここまでしなくてもいいのに。やっぱりうちのお兄ちゃんたち(社員)が一番かっこいいなあ…」
独り言のようにつぶやいて厨房に戻りました。
ガバッ。全員がそのひと言で頭をあげ、目を合わせました。
いっときの沈黙。その後、誰ともなく、
「あいつ…。嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」
「だね。なんか元気出た」
「来年もがんばろうか」
「そうですね、来年はもっといいものにしましょう」
「そうだね、防犯をしっかりすればいいし」
男は単純です。彼女の「やっぱり」のひと言に、そこにいた全員が息を吹き返しました。
「やっぱりここ(ご主人や恋人)が一番落ち着くわ」
「やっぱりすごいなあ」
いかがでしょうか。面と向かって言われるのではなく、目を合わせずに独り言のように、ボソッとつぶやかれる。
想像しただけでも、嬉しさがこみ上げてきませんか? みなさんもタイミングの合う時に、ぜひ使ってみてください。
なお、このテクニックには想像以上の威力がありますので、くれぐれも悪用禁止でお願いします!(笑)
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永松茂久(ながまつ・しげひさ)
株式会社人財育成JAPAN代表取締役。大分県中津市生まれ。「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で数多くの講演、セミナーを実施。「人のあり方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累積動員数は延べ40万人にのぼる。2020年1番売れた会話の本『人は話し方が9割』(すばる舎)をはじめ、著書多数。