頭の中に「他人がいる」ことは孤独。「他人がいない」ことはソロタイム!
仕事終わりに、気になっていた映画を“ひとり”で鑑賞。最近、仕事が忙しかったこともあって、自分の時間を満喫しようと楽しみにしていた金曜日。
ところが、恋愛映画だったせいもあるのか、それとも失恋したばかりだからか… 鑑賞後に“孤独感”がどっと押し寄せて。
しまいには周囲の幸せそうなカップルが気になり始めて、「ひとり」でいる自分が「さみしい女」に見えている感じがして居心地が悪くなる始末。「ソロタイム」を実践するって、ひとり身としてはやっぱりさみしい…。
名越さんが回答!
楽しい映画鑑賞のはずだったのに、「ひとり」が「孤独」にいつの間にか様変わりしてしまっていますね。
僕は「ソロタイム(=ひとりぼっちの時間)」を過ごす大切さを、自分の本や雑誌取材で何度も伝えています。
ところが、「ソロタイム」=「孤独」、「さみしい」と勘違いしてしまう方もいるようで、今月はその誤解を解く説明をしたいと思います。
まず、孤独とは何か? それはひとりでいるときも「他人が頭の中にいる」ことです。
ひとりのときに「あのとき、あの人に嫌われたんじゃないか」とか、「あの人が楽しそうでうらやましい」とか、他人のことで頭の中が騒がしい状態のことを「孤独」というのです。
そういうときは、だれかと自分を比較していることがほとんど。孤独は他人が気になって、自分がちょっとみじめになり、「さみしい」という感情を呼び込みます。
「結婚もしないでひとり」「孤食なんてさみしい」という感情が自然に湧くのではなく、頭の中の他人に振り回されていることが多いんです。
一方で「ソロタイム」はというと、「頭の中に他人がいない」状態のことです。
ひとりで映画を楽しもうとしているのに、頭の中の幸せそうなカップルたちに嫉妬していては映画に集中できません。この「ソロタイム」を自分のものにするにはちょっとした訓練が必要です。
まず、2時間くらい集中してやれる趣味を見つけてみてください。映画なんて、まさにぴったりの対象です。その間、頭の中に他人がいなかったら、ソロタイム成功の証!
映画の中の登場人物に感情移入しては、頭の中に他人がいることと同じになるのでは? と勘違いする人がいますが、私が言う“他人”とはあなたの頭の中を支配して、あなたの大事な時間を浪費させる人たちのこと。
本当の「ソロタイム」を経験できると、リフレッシュできて頭がきちんと休まるし、自分のアイデアをじっくり完成させることができるようになります。
そうすればホンモノの自信が生まれ、だれかと過ごす時間でも自分を自然にアピールできるようにもなるでしょう。
自分が楽しんで没頭できる対象物を見つけることができれば、「ひとりでいること」が重要なのじゃなくて、「ひとりじゃないとできない大切なこと」があることに気づくはず。
「ひとり」と「孤独」の違いを知って、ぜひ「ソロタイム」という成長の時間を味わってください。
2020年Oggi1月号「名越康文の奥の『ソロ』道」より
イラスト/浅妻健司 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など幅広く活躍中。著書に『SOLO TIME「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)ほか多数。