漢字とひらがなどちらが適切? 文章の形式名詞を例文でチェック!
メールや文書を作成する際、文脈によって漢字にすべきケースとひらがなにすべきケースがあります。今回はひらがなにすべき形式名詞の場合をチェック!
◆形式名詞とは?
形式名詞とは『その語の表す実質的意義が薄く、常に連体修飾語を受けて使用される名詞(デジタル大辞泉より)』のことをいいます。形式名詞の場合はひらがなを用います。
意味だけ確認してみてもよくわからないですよね。早速、例文でチェックしてみましょう。
次の[こと]は漢字・ひらがな、どちらが適切でしょうか?
1:このような[こと]が二度とないように致します
2:会議の場では、発言する[こと]が求められる
◆正解は、1が漢字、2がひらがな
それぞれ解説していきます。
1の例文、『このようなこと』の[こと]には具体的に指し示す出来事がありますよね。
一方、2の『発言すること』の[こと]には発言するという漠然とした事柄を広く指し示しています。具体的な発言内容や発言状況が問題となっていません。
このようにさし示すものが具体的なケースは漢字で書き、さし示すものが抽象的なケース(形式名詞にあたるケース)はひらがなで書きます。
続いてはこの記事のトップ画像の問題です。
次の[ところ]は漢字・ひらがな、どちらが適切でしょうか?
1:お忙しい[ところ]恐縮ですが、何卒よろしくお願い致します
2:お[ところ]とお名前をご記入ください
◆正解は、1がひらがな、2が漢字
それぞれ解説していきます。
1の『お忙しいところ』は今携わっているプロジェクトが大詰めでとても忙しい、などの具体的な忙しさを指しているわけではありません。実際に忙しいかどうかは問題ではなく、“商売繁盛に近しい忙しさ”を指していますよね。なので「お忙しいところ」が正解。
一方、漢字にするのは[ところ]が具体的な場所や地点、箇所を指すケースです。2の『おところ』は住所のことであり、“具体的な場所”のことを指していますね。
こちらも[こと]と同じく、[ところ]が抽象的な状況や状態を指すケースはひらがな、にしましょう。
次は[もの]についての問題です。
次の[もの]は漢字・ひらがな、どちらが適切でしょうか?
1:今回のミーティングを意味のある[もの]にしたいと考えています
2:[もの]より思い出
◆正解は、1がひらがな、2が漢字
[もの]を表記するときの判断も、抽象的な事柄を指すかどうかで書き分けましょう。
1の『意味あるもの』の[もの]は具体的な物体にはあたらず、強いていうならば“そんな状況にしたい”という意味ですので、ひらがなで書きます。
一方、漢字にするのは、[もの]が具体的な物体を指すケース。所有物など目に見ることができる、“触ることができるものを指す場合”は漢字で書きましょう。思い出と対比しているのは物体であるものなので、2は漢字になりますね。
だいぶ感覚的に掴めてきたのではないでしょうか? それでは最後の問題です。
次の[とき]は漢字・ひらがな、どちらが適切でしょうか?
1:パソコンをシャットダウンした[とき]に、今日中にやらなければならないことを思い出した
2:迷った[とき]は良心に照らして判断する
◆正解は、1が漢字、2がひらがな
漢字にするのは[とき]が時間、時刻や時期のことを指す場合です。比較的、一時点のことを指すことが多いです。
1の『シャットダウンしたとき』の[とき]はまさにシャットダウンした“瞬間のこと”ですね。
一方、[とき]が不特定のときや場合を指すケースにはひらがなになります。
2の『迷ったとき』の[とき]は迷うという“状況が発生した場合”のことを指しているため、ひらがなで書きます。
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いかがでしたか? ひらがなで書く場合と漢字で書く場合にはルールがあるんですね。決められたスペースで文章を書かなければならないとき、文字数を考えて漢字にしたりひらがなにしたりするケースがあると思いますが、厳密にいうと使い分けがあるんですね。
今回の例文と同じ文章でも、前後の文脈で形式名詞にあたるか否かが変わることがありますので、意味から推測してひらがなにすべきか漢字にすべきか考えてみてくださいね。
鶴田初芽
都内在住のOLライター。マナーインストラクターであり、実用マナー検定準一級や敬語力検定準一級など、ビジネスにおけるマナーや、マネーに関する資格(2級ファイナンシャル・プランニング技能士、金融コンプライアンスオフィサー、マイナンバー保護オフィサー)などを保有。丁寧な暮らしに憧れ、断捨離修行中!