弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART13
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第13回目は、派遣社員の金原希美さん(仮名・32歳・年収200万円)。
前回記事▶︎交際相手がまさかの既婚者だった… どうすべき? 慰謝料は?
◆結婚したら彼の性格が豹変! モラハラ夫に… どうしたらいい?
結婚5年になる夫のことで悩んでいます。夫は理系で現在も研究所に勤務しています。交際中は知的で優しくて、理想の人だと思って結婚しました。私の両親も、真面目そうでいい人だとほめてくれました。でも、結婚した頃から急に態度が変わって、冷たい人になってしまいました。
何か質問すると「自分で考えろ、バカ」と言われ、その日あったことを話すと、「自分のことばかりダラダラしゃべって、俺の時間を奪うな」などと言ってきます。何か言うたびに「違うだろバカ!」「ちゃんと考えろ!」と言われるので、夫に話しかけるのが怖くなり夫婦の会話は激減しました。
また、結婚した時から家計は一緒にしていたのですが、1年前に家を買おうという話になって通帳を見せたところ、思ったよりお金が貯まっていないことに怒られました。無駄遣いをしているつもりはないけれど、共働きだからお惣菜を買ったり外食したりすることが多いからと説明をしたのですが、夫は納得いっていないようでした。
その一方で、家のことも何もしてくれません。雨が降っても洗濯物を入れてくれないし、ゴミ出しを頼んでも玄関にほったらかしにしてしまいます。私がインフルエンザになって立ち上がれなくなっても、看病もしてくれず放置。仕事から帰ってきて、「俺の晩飯がない」とキレられました。
結婚していきなりこうなってしまったので、他に好きな女性でもできて私を嫌いになったのかと思ったのですが、いつも帰宅は早くて夕食の時間には帰ってくるので、そうも思えません。一度両親に相談したのですが、「旦那さんはいい人なんだからそのくらい我慢しなさい」と言われただけでした。
ここまでされると我慢の限界なので離婚したい気持ちと、離婚は恥ずかしいし安定した生活を捨てるのは怖い… という気持ちで揺れ動いています。私はいったいどうすればいいでしょうか。
◆堀井先生のアンサー
希美さんは、彼が結婚したら変わってしまったとおっしゃっていますが、彼は変わったのではなく、結婚によって本当の自分を出すようになったのではないでしょうか。
身内に厳しくする人というのは意外と多いものです。彼も希美さんが彼女の時は他人なので優しくしていましたが、結婚して身内になったら、本当の自分を出して接するようになったのだと思います。
彼の言動はモラハラそのものです。モラハラをする人というのは、自分がそういう家庭で育ったからそれが当たり前だと思って、自分が家族を作った時にも同じことをするケースが多いです。
私が実際に見たケースで、希美さんと同じように結婚したら優しいはずの彼がモラハラ夫に変わってしまったという相談がありました。どうしてこんなに豹変したのか思い当たるふしがないというので結婚前のことを聞いてみたところ、彼の実家に結婚の挨拶に行った時に、彼の父親がとても厳しい人で、母親を顎で使っていたということでした。
自分に対しても面接のようにあれこれと聞かれて、でも彼自身は優しい人だから大丈夫と思ってそのまま結婚したそうです。しかし、後になって思い出してみたら、結婚後の彼の態度はその時に見た父親にそっくりだったということでした。
希美さんの彼の父親はどんな人でしょうか? 結婚の挨拶に行った時に、母親に厳しく当たったりしていませんでしたか? 彼が二言目には「バカ」と言うのも、父親が母親にそう言うのが口癖だったからかもしれません。
こういうタイプの人は、身内にはとことん厳しくする主義なので、子どもが生まれたら子どもにも同じように接します。表向きは優しそうできちんとした人なので、妻が周りの人に相談しても「そういう人には見えない」と言われて、なかなか理解してもらえないこともあります。
さて、解決策ですが、希美さんは離婚をためらっているように見えて、怖くて彼に話しかけられないという時点で心の中ではすでにNGが出ていると思います。会話をしたくない相手と一緒に暮らすと、精神的にとても負担がかかってしまいます。
ただ、彼の方もそこまで悪気があってやっているわけではないはずです。いじめようとか、精神的に追い詰めようということは思っていなくて、身内にはこうするものだと思ってやっているのだと思われます。
相談内容を見ると、希美さんは彼に言われっぱなしのように見えます。一度、「バカって言わないで」「怒らないで」「やめてくれないなら離婚する」とはっきり言ってみてはどうでしょうか。夫はおそらく、自分は浮気も暴力も借金もしていないのでいい夫だと思っているはずです。
希美さんが真剣に訴えかけても悩みを理解できず変わってくれないようなら、あなたの気持ちも完全に決まるでしょう。反対に、少しでも変わろうとしてくれるなら、彼の今後にとってもよいきっかけになるかもしれません。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士 堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら