【目次】
・「表裏一体」
・表裏一体の意味や読み方とは
・表裏一体の使い方を例文でチェック
・表裏一体の類語にはどのようなものがある?
・表裏一体の対義語語にはどのようなものがある?
・表裏一体と紙一重の違いとは
・表裏一体の英語表現もチェック
・最後に
「表裏一体」
あなたは、「表」と「裏」が一体になっている物って、どんな物を連想しますか? 身近にある物でしたら、「紙」とか「コイン」とかですかね? 人との関係、恋愛で例えてみることにしましょうか?
彼の良いところはとっても優しいところ、悪いところは誰にでも優しくするところ。良いところも悪いところも「表裏一体」だから、分けて考えることなんてできない。私は、そんな彼がとても好きです。もう別れることなんかできない、「表裏一体」の様な関係です。
さて、以上の使い方が、正しいのか間違ってるのか。ちょっと自信をなくしたりしませんか? 「表裏一体」はよく聞く言葉なのですが、改めて意味や使い方を訊ねられると、途端にあやふやな答えしかできなかったりします。そんなことにならない様に、「表裏一体」の意味や使い方を、しっかりと理解しておきましょう。
表裏一体の意味や読み方とは
「表裏一体」の読み方は、「ひょうり・いったい」と読みます。漢字としては、簡単ですので読み間違いをする人は、多くはいらっしゃらないでしょう。
◆「表裏一体」の意味
意味については、簡単な漢字なだけに、文字面だけを見て、自分なりに勝手な解釈をしてしまう方も多いのかもしれません。「表裏一体」の意味を辞書で調べて見ますと、次の様に記されています。
・相反する2つのものが大もとでは1つであること。また、2つのものの関係が密接で切り離せないこと。
・相反するかに見える2つのものが、根本では密接につながっていること。また、その関係。
こうして辞書による意味説明を読んでみると、何とも“哲学的“説明だと思いませんか? 辞書の意味説明を分解して解釈すると、2つの要素があるように思います。
1つ目の要素が、「一見すると、全く別々の物に見えるのだけれど、元をたどると1つである。」ということ。2つ目の要素が、「2つの物は、切り離せない関係にある」ということです。
◆「表裏一体」関係を表す具体例-1
1つ目の要素、「一見、全く別々の物だけれど、元をたどると1つ」について具体的な例を考えてみましょう。
・最近、子供の成績が悪くなり、情緒不安定で素行も悪くなった。夫婦仲が悪く、喧嘩が絶えない。元をたどると夫の浮気が原因。
・企業の業績が良くない。社員の就労意欲が低く、顧客満足度も低い。元をたどると、労働・職場環境が悪い。
◆「表裏一体」関係を表す具体例-2
2つ目の要素が、「2つの物は、切り離せない関係にある」について具体的な例を考えて見ましょう。スポーツシーンでは、「表裏一体」の関係をなすものが多くあります。
・ピッチャーとキャッチャーの関係。ピッチャーの巧妙な配球を引き出すのは、キャッチャーのリード。
・自己記録の向上とライバルとの関係。負けたくないライバルが居るからこそ、厳しい練習に励むことができる。
・主役と脇役との関係。主役だけでは、演劇やドラマは成り立たない。名脇役、名悪役がいてこそ主役は引き立つ。
こうして考えてみますと、「表裏一体」は深い意味を持った四文字熟語なんですね。
表裏一体の使い方を例文でチェック
「表裏一体」は、2つのものが密接な関係であることや、2つで1つである事を表現する場合に使用します。具体的な使用例をご紹介いたします。
1:「物事の長所と短所は、表裏一体である。見方によれば、長所は短所にもなり得るのです」
2:「夫婦円満の秘訣は、表裏一体の夫婦関係を構築することが重要である」
3:「生あるものは、やがて死を迎える。これは表裏一体を成す、自然の摂理である」
表裏一体の類語にはどのようなものがある?
・相即不離
相即不離は、「そうそく・ふり」と読みます。意味は、関係が非常に密接で切り離せないこと。区別がつかないほど密接な関係のことを意味する四文字熟語です。
「相即」は、仏教の言葉で、万物は縁でつながっていて相互に影響し合いながら成り立っている。本質は、ひとつのものであるということを説いている言葉です。
・不離一体
不離一体は、「ふり・いったい」と読みます。意味は、1つになって離すことができない状態を表す言葉です。
・一心同体
「一心同体」、読み方は「いっしん・どうたい」と読みます。意味は、心も体も一つの人間であるかのように、強い絆を持っていることです。2人、または複数の人が心を1つにして、あたかも1人の人のように固く結びつくことを表す四文字熟語です。結婚式などのスピーチでは、お馴染みの言葉です。
表裏一体の対義語語にはどのようなものがある?
・二律背反
「二律背反」の読み方は、「にりつ・はいはん」と読みます。論理学の用語です。「律」とは物事の規定や決まりといった基準になるべき定規のようなものを意味します。
「二律」は、ふたつの規定や真理が並び立っていることを意味しています。「背反」はお互いに相入れない状態を表します。つまり、二律背反とは「反対の意味を持った考え方や規定が並び立っている矛盾した状態」を表現する言葉です。
・自家撞着
「自家撞着」の読み方は、「じか・どうちゃく」と読みます。「自家」は自分、自分自身のことです。「撞着」は、突き当たること、矛盾することを意味します。意味は、同じ人の言行が前と後で矛盾していることを意味する言葉です。自己矛盾を起こしていることを表す表現です。
・両立し得ない
ふたつの考えや規定が、並び立たないことを意味する言葉です。「二律背反」や「自家撞着」のような四文字熟語の、平易な表現としてしばしば用いられます。
表裏一体と紙一重の違いとは
「表裏一体」から、思い浮かぶ熟語として「紙一重」を連想する方も多いと思います。普段から「紙の裏表を確認して」などの表現をよく使いますから、混同しておられるかもしれませんね。
「紙一重」は、1枚の紙の厚さほどの、きわめてわずかな違いという意味です。つまり「ほとんど差がない」けれど、「ごく僅かであるが、違いがある」ということになります。「表裏一体」は「見た目は、明かな違いがある」しかし「両者には密接なつながりがある」を表します。
こうして比べてみると、ニュアンスの違いをご理解いただけるのではないでしょうか? それでは、「表裏一体」と「紙一重」の違いをご理解いただくために、それぞれ文例をあげておきます。
「紙一重」の文例:「まさに、天才と狂人は紙一重。それを裏付けるようにゴッホやヴァージニア・ウルフなど、精神を病んでいた芸術家が数多くいる」
「表裏一体」の文例:「権利と義務は表裏一体である。ならば、権利を主張するからには義務も果たすべきである」
表裏一体の英語表現もチェック
「表裏一体」を英語に訳すと、どのように表現するのかをご紹介します。英語では、「two sides of the same coin」となります。
「two sides」は、「2つの面」つまり「両面」ですね。「same coin」は、「同じコイン」という意味です。コインの裏表は、切り離したり、剥(は)がすことことなどできない不可分のものということですね。
最後に
「表裏一体」、長い説明になりましたが、ご理解いただけましたか? 普段、あまり深く考えないで使用している言葉も、こうして色々な角度から見てみると興味が湧いて考える部分もありますようね。
特に、「表裏一体」の意味は、どこか哲学的な感じがしますので、周りの人との関係や、普段利用している様々なシステムや機械なども、「表裏一体」という視点で見直してみるのも面白いかもしれません。
一見、無関係でありそうな他部署の一社員と、深い繋がりがあって切っても切れない関係にあるとか、彼との関係も、もう一度見つめ直す機会になるかもしれませんね。
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