【目次】
・「曲がりなりにも」とはどんな意味?
・曲がりなりにもの正しい例文を紹介
・曲がりなりにもの類義語について
・曲がりなりにもの対義語について
・最後に
「曲がりなりにも」とはどんな意味?
◆曲がりなりにもの意味
会話の中で「曲がりなりにも~」と言われた時、その前後をよく理解しないとどういう意図で言われているのかわからないことがありませんか?
「曲がりなりにも」とは「不完全ながら」「十分とまでは行かないが」「どうにかこうにか」といった意味を持つ言葉です。どこか物足りない部分や、ちょっと頼りなさそうな部分があるけど、一応の結果を出すことはできた、というニュアンスで使われます。
「完全とは言えないものの、何とかこなした」「不十分だけど、とりあえず依頼されたことは達成できた」というように、マイナス要素があるものの、トータルとしてみるとプラス評価になる、つまり期待を込めた言葉として使われることが多いのです。
◆曲がりなりにもの語源
「曲がりなりにも」は漢字で表記すると「曲がり形(なり)にも」となります。もともとは「曲がった形でも」という意味の言葉でした。木材などが曲がった形をしていても、どうにかこうにか使える、ということから、「未熟であっても」「不完全ながら」という意味の言葉に発展したといわれます。
曲がりなりにもの正しい例文を紹介
1:「曲がりなりにもプロの漫画家として生計を立てられるようになった」
この例は「まだまだ未熟な部分はあるが、どうにかこうにかプロとして食べていけるようになった」という意味になりますが、このように不十分な要素が残っていても、一定のレベルで物事をこなせている時に使われます。
ただし「曲がりなりにもプロなのに生計も立てられない」となると、その意味は逆になります。このように語尾によっては、相手が不快に感じることがありますから使用する際は失礼にならないように気をつけましょう。
2:「若輩者で頼りないと思われますが、曲がりなりにも企業のトップですので、ご安心ください」
「曲がりなりにも」は自身や身内のことを謙遜して表すときにも使われます。「まだまだ至らない点がありますが…」「劣っている部分がありますが…」など自身や身内を一歩引いた表現をする場合に用います。ただし、こうした謙遜する言い回しは使いすぎると却って嫌味に聞こえてしまいます。
たとえば「こう見えても曲がりなりにも10年社長を務めておりますので、業界の事情については熟知しております」と取引先の相手に言った場合、言葉では謙遜しているものの、「すべてお見通しですよ」と相手を威圧するような語感にもとれますので気をつけましょう。
3:「政治改革関連法案が曲がりなりにも成立し、内閣支持率もそのまま維持した」
ニュースで、よく耳にするフレーズですね。まさに「不完全ながら」「どうにかこうにか」という意味が当てはまります。「曲がりなりにも」は基本的には否定するものでなく、期待を込めてプラスの評価をする時に使います。
曲がりなりにもの類義語について
「曲がりなりにも」の類義語としては「どうにかこうにか」「かろうじて」「それなりに」「なんとか」などがあげられます。
「不十分ながらも、どうにかこうにか独力で生活しています」のように、「どうにかこうにか」を「曲がりなりにも」を入れ替えても意味は変わりません。ちなみに「どうにか」は「余裕は無いけれど何とか物事を実現できた」という意味の言葉です。
「かろうじて(辛うじて)」は、「ようやく」、「何とか、実現の可能性が低そうなことが、すれすれのところで実現する」といったことを表します。
「それなりに」「なんとか」は「完全・十分とはいえないが、条件や要求などにかなうこと」「相応に」という意味の言葉です。
曲がりなりにもの対義語について
「曲がりなりにも」という言葉には、状態などが不完全、不十分であっても、それなりにできている状態を意味しますので、その対義語は完全、十分であるという意味になります。
「申し分なく」は不満に思う点や非難すべき点、欠点がないという意味ですから、不十分、不完全という意味の反対と言えます。「非の打ちどころのない」も完全で非難するところがない、「万全の」「パーフェクトな」も同様の意味です。
最後に
「曲がりなりにも」を「曲がいなりにも」というのは間違いです。「紛い物(まがいもの)」と混同しているのかもしれませんが誤用ですので気をつけましょう。
「曲がりなりにも」は「不完全」や「不十分ながらどうにかこうにか」という意味を持つ言葉で、なんとか苦労をしながらも漕ぎつけたというニュアンスですから、完全なものや、それほど苦労や難問が伴わなかった事柄の場合は使いません。
ただし、客観的にみて不十分な点がなさそうに見える人が、先述したように自身のことを謙遜して「曲がりなりにも」を使うことがありますが、この場合は誤用ではありません。
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