インフルエンザ感染予防の奥の手「のどバリア」を高める
冬の心配事のひとつ「インフルエンザ」。毎日元気に仕事するためにも、インフルエンザにならないことが大切ですよね。そこで、今回、インフルエンザの感染メカニズムと予防習慣を紹介します。
◆インフルエンザの感染メカニズム
口や鼻から入ったウイルスが「のど奥粘膜細胞」に吸着した後、ウイルスが粘膜細胞に侵入して感染が成立。ひとたび感染が成立すると、ウイルスは粘膜細胞の中で急激に増殖し、他の粘膜細胞に感染が拡大します。最終的には発熱や筋肉痛などの症状を発症。
◆「のどバリア」を高めることが大切
ウイルスは、のどや鼻の粘膜細胞に感染しますが、のどや鼻の粘膜細胞の表面にはウイルスなどの異物を体内に入れないように、最後の砦としてバリア機能が備わっています。具体的には、「唾液」「粘液」「線毛運動」の3つの機能。感染前にこれらの機能を高め、サポートすること、すなわち、「のどバリア」を高めることが感染予防には重要です。
【機能】
線毛・唾液
のどや鼻など上気道の粘膜にある「線毛」は、線毛運動を行うことで「粘液」とともにウイルスなどの異物を体外へ排出。「粘液」には、粘膜細胞を覆いまもる役割も。
唾液
「唾液」には、インフルエンザウイルスから粘膜細胞をまもる効果のある成分が含まれています。
「のどバリア」を高めるための3つの予防習慣
手洗いやマスク、ワクチンの接種に加えて、「のどバリア」を高める新しい予防習慣を実践しましょう。
◆1.粘膜バリア(カテキンをのどにとどめる)
✔︎緑茶をちびちび飲む
カテキンには抗インフルエンザウイルス作用があることが知られています。インフルエンザウイルスは、粘膜細胞に吸着後、比較的早期に粘膜細胞に感染してしまうため、緑茶をこまめに一口、二口ずつ飲むのがおすすめ。
✔︎とろみをつけたカテキンを摂る
カテキンにとろみをつけると、のど粘膜へのカテキンの吸着量が増え、のどにとどまりやすくなること(*1)や、とろみをつけたカテキンの継続接種により、風邪やインフルエンザ(急性上気道炎)の発症が抑制されていることも確認されています(*2)。
*1「咽頭部粘膜モデルへのカテキン吸着量 ~粘度が高いほどカテキンがのど粘膜に残りやすい~」
測定方法:増粘剤(キサンタンガム)とカテキンを混合した溶液を一定速度でモデル粘膜に注ぎ、モデル粘膜の単位重量当たりのカテキン量を評価
出典:2019年5月 第73回 日本栄養・食糧学会大会(静岡)発表内容
*2「〜とろみをつけたカテキン飲料を1日3回飲んだ場合に急性上気道炎の発症が半減〜」
実施時期:2017年12月〜2018年2月(3カ月間継続摂取)
被験者:健常な男女(n=254)
被検品:<プラセボ>カテキン 0mg(EGCg 0mg)/キサンタンガム 100mg
<とろみをつけたカテキン>カテキン 57mg(EGCg 20mg)/キサンタンガム 100mg
出典:2019年11月 第52回 日本小児呼吸器学会(鹿児島)発表内容
【とろみをつけたカテキンレシピ ~煎茶とはちみつの葛湯風~】
<材料>
煎茶パウダー:1g
はちみつ:大さじ1
水:500ml
糸寒天:2g
<作り方>
鍋に水を入れて熱し、沸騰したら残りの材料を加え、糸寒天が溶けるまで混ぜながら加熱する。
◆2.唾液バリア(唾液の量と質を上げる)
✔︎舌顎下腺マッサージ
舌下腺・顎下腺から分泌される唾液には、インフルエンザウイルスに対する防御効果の高い成分が多く含まれています(*3)。
*3「唾液に含まれる抗インフルエンザウイルス成分(結合型シアル酸)の濃度 ~舌顎下腺唾液は結合型シアル酸を多く含む~」
対象者:20~40歳代 健常男性(n=12)
唾液採取:採取用カップで各唾液腺を覆い、陰圧条件下でクエン酸による刺激時に分泌される唾液を採取
分析方法:SialicAcidAssayKit
出典:2019年11月 第52回 日本小児呼吸器学会(鹿児島)発表内容
【舌下腺への刺激】
両手の親指をそろえて当て、10回くらい上方向にゆっくり押し上げる。
【顎下腺への刺激】
親指を当て、耳の下からあごの下まで、3~4箇所にわけて順に押していく。
✔︎炭酸刺激
炭酸発泡刺激により、インフルエンザウイルスに対する防御効果が高い舌顎下腺唾液が多く分泌され、唾液の量と質を高めます(*4)。
*4「炭酸固形製剤適用時の唾液分泌量と全唾液中の舌顎下腺唾液の割合 ~炭酸刺激は、抗ウイルス成分を多く含む舌顎下腺唾液を分泌させやすい~」
被験者:20~40歳代 健常男性(n=6~15)
評価サンプル:<甘味成分含有打錠固形キャンディ>マルチトール100%、<酸味成分(クエン酸)含有打錠固形キャンディ>マルチトール85%・クエン酸15%、<炭酸発泡成分含有打錠固形キャンディ>マルチトール65%・クエン酸15%・重曹20%
出典:2019年11月 第52回 日本小児呼吸器学会(鹿児島)発表内容
【炭酸発泡レシピ ~しゅわしゅわ はちみつジンジャーグミ~】
<材料>
粉ゼラチン:10g
水:大さじ4
はちみつ:大さじ2
おろししょうが:大さじ1/2
グラニュー糖:小さじ1~2
クエン酸:小さじ1/2
重曹:小さじ1/2
<作り方>
1. 耐熱容器にゼラチンと水を入れ、電子レンジ(500W)で約15秒加熱する。温まったら混ぜて溶かす。
2. はちみつ、しょうがを加えて混ぜシリコンの形に流し入れる。
3. 冷蔵庫で20分ほそ冷やし固め、型から外す。しゅわしゅわパウダーの材料を混ぜ、食べる直前にグミをまぶす。
◆3.蒸気バリア(のどを加温加湿する)
✔︎加湿器
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50〜60%)を保つことも効果的です。
インフルエンザにかかると辛いですよね。体はもちろん、「仕事をしたくてもできない」という辛さも…。インフルエンザにかからないために、できる対策をひとつひとつ行いましょう。
※記事内の予防習慣は、インフルエンザに感染しないことを保証するものではありません。インフルエンザの予防には、手洗い、マスク、インフルエンザワクチンの接種に加え、十分な休養、栄養バランスのとれた食事など、日頃から体調管理を行うことが大切です。
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TOP画/(c)Shutterstock.com
池袋大谷クリニック院長 日本呼吸器学会専門医 大谷義夫先生
【経歴】
1963年東京都生まれ。
1989年群馬大学医学部卒。九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学等を経て、2009年に池袋大谷クリニック開院。日本一の呼吸器患者数を誇るクリニック院長として知られ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等、数多くのメディアに登場している。
池袋大谷クリニック院長、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。
主な著書『長生きしたければのどを鍛えなさい』(SB 新書) 『長引くセキはカゼではない』(KADOKAWA) など。