妊活のために知っておきたい「卵管」のこと。
不妊にかかわる疾患として、「子宮内膜症」や「子宮筋腫」などの子宮に関する疾患などが広く知られています。しかし、不妊の原因のおよそ3割は「卵管」によるものであるということは、ご存知でしょうか?
今回は、卵管の異常によって妊活にどのような影響があるのか、原因や検査方法・治療方法の観点から詳しくみていきましょう。
◆卵管のトラブル「卵管障害」ってどんな状態?
卵管とは、子宮から左右の卵巣に伸びる管のことで、精子と卵子が出会う場所となります。卵管で出会った精子と卵子は受精卵になり、子宮へ向かっていきます。つまり、卵管に何か異常があった場合、精子と卵子が出会えなくなったり、受精卵が子宮にたどりつけなくなったりするため、妊娠できない場合があるのです。
卵管の異常とは、具体的には卵管が詰まっていたり、狭くなっていたりする状態であり、この症状こそが、「卵管障害」と呼ばれているのです。
障害の原因となるものは様々ありますが、卵管に炎症を起こす代表的な原因に、クラミジアなどの性感染症による炎症があげられます。
クラミジアは放っておくと卵管障害だけでなく子宮頸管炎などその他の疾患を引き起こす場合もありますので、まずは病院で検査をして、感染しているかどうかを知ることが大切です。検査の結果、クラミジア感染が分かれば抗生物質を使って治療します。
ここで大切なのは、クラミジア感染が治っても卵管障害が解消するわけではないということです。クラミジアの治療が完了しても不妊治療は引き続き継続する必要があります。
その他に卵管障害を引き起こす原因として考えられるのが、子宮内膜症です。子宮内膜症とは、子宮を覆っている子宮内膜が、なんらかの原因で子宮以外の場所に根付いてしまう病気です。子宮内膜は根付いた場所で増殖や剥離を行うため、周囲の組織と癒着が起こってしまうのです。
つまり、子宮内膜が卵管に根付いてしまうと、卵管のつまりを引き起こす可能性があるということ。子宮内膜症は症状に合わせて治療をおこなっていきますので、子宮内膜症だと判明した場合、かかりつけの医師と相談しながら治療方法を決めていきましょう。
◆卵管の状態を確認するためには?
自覚症状のない卵管障害の有無を調べるには、どのような方法があるのでしょうか?
卵管障害であるかどうかを調べる方法としては、卵管に造影剤を注入し、レントゲンで詰まりを確認する「子宮卵管造影検査」や、卵管に生理的食塩水や空気を注入することで卵管が通っているか確認する「卵管通水検査」「卵管通気検査」があげられます。
卵管が少しせまくなっていた場合には、これらの検査をおこなうことで卵管の詰まりがとれ、検査後は数ヶ月〜半年の間、妊娠がしやすくなる効果が期待できます。
これらの検査には痛みを伴う場合がありますので、痛みが不安な場合は、痛み止めや麻酔が使用できるかについて、一度病院に確認してみましょう。
◆治療方法はあるの?
「検査によって子宮の詰まりが解消する場合がある」とご紹介しましたが、検査の結果、卵管が完全に閉じてしまっていた場合には、手術を受けるという選択肢も考えられます。ここからは卵管障害が発見された場合の治療方法についてみていきましょう。
左右どちらか、または両方の卵管に卵管障害が発見され、受精卵の通過が難しいと考えられる場合、それぞれに合わせた治療を行っていきます。
左右どちらか片方の卵管のみがふさがっている場合には、もう片方の卵管から受精卵が通過し妊娠する可能性がありますので、まずはタイミング法による妊活を続け、様子を見ます。しかし、左右共に卵管が正常な状態に比べると妊娠率は下がりますので、排卵誘発剤などを使って妊娠率を上げる場合もあります。
両方の卵管がふさがっている、もしくは狭くなっていて受精卵の通過が難しい場合には、卵管を広げる卵管形成術や、場合によっては自然妊娠から体外受精に切り替えるなどの選択があります。卵管の状態やご自身の年齢によって、手術方法は様々ですので、かかりつけの医師と相談して、手術方法を決定しましょう。
「タイミング法がなかなかうまくいかない」「子宮には異常がないのに妊娠しない」という方は、もしかしたら原因は卵管にあるかもしれません。
原因が分からず、まだ卵管に関する検査をしたことが無い、という方は一度かかりつけの医師に相談してみましょう。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。
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