「妊孕力(にんようりょく)」をご存知ですか? 不妊の正しい実態とは
皆さんは「不妊」ということが、どういったことなのかご存知でしょうか? 不妊、不妊治療、妊活…最近では耳にする機会も増えてきました。しかし、その一方で、正しく不妊の実態が広まっていないもの事実です。
今回は、「将来子どもが欲しい」と思いつつ、「まだ先のこと」と考えていらっしゃる方に是非読んでいただきたいです。
「不妊」って? どのくらいの人が悩んでいるの?
不妊症、というのは妊娠を希望して、一定期間性生活をおくっているのにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態のことをさします。
頭のどこかでいつか子供は授かれる、と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。しかし、近年約10組に1組の夫婦が「不妊」である、といわれています。更に、最近では女性が社会で長くキャリアを積むことができる環境ができ始め、結婚も晩婚化しているため、不妊のカップルはもっと多いとも増えていくとも言われています。
もちろん、自然に授かる方もたくさんいますが、その一方で不妊に悩むカップルも少なくはないのです。
不妊治療に潜む「お金の問題」
不妊かも、と思ったらいくつかの検査を受け、原因を究明していきます。男女共に原因が潜んでいる可能性があります。
女性の場合は正しく排卵されていなかったり、子宮や卵管に何かしらの因子が存在する場合もあります。男性の場合は、精子の数が少ない、精子の運動力が低いといった精子に問題がある可能性があります。
原因がわかったら、次はその原因を取り除くステップへ入ります。ここで大きな課題となるのが、「お金の問題」です。不妊治療にかかる費用は、それぞれの原因や治療の期間によって様々ですが、平均して30万円以上かかっているとも言われています。
国や自治体での補助制度も少しずつ広まってきていますが、経済的な負担であることに変わりありません。実際、費用を負担できず、治療をあきらめてしますカップルも少なくないのです。
1/3は原因不明!? その実態は加齢による「妊孕力」の低下?
実は1/3が検査では原因が分からない「原因不明不妊症」と呼ばれるものに該当します。原因が分からない場合、継続してタイミング法を試してみるか、体外受精をする手段があります。
しかし、そもそも精子あるいは卵子そのものの「妊孕力」が弱まっている可能性も。「妊孕力」とは、精子や卵子の「妊娠する力」を指します。聞きなれない言葉かもしれませんが、「妊孕力」は妊活を考えるときのキーワードです。
妊孕力は、年齢と関係があると考えられています。そのひとつの証拠として、原因不明不妊は年齢が上がるにつれて割合が高くなる傾向にあります。
このことから、妊孕力は年齢とともに低下していくと考えられています。一度でも妊孕力が消失してしまうと、復活させるような治療法はほとんどないのが現状です。
不妊症はこれまでおおきな病気にかかったことが無い人でもなり得る症状です。不妊検査で判明する病気は自覚症状がないものが多いため、早期の検査による発見が重要です。
また、卵子と精子の赤ちゃんをつくる力はどうしても年齢にはあらがえない、という現実があります。
いつかこどもが欲しい、と思ったとき、ご自身のキャリアプランを考えるのと同様にして、ライフプランを考えてみませんか? すぐに妊活するときではなくとも、もしかしたら、今、病院で相談してみたり、健康について考え直すべき時かもしれません。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。