バリ島の1年でもっとも静かな日
バリ島が暗闇に包まれるバリの新年=ニュピ。果たしてその日、島は一体どんな状態になるのかを体験したくて向かいました。
前回の記事では、新年前日に行われる壮大なオゴオゴパレードの様子をご紹介しました。今回は、いよいよ初体験のニュピ当日についてお届けします。
前回記事:電気使用禁止、ビーチ立入禁止、空港も閉鎖!? バリの新年「ニュピの日」体験【山下マヌーの旅コラム】
バリ島の新年は昔の日本がそうだったように、静かに過ごします。ただし日本と大きく違う点は、家から出てはいけなかったり、火や明かりを灯もすこともNGだったりするところ。そうした島の掟は徹底され、空港さえ閉鎖になるほどです。
観光客も例外ではありません。ホテルの敷地から出ることを許されないのです。なぜ、そのようになっているのかというと、新年は島から悪霊が出ていくそうで、それを静かにやり過ごすためだと言われています。光が漏れたり、ふらふらと外出なんかしたりしたら、悪霊がそこをめがけて取り憑いてしまうと考えられているのですね。ホテルもほら、こんなふうに。入口にパイロンが立てられて、 出入り禁止になるんです。
時折エコイベントなどで東京タワーのライトが消されたりすることはありますが、日本中の電気を全て消すなんてことはありえませんよね。島中の明かりを強制的に消すなんてことは、今どきバリ島のほかではあり得ないことだと思います。
ニュピ当日の過ごし方
そんなニュピ当日を過ごしたのはサヌールのハイアット リージェンシー バリ。先日5年の歳月をかけて一大リニューアルオープンしたビーチフロントに建つリゾートです。
朝のビュッフェのメニューは通常通りのようです。朝の一杯、オリジナルデトックスジュースで始まるニュピの朝。
ナシゴレンとミーゴレンを合わせ、それをタマゴで包んでみたら、なかなかイケました。
朝ごはんを終え、ビーチに出ようとすると警備員から「NO」とやんわり静止されてしまいました。よく見ると、ビーチパラソルは開いておらず、ビーチは閉店状態でした。なるほど、ホテルの前のビーチにさえ出ることが許されていないという、 徹底ぶりです。
スパ・マッサージで旅の疲れを癒すのもアリ
ホテルから出てはいけないなら、ホテルの中で遊ぶことを考えなければなりません。最初に浮かんだのは、バリ島を代表するアクティビティ、スパ・マッサージ。ハイアット リージェンシー バリにも当然あります。緑がたくさん生い茂るガーデンの小道を抜けた先という、秘密っぽい場所にスパ棟発見。
シグネチャー・バリニーズというマッサージ(60分90万ルピア:約8,000円)を体験しました。背中や肩に乗っていたと思われるなにか重い物が取れたようなスッキリ感。
スパを終えて特にやることもないのでプール。メインプールの他に大人プールがあり、そこでひと泳ぎ。しかしこの日は、あいにく曇天気味だったので早々に引き上げました。
このホテルが完成したのは70年代。日本の建築会社によって設計建築されました。当時はまだ観光ブームが到来していなかったため、かなり広大な敷地を確保できたのでしょう。相当広い敷地の中にゆったりと造られていて、敷地内には手入れの行き届いた緑のガーデンが広がっています。
一部リージェンシークラブの方しか入れない場所もありますが、オーシャンフロントに建っているのにもかかわらず、緑満載という、プチウブドゥ感も味わえたりしますよ。
ホテル内のATMもチェックしてみますが、やはり動いてません。カードを入れようと試みても受け付けてくれません。
何やら張り紙があって「ニュピの日はATMは使えません」というようなことが書いてあります。これは日本の正月も同じですね。
旅には欠かせないご飯タイム
そうこうするうちにランチタイム。この日メインダイニングでのメニューは…「ニュピランチビュッフェ」280K(約2,500円)。
内容は普段と比べてシンプルですが、それでもハイアットのメインダイニングで食べ放題でこのお値段なら、ニュピの日も悪くないですね。
もう一軒イタリアンレストラン“ピッザリア”もチェックしてみました。焼き立てピザが自慢のこちらですが、ニュピの日もちゃんと食べることができました。
両方の店を検討した結果、選んだのはピッザリア。理由は小腹が減ったときに備えるため。外出禁止、ホテルの売店もクローズするニュピの日に小腹が減ってしまってはどうしようもありません。そこで、ピザを半分残し持ち帰り、夜の部屋飲みに備えておきます。
部屋といえば、このホテルで個人的にオススメしたいのは1階のテラス付きの部屋。海は見えませんが、テラスから繋がる緑の芝生がまるで専用ガーデンのようでもあり、かなりいい感じなんです。
夜のホテル内の明かりはどうなる?
ホテルを散策していると、スタッフが通路にキャンドルを並べ始めました。これはいったい? まさかホテル内の電気も消灯するんですか?
そのまさかでした。ごらんのように通路はキャンドルで照らされ、ちょっとロマンチックでもあります。
その他にフロントやロビー、外にある電気は全て消灯。スマホの明かりを頼りに歩きます。
では、ディナーはどこで? ホテル自慢のメインダイニングもイタリアンも使えません。案内されたのはこちら。ここ、普段はホテル従業員の社員食堂じゃないですか(料理内容は従業員用とは違います)!
そっか、地下で悪霊に見つからないようにとの気遣いからこの場所で食べるんですね? 社員食堂でディナーって!? なんだか物凄く貴重な経験をしているような気がします。
ニュピ当日の電波は?
ディナーが終わったら部屋に直行です。だってやることがないからね。
「さてテレビでも」とリモコンのスイッチを押してみると…そっか。テレビもお休み、NHKもCNNもBALI TVも全局停止でございます。
それじゃぁWi-Fiを繋いでスマホでも…こちらも繋がりません。日本で借りてきたグローバルWi-Fiのルーターも繋がらなくなっています。なんとも徹底ぶりが凄いですね、ニュピの日。
WELCOMEの文字のままWi-Fiが繋がることはありませんでした。
当日は残念ながら曇天時々雨。天気が良ければ、真っ暗な中で見る星はどれだけ素晴らしかったのか? 満天の星空を妄想しつつ空を見上げ、人生初のニュピの夜を越したのでありました。
バリ島へのベストな渡航って?
今回プチ贅沢をして、ガルーダ・インドネシア航空のビジネスクラス体験してみました。前回も書いたように航空運賃が低めのアジア方面ならビジネスクラスでも10万円代から購入可能。乗っている時間は6〜7時間とハワイとほぼ同じ。それを考えればかなりバリュープライスだと思います。
成田空港では優先レーン利用で、ストレスフリー。
機内は1✕2✕1のシートアレンジ。他人の来ない窓際を選び、これまたストレスフリー。
ワインからの前菜〜メイン〜デザートのコースメニューを食べたら、フルフラットのシートで熟睡! 機内は快適です。
帰りのデンパサール空港では専用のチェックインカウンターでプチ、いやかなりの優越感。
日本到着まで待ちきれず、機内食は和食を選択。アツアツご飯が沁みます・・・。
結論として、ニュピは楽しい!
暗闇祭りみたいでなんか楽しい。島中が真っ暗になるこの日、世界中からやってきた人たちと過ごしていくと、お客同士がなんだか一体感みたいなものが湧いきて楽しい一夜を過ごせます。
これはある意味、お金を払ってでも体験すべきバリ島ならではの1年に1度のアクティビティではないでしょうか? ぜひ体験してみてください。ちなみに来年のニュピの日は今年の秋頃発表される予定です。
取材協力
山下マヌー Manoue Yamashita
雑誌編集者を経て旅行コラムニスト/作家に。渡航回数350回超、最新刊『 山下マヌーのランキンハワイ最新版』で著作は62冊に。
Travel columnist&writer after a magazine editor.
Over 350 times to foreign travel, and over 60 books of the copyright so that work.