咳は、気道内に入り込んだホコリやチリ、細菌、ウイルスなどの異物を体外へ排出するために生じる反射運動です。
咳は発生頻度の高い症状ですが、長引くと睡眠の妨げになったり、体力を消耗したりするなど身体に様々な影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、咳にまつわる知りたい! について、詳しく解説します。
【目次】
・【咳】乾いた咳の原因は? 薬、漢方でおすすめは?
・【咳】が続く、長引く…。これってなんかの病気? 病院に行くなら何科に行けばいい?
・【咳】を止める市販薬、処方薬を教えて
・【咳】を止めるのにはちみつが有効ってホント?
・【番外編】「咳が出る」って英語でなんていうの?
【咳】乾いた咳の原因は? 薬、漢方でおすすめは?
咳には、痰が絡んで湿っぽい咳と、乾いた咳の2つのタイプがあります。
気道の粘膜には、「線毛」と呼ばれる細い毛状の構造物が密生しており、気道内に入り込んだ異物をキャッチする働きがあります。「線毛」の表面は粘液で覆われており、キャッチした異物を粘液に絡めて咳やくしゃみとともに排出することで異物の侵入を防いでいるのです。
この際、異物と粘液、免疫細胞などが混ざり合ってできたものが「痰」です。
つまり、「線毛」を覆う粘液の産生が増えると「痰」がからんだ咳が出やすくなり、その主な原因は風邪などによる気道粘膜の炎症です。
一方、乾いた咳は気道粘膜の過敏性が高くなる気管支喘息やアレルギー、肺がん・肺結核・気胸など肺に発生する病気によって引き起こされます。
乾いた咳に対する薬は、それぞれの原因によって異なりますが、アレルギー反応を抑える抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬などの飲み薬を使用するのが一般的です。しかし、気道粘膜の過敏性が非常に高まっている場合には飲み薬で効果がないことも少なくありません。そのような場合には吸入や点滴治療が行われることもあります。
【咳】が続く、長引く…。これってなんかの病気? 病院に行くなら何科に行けばいい?
咳は感染症による気道粘膜の炎症や過敏性の亢進によって引き起こされます。マイコプラズマなどでは気管支炎や肺炎に進行して咳が長引くこともありますが、多くは一週間程度で改善します。
しかし、中には数週間たっても症状が改善しない場合もあります。
咳が長引く場合には、以下のような病気が潜んでいる可能性も考えられます。
咳が長引く場合に疑うべき病気
咳ぜんそく
気道粘膜が慢性的に炎症を引き起こして過敏になり、乾燥した空気や温度差などの些細な刺激で咳が止まらなくなる病気です。風邪による上気道炎の後に発症することが多く、三週間以上の乾いた咳が続く場合は咳ぜんそくを疑います。
咳ぜんそくの半数は気管支喘息に移行するとも考えられており、適切な治療を行ってしっかり治すことが必要です。
気管支喘息
アレルギーによって引き起こされる病気の一種です。ハウスダストやホコリなどの特定のアレルゲンを吸い込んだり口にすることで、気道粘膜にむくみが生じて狭くなり、咳や喘鳴、呼吸苦などを引き起こします。子どもが発症しやすい病気ですが、成人になって初めて発症することも少なくありません。
悪化すると気道が狭まることで呼吸ができなくなり、意識消失を引き起こしたり、最悪の場合死に至ることもある恐ろしい病気です。
肺がん、肺結核など
肺の中に発生する病気が咳を引き起こすことがあります。乾いた咳が出やすいですが、悪化すると血が混ざった痰が出るようになり、呼吸苦や体力の低下による衰弱が見られることもあります。
心不全
咳は心臓の病気によって引き起こされることがあります。心不全など心臓の機能が低下することで、心臓のポンプ機能が正常に働くなり、血液が心臓に溜まりやすくなります。
その結果、心臓や肺に大きな負担がかかって肺に水が溜まり、透明な痰が絡む咳が出やすくなります。横になった状態で咳が強くなるのが特徴で、チアノーゼを引き起こすことも少なくありません。
咳が2週間以上続く場合は、呼吸器科や耳鼻科などを受診して検査を受けるようにしましょう。
また、咳以外にも何らかの症状がある場合は一般的な内科で診てもらうこともできますので、かかりつけ医に相談するのも一つの方法です。
【咳】を止める市販薬、処方薬を教えて
咳を完全に止める薬は存在しませんが、気道を拡げたり、咳反射を引き起こす脳に作用することで咳を鎮める作用を持つ薬があります。咳が続く場合は病院を受診して医師から薬を処方してもらうのがベストですが、市販の薬でも咳に効くものがあります。
咳に効く市販薬・処方薬
市販薬
気管支を拡げやすくする成分や痰を出しやすくする成分などが含まれたものが多く販売されています。
「新コンタックせき止め®」や「新コルゲンコーワ咳止め®」、「クールワンせき止め®」などが代表的です。
それぞれ薬の形状や飲み方などに差がありますので、自身が飲みやすいものを選ぶようにしましょう。
処方薬
医師から処方される薬には、咳反射を促す脳の一部をブロックして咳を止める効果があるリン酸コデインなどの「中枢性鎮咳薬」と、気道に直接作用して咳を鎮める「メジコン®」や「レスプレン®」などの末梢性鎮咳薬があります。
また、咳ぜんそくや気管支ぜんそくなどにはステロイド薬が使用されます。
いずれも市販薬より高い効果が期待できますが、中枢性鎮咳薬は眠気などの副作用が起こりやすいため、服用中は車の運転などに細心の注意が必要です。
【咳】を止めるのにはちみつが有効ってホント?
「咳が出るときは、はちみつを食べなさい」という言い伝えを聞いたことがある人も多いと思います。
はちみつを常備している家庭は多く、スーパーなどで入手することができるため、この言い伝えが正しいとすれば、咳が出た時のセルフケアとして非常に有用といえます。
では、はちみつには本当に咳を止める作用があるのでしょうか?
はちみつによって咳を止めることはできませんが、はちみつが持つ様々な成分によって症状を和らげたり、咳を予防することが可能です。
はちみつには殺菌成分が含まれているため、口にすることでのどの消毒効果を期待することができます。また、はちみつの潤いがのどに行き渡ると、乾燥によるイガイガ感を解消したり、「線毛」に潤いがプラスされることで、異物を排除する作用が高まり、風邪をひきにくくなる可能性もあります。
このように、はちみつは喉によい効果を発揮しますので、咳が気になる時や風邪を引きやすい時期などにはドリンクに溶かしたりして積極的に口にするようにしましょう。
【番外編】「咳が出る」って英語でなんていうの?
海外旅行に行く機会も多い現在。旅行中に環境の急激な変化などで咳が出やすくなるともあるでしょう。そのような場合に備え、海外でも症状が伝えられるよう【咳】に関する英語を覚えておきましょう。
【咳】という単語は英語だと【cough】と訳される
【cough】は名詞と動詞の両方で使用することができ、たとえば「咳が出る」は「I have a cough」、「咳が止まらない」は「I cannot stop coughing」と表現されます。
ぜひ頭の片隅に覚えておいて、旅行の際などに活用してみましょう。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。