落語は世界で一番不親切なエンターテイメント!?
落語会に行ってきた。
お噺を披露してくださったのは、三遊亭兼好(さんゆうてい けんこう)師匠。
夏にちなんだ“お決まりの”お化けもの。でもなんだかお化けのお菊さん、お皿の数え方がやたら現代的。酔っ払って数え間違えたり、お菊さんが美しすぎてお化けなのに常連さんがいたり、、、とても馴染みやすいお化け物で、その場は大盛り上がり!
落語だけでなく、そのストーリーの背景も色々と面白おかしく説明してくださる兼好師匠。
なんとお化け話が“夏が定番”というのは日本だけで、海外はむしろ冬のお化け話の方が多いそうだ。幽霊話をすると“ぞくぞくして涼しくなる”という感覚は日本人特有なものらしい。
江戸の昔、暑さを忘れるために誰かが仕掛けて“お化け話”を集中させて流行らせたのかも? その戦略マーケティングに乗っかったまま数百年経っているのかも、日本人! 面白い!
さらに兼好師匠曰く、夏のお化けは女性が定番。
それも美しい女性がお化けに変わる? 率が高いとのこと(外国は結構、男お化けが多い)。
確かに“可愛さ余って憎さ百倍”じゃないけど、美しい人が怨念をもってその表情がガラッと変わる時、そこに周りが心からぞっとする恐ろしさがあるものだ。
「これがお菊さんがふくよかでちょっとおかめさんみたいな顔だったら、恐ろしさも半減しますな」とお師匠さんが言うと、我々は一斉に、柳の下でぽっちゃりお菊さんが八の字眉毛で「うらめしやー」と指を揃えているところを想像する。プププッ。
一座爆笑
「確かに!」と、ぽんと膝を打ちたくなるような軽快なトーク。落語というより落語にまつわるエンターテイメント。
師匠はさらに面白いことをおっしゃる。
「落語ってのはね、世界で一番不親切なエンターテイメントなんです」
確かに高座に一人着物をまとった噺家が扇子一本のみ携えて座る。なんの大道具も小道具もない。話とジェスチャーのみでその場を盛り上げる噺家。聞く方が想像力を働かせ、そして噺家は一座を笑の渦に巻き込んでいく。
「聞く方に人生の経験や知見がないとなかなか盛り上がらないのが落語。だって扇子が日本刀になったりはたまた菓子うけになったり、口に運ぶそのお菓子が食べる時の擬音によって饅頭だったり、羊羹だったり。。そのシーンごとに聞く方が想像力を働かせないと成り立たないんです。だから落語は若い方より人生経験のある方の方が楽しめる」
なるほどー! 我々なでしこにはこれからどんどんぴったりになっていくエンターテイメントなんだ。
と大盛り上がりな落語会。
そしてその座の笑いと盛り上がりに道ゆく人も足を止め、立ち見もでる盛り上がりよう!
ん? 立ち見? 道行く人?
ん? よく見るとなんかやたら派手な壁紙???
そうなんです、今回のこの落語会。恵比寿アトレ西館3階にて行われた、ファッションブランドのロペさんの催し。
場所もロペの横にあるカフェの一角を借りてのイベント。
兼好師匠はカフェのテーブル(ガタガタするところに)うまくバランスをとりながら座ってのおはなしされていたです。エントリーかなって招待された我々、約40名は男子も女子も大盛り上がり。
こんな異質な場所でやるってぇと、観客もずっといつもより若いってぇもんだ(笑 ここだけ江戸前)。
こんなイベントを仕掛けたのは、このお二人。
はい、urakuというユニットのお二人。石崎由子さんと田沢美亜さん。
ブランド “ロペ エターナル”は、『女を磨く』と題して、“uraku”をパートナーに、日常にささやかな輝きをもたらす、愛すべき「永遠(エターナル)」なものを二十四節気に重ねて紹介するというイベントを、毎月恵比寿アトレ3階で行っているのだった。
美亜さんは、あれ、どこかで見かけたことないですか? そう、数々のファッション誌、そしてラクジュアリーブランドのイメージも務めるモデルさん。一方の由子ちゃんはファッションディレクター業の傍ら、今回は江戸にまつわる文化をわかりやすく我々に紐解いてくれる。
日本伝統文化をこよなく愛し、そして歴史にも造詣が深かった由子さん。日本文化に惹かれ、茶道も嗜み、色々なところを訪ねてみたいと思っていた、美亜さん。
2人が色々訪ね歩いて、一緒に見聞きしているうちに、お互いデュオを組んで、これを自分たちなりに発信していこうと思い立つまでに、さほど時間はかからなかった。
由子ちゃんが大好きだった三重の椿大神社に、ミアちゃんが偶然「行きたいの」と言い出し、神社で参拝中に自然とどちらからとなく「一緒にやりたいね」と言い出したのが urakuのきっかけ。
それ以来、urakuは色々な場面で、日本の伝統文化を我々に馴染みのある“ファッション的なアプローチ”を通して紹介する役目をかって出てくれている。
和うそくで女を磨く!?
ここ何十年か、西洋から来るものにばかり惹かれて取り入れてきた日本人。新しもの好きな日本人の悪い癖だ。でもなんとなくそれだけだと飽き足らない。そんな若い女性が増えてきて、今は逆に日本の古来の文化を見直したい、そんな気運も高まっている。
さてさて、ロペの店内に戻りましょう。よくよく店内を見回すと、、、和ろうそく。
12ヶ月ごとの季節折々の花が美しく描かれたろうそく。
どうやら、これに火を灯して「一念」をこめるとろうそくとともにその「念」が通ずるようになるらしい。特にゆらゆらと揺れるろうそくの灯火。これは本当に人間の心を安らげる。普段のキャンドルとはまた違った趣の和ろうそく。
早速一つお買い上げ(季節柄、朝顔にしてみました! 消費家ですから、はい)。
他にも、線香花火など色々、店内にはたくさんの和文化の素敵グッズがそこここに!
こんなところにはヨーヨーが。
こういうものはは見るだけでも心も癒される、やはり小さい頃の原風景、日本人の根底の部分は変わらない。原風景って、じいちゃんばあちゃん、田舎、、やっぱり夏に感じる機会も多い。
“美しく、自分を磨く”。
そんな素敵な体験を色々な側面からできたひと時でした。兼好師匠、urakuのお二人、そしてロペエターナルの皆さん、ありがとう!
二十四節気にまつわる、さまざまな江戸文化。次は「秋分」のタイミングを目指して9月21日にロペエターナルにて開催です。なでしこの皆さんホームページをチェックして、ぜひエントリーしてくださいね!
さて、自宅に帰ってきてかた早速灯してみました、和ろうそく。ふらふら、ゆらゆらして素敵でした。少し“女が磨かれた”気がしたクロシマでした。
▶︎ロペ
【編集後記】
しかし、今回の落語は面白かった。ハマったと言ってもおかしくない。
落語ってそんな簡単に接する機会も、あんまりない私。
“末廣亭”とかわざわざ行くのも敷居が高い。落語ファンでもなかったら、どこでどう“落語”に触れ合えるのか? なかなかわかりづらいもの。
そんな私に由子ちゃんから
「結構公民館や市民センター、カフェなんかで愛好家さんが主催してやっている場合も多いのよ。今だったらそれこそネットで調べたら結構出てくるものよ。。臆せず行ってみるとハマって好きな演目やご贔屓の噺家さんができたりも。楽しんで入りこんでみてくださいな」
との有難いお言葉。
おそるおそる? ということで今回ご縁のあった、兼好師匠のHPを覗いて見る。
するってぇと、(またここだけ落語っぽいが)出てくる出てくる、たくさんのお知らせが!
噺家の皆さんって忙しいのだった。3日にあげず、連日各地を飛び回り、多い時だと1日に2つのイベントまで出ている(どこでもドアか? ワープする?)。そんな中で気になったのは9月15日のお坊さんアカデミー。
要はお坊さんが落語好きなんでしょうね。楽しそう! ちょっとしたお寺観光もできるし! そしてこの15日の兼好師匠、、、夜にはなんと有楽町でも落語会が。
おいおい間に合うのか?(ギリで間に合うのかな)
いっそのこと、北鎌倉→有楽町を両方追っかけして、そのギリギリ滑り込みセーフなスリルを共有してみるか(笑)!? と画策している消費家クロシマなり。
また、新しい世界が開けそうだ。それこそ現代版の江戸のいなせ女子。
こんないなせなニッポン女子代表“uraku”。生粋のたおやかでおちゃめな日本女子・由子ちゃんと日本の心を忘れないハーフ美人・ミアちゃん。これからも日本の伝統美の発信、よろしくお願い申し上げます。みんなもurakuの活動、チェックです!
初出:しごとなでしこ
黒島美紀子 MKシンディケイツ代表
消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。