アイコン研究所09
研究対象:【証明写真】の人
人のLINEなどSNSを観察していると、“この人こういうところあるよなー”とか“なるほど、こんな自己アピールをしてきているのね”といろいろ思うところがあります。
観察の結果、人は主にこんな目的でアイコンやプロフィール画像を設定していることが多いようです。
1.かわいくorかっこよく見せたい
2.リア充に見せたい
3.センスがあると思われたい
4.面白いと思われたい
5.アイコンなんて興味がないというスタンスでいたい
いずれにせよ、多かれ少なかれ“人の目”というのが何かしらの影響を与えています。
しかし、そんな“人の目”はまったく介さず、独自の道を突き進み、なおかつ圧倒的な存在感のあるアイコンを私は目撃したのです。ちなみに今まで2人しかそのアイコンには出会っていません。
それは“証明写真をアイコンにしている人”です。このアイコンに設定する意味、目的、意図が本気でわからないのです。まして女性の場合はなおさらです。
証明写真とは、言わずもがなではありますが、免許証やパスポートのアレです。あのなんともいえない背景、画角、照明、そして表情。証明写真にしか出せないあの不気味な感じ、わかりますよね?
当然のことながら、証明写真では本人のルックスのポテンシャルよりかなり下回る写真映りになりますし、それを免許証やパスポートならともかく、多種多様なLINEアイコンが並ぶ中だと、ひときわ異常な輝きを放つのです。
わかりやすい面白さはそこにはありませんし、当然ながらかわいくもリア充にも見えません。センスもよい・悪いの判断が利かないくらいのわけのわからなさ、さらには“SNSなんて興味ないよ”的なスカしたスタンスでもありません。
そこから感じるのは、“ただただ純粋な異様さ、不気味さ”なんです。そしてある種の“畏怖の念”すら抱かせるのです。
私自身を分析するにアイコンで“面白さ”“センス”みたいなのをさりげなく出そうとして、ちょっと痛くなっているタイプです。
そしてこの証明写真アイコンを見たときに、“ああ、これはかなり尖ったセンスだわ”と感動し、自分もマネしようと思いつつも“躊躇”してしまったのです。
だって自分のポテンシャルを低く提示しなければならないし、非常に伝わりにくいし、面白さよりもヤバさが際立ってしまうのではないかと思いきることができませんでした。
そうなんです、私は偽りの変わり者……そんな自分の弱さを思い知らされることとなりました。
証明写真を使う人は、正真正銘の変わり者
ちなみに私の知り合いに2人いるという証明写真アイコン女性のうちのひとりは、人と会話をしたいからと悩み相談屋を開業し、知らない人とひたすら会話をし続け、インドに毎年長期修行に行くような人。
またもう一人も、陸上選手だったけれど辞めたくなり、足の裏の皮を自ら剥ぐことで選手生命を絶ち、今は息を止めることにはまっているという人。
つまりはベクトルは違えど、本気でヤバく、本気でロックな生きざまの女性たちなんです。
そんな彼女らを敬愛しつつも、“振り切れない自分”にどこかほっとする、そんな不思議な気持ちを抱かせるアイコンなのです。
みなさんの周りにもしも証明写真アイコンの女性がいたら、“本物”の可能性が高いです。
好奇心がある人は、そんなアイコンを見つけたら、ぜひ彼女らの生きざまを身近で味わってください。自分が安全な場所にいつつも、面白い体験談や思想を聞くことができるかもしれませんよ。
初出:しごとなでしこ
吉田奈美 writer
女性誌を中心に、タレントインタビュー、恋愛企画、読み物企画、旅企画、料理企画などを担当。著書に『恋愛saiban傍聴記』(主婦の友社)も話題に。