【目次】
・【夫婦別姓・法律】そもそも何で決まっているの?
・【夫婦別姓・最近の動き】法律に反対し、訴訟も多数
・【結婚♥夫婦別姓】別姓を望む人はどうすればいいの?
・【夫婦別姓・手続き】職場での旧姓使用は多数の企業が容認方向へ
・【夫婦別姓・問題点】家族の絆が薄まる?
【夫婦別姓・法律】そもそも何で決まっているの?
夫婦同姓については、民法で定められている
民法750条に「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏(=姓)を称する」との規定があり、結婚している間、夫婦はいずれかの姓を名乗らなければならないことになっています。
また、戸籍法74条には、「婚姻をしようとする者は、夫婦が称する氏(=姓)を婚姻届に記載して、その旨を届け出なければならない」という規定があります。
【夫婦別姓・最近の動き】法律に反対し、訴訟も多数
2015年12月16日、最高裁判所は「夫婦別姓は合憲」と判決
これは、民法750条が、憲法上の人格権、平等原則、婚姻の自由等に違反するとして、国に対して損害賠償請求がされた事件です。民法750条が憲法に違反するかについて最高裁判所が判断したのはこれが初めてのことです。ニュースでも話題になった事件なので、覚えている方が多いかもしれません。
結果は、最高裁判事15人のうち、5人が違憲、10人が合憲と判断しました。ちなみに3人の女性判事は、全員が違憲の立場をとりました。
サイボウズ社長の青野氏が訴訟を起こして再び注目が集まる
上記の最高裁判決が出てから約2年が経った2018年1月9日、今度は、サイボウズ株式会社の青野慶久(本名:西端慶久)代表取締役社長が、東京地方裁判所に夫婦別姓について訴訟を起こし、またこのテーマが注目を集めています。
民法750条が憲法に違反するかについては上記のとおり最高裁判所の判断が出ています。なので、青野氏はこう主張を行うと報道されています。
国際結婚の場合には夫婦別姓を選択することができるのに、日本人同士の結婚の場合には別姓を選択することができないことなどが、憲法上の平等原則違反に当たる。
この青野氏の主張にあるとおり、国際結婚の場合には、戸籍法の定めにより夫婦別姓を選択することができます。
【結婚♥夫婦別姓】別姓を望む人はどうすればいいの?
現状「事実婚を選択する」「旧姓を通称名で使う」の2択
現状、日本で夫婦別姓を望むのであれば、事実婚を選択するか、戸籍上は夫婦同姓にした上、旧姓を、あくまで通称名として使用することになります。
事実婚を選択した場合、配偶者控除が受けられない、扶養家族手当が認められない可能性がある等のデメリットがあります。他方、戸籍上夫婦同姓とした場合には、これらのデメリットはないものの、姓を変える以上、面倒な手続が発生することは、結局通常の夫婦同姓と変わりがありません。
【夫婦別姓・手続き】職場での旧姓使用は多数の企業が容認方向へ
旧姓使用を認める会社は45.7%に!
これまでお話してきたとおり、法律上夫婦別姓はまだ認められていませんが、職場で旧姓使用を認める動きは広がっています。
平成28年度の内閣府の委託調査によれば、旧姓使用を認める会社は45.7%に上りました。※
このような動きが広がっているのは、民間の会社だけではありません。
2017年9月1日には、政府が、国家公務員にも旧姓の使用を原則として認めるとの発表を行いました。また、2018年1月9日に最高裁判事に就任した宮崎裕子氏が、最高裁判事として初めて、旧姓を使用して仕事を行うと明らかにしたこともニュースになりました。
※株式会社インテージリサーチ「平成28年度内閣府委託調査 旧姓使用の状況に関する調査報告書」p.7(平成29年3月)
【夫婦別姓・問題点】家族の絆が薄まる?
夫婦別姓を選択できないことにはこのような不都合がありますが、夫婦別姓に反対する立場からは、家族間で姓がバラバラなのは良くないという意見がよく挙げられます。他に、家族の絆が弱まる、不倫が増えるなどと主張する人もいます。
多くの人が暮らしやすい、働きやすい環境の実現のため、希望者は夫婦別姓を選択できるよう、制度の見直しは不可避かもしれませんね。
初出:しごとなでしこ
弁護士 松葉優子
2012年早稲田大学法学部卒業、2014年早稲田大学大学院法務研究科修了。2015年弁護士登録。2017年に、現在所属しているプロアクト法律事務所に入所。企業のリスクマネジメント等が専門。