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2017.12.23

自分の名前が「どうもしっくりこない」問題について考えてみた

自分の名前について。自分の名前が嫌いorどうもしっくりこないという人があるあると叫びたくなる爆笑コラム。

私ライター吉田、あだ名は「吉田さん」です

突然ですがみなさんは自分の名前に「しっくりきていますか?」多くの人は「言ってる意味がわからない」と思うかもしれません。

しかし何人かの人は「私もしっくりきていません!」と手を掲げるのではないでしょうか。今回はその手を掲げた人にのみ響くであろう、非常にニッチなテーマで記事を書かせていただきます。私事ではありますが、私ライター吉田自身、自分の名前にしっくりきていないことをつい最近自覚したんです。

黒板
(c)Shutterstock.com

私の名前は、吉田奈美(よしだなみ)。

別にキラキラネームでもなければ難読漢字もなく、有名人と同姓同名でもなく、ごくごく普通、そして私の年代を考えれば両親的にはちょっとシャレた名前をつけてくれたと思いますし、感謝もしています。

しかし、しかし、しかし、「しっくりこない」。今思えば、無自覚のうちにしっくりきていないからこその行動を数多く取っていたんです。

例えば……自己紹介の時は「吉田です」と名字だけ。

かつて若かりし日には合コンでの自己紹介ですら「吉田です」と言い放ち、場を微妙な空気に陥らせていました。

また純真無垢な人が時折私を「奈美ちゃん」と呼んでくれることもあります。心の奥底にはうれしさがあるのですが、それ以上に「戸惑い」の感情のほうが大きくなってしまい、相手が二度と「奈美ちゃん」と呼べなくなるくらい微妙な反応をしてしまうのです。

(c)Shutterstock.com
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だから私のあだ名はいつだって「吉田さん」。小学生の頃はたまに「ヨッシー」と呼ばれたこともありましたが、クラスのひょうきんな吉野くんだの吉岡くんだのにヨッシーの座はすぐに奪われ、またすぐに「吉田さん」に戻るのです。

クラスに2人の「吉田さん」がいる時は、もう片方が下の名前で呼ばれ、私は吉田さんという呼び名を死守してきました。

どんなに親しい友人でもだいたいが「吉田さん」。恋人にもほとんど名前で呼ばれたことがありませんでした(私を「奈美」と呼べる男性は、挫折知らずのオラオラ系、もしくは空気が読めないタイプの人でした)。

旦那でさえも、下の名前では呼びません

ちなみに今の旦那も私を名前で呼べません。「ねぇ」とか「あのさ」とか。でも人生でよくあることだったので、「あのさ」と呼ばれれば私のことなのねと振り返ります。

しかしふと思うのです。もしも一緒に海に行き私が溺れたらこの人は私に向かって「あのさー!」と叫ぶのだろうかと。

(c)Shutterstock.com
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病棟でご臨終間際の私に向かって、泣きながら「あのさ」と語りかけるのだろうかと。それはイヤ。死ぬときだけは名前で呼ばれたいとお願いしたのでした。

そんなわけで家族にすら名前で呼ばれない私。その原因はこの「しっくりきてない感」の正体にあるのではないかと感じたのです。なぜしっくりきていないのか。その原因を探ってみることに。

自分の名前に「しっくりきてない感」の正体とは

1.あだ名にしづらい

まずは名字の「吉田」。ヨッシーという呼び名もあるにはありますが、ヨッシーが似合うには多少なりとも「やんちゃで元気な雰囲気」が求められます。人見知りでインドア派の私は、ヨッシーと呼ばれる器ではありませんでした。

2.呼ぶ難易度が高い

下の名前の「奈美」ですが、あの安室奈美恵をもってしても「奈美ちゃん」とは呼ばれない(もちろんアムロのキャッチーさもありますが)ことでもわかるように、なかなか「呼びにくい」名前なのです。呼びにくいからこそ、呼ぶ方は踏み込んだ感、また呼ばれた方も踏み込まれた感が漂い、あだ名初心者には難易度が高い名前と言えるでしょう。

ちなみに私が思う難易度が低い(呼びやすい)名前は「あかね」とか「きょうこ」とか「ちぐさ」とか「ゆう」とか。この感覚伝わりますかね。「奈美」も「奈美子」であれば呼び捨てにしやすかったように思うのです。

3.愛着が持たれづらい

「吉田さん」がデフォルトのあだ名になった私ですが、自ら仕組んだものの「吉田さん」と呼ばれるたびになんとも言えずその人との距離を感じているのです。

もしも私が「亀山」だったら。おそらく私の思惑やキャラクターを飛び越えて、みな気軽に「亀ちゃん」と呼んでいたことでしょう。初対面でもいけそうなあだ名難易度ではないでしょうか。やはり鶴・亀のつく名前はそういった意味で<強い>です。

他にも「新垣」なら「ガッキー」、「若林」なら「若様」、「米田」なら「よねちゃん」、「増田」なら「まっすー」、「藤本」なら「ふじもん」、「浜田」なら「浜ちゃん」、「阿部」なら「あべちゃん」、「中島」なら「なかじ」、「小林」なら「コバさん」、ああ、「蝦原」で「えびちゃん」なんてのも、呼ばれやすくなおかつ愛着の持たれやすいパワーネームですね。

ちなみに私は結婚後、吉田から田中にジョブチェンジしましたが、戦士から剣士ぐらいの小さな変化だったので、しっくりこない感を解決するものではありませんでした。

4.アレンジも利かない

あだ名界の革命児「キムタク事変」をご存知ですか。木村拓哉、名字、名前、それぞれ単独で見たら決して使い勝手のいい名前ではありませんでした。しかし木村の「キム」、拓哉の「タク」を組み合わせたらどうでしょう。「キムタク」。本人が気に入っているかはともかくとして、呼びやすくそして覚えやすく親しみが沸くあだ名に早変わりしたではないでしょうか。

他にも、トヨエツ、ホリケン、マツジュン、フカキョン、ハセキョーなどなど、この法則により「親しみ」を手にいれた有名人はかなりいます。また有名人のみならず、一般にもこの法則で親しみやすく呼びやすいあだ名を手にいれた方は非常に多いのではないでしょうか。

しかしですよ。この法則はどんな名前にも使えるような凡庸性の高いものではないのです。「吉田奈美」をこの法則に当てはめると「よしなみ」。誰が呼ぶでしょうか。結婚後の「田中奈美」ともなると「たななみ」と「な」が連なる始末。諦めるほかなかったのです。

5.セルフイメージに合わない

「奈美」という名前、昭和50年という年代を考えればやや垢抜けた名前だったんです。ちょうどそのころの価値観だと、「◯◯子」という子がつく名前が全盛で、子がつかない名前が徐々に増えつつあるというタイミングでした。

でもこれが私のセルフイメージと合わなかったんじゃないかと自分では分析しています。「ちょっと私の名前古臭いけど」、みたいなフックがあったほうがより自分の面倒臭い性格とのマッチングが高かったんじゃないかと思うのです。

また「奈美」という漢字を人に説明する時に、「奈良の奈に美しい」と自ら言わなければならないのが非常に苦しかった。人一倍「美」というものにコンプレックスを抱いているのに、自ら「美しい」と言わねばならぬジレンマ。

(c)Shutterstock.com
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昔の母子手帳を見たら私の名前は「奈巳」と書き「なみ」でした。しかしヘビの字を使うのはどうかと思うという反対にあったそうで、その後名前を家庭裁判所に申し入れて改名した経緯があったそうです。もしも「奈巳」であれば、多少はこのしっくりこない感は拭われていたのではないかと思うのです。

そんなわけで自分の名前がしっくりこないことについてここ最近ずっと向き合ってまいりましたが、この話をいろいろな取材現場や友人間で議題にしてみると、思いがけず「私も!」という声が数多く聞かれました。

名前がしっくりこない人へ贈る解決方法

そんな人に少しでもヒントになればと私なりの「しっくりこない解決法」を最後にお伝えしようと思います。

まずは自分の名前を「書く」とき、これはメールの署名などアンオフィシャルなものに限りますが、その際は名前の一部をカタカナ、もしくはひらがなにします。例えば吉田奈美であれば「吉田なみ」。こうすることで多少なりとも親しみを沸かすことができます。

また思い切ってあだ名を作ってしまう。これは相当難易度高いですが、自分が呼ばれたいあだ名を「◯◯って呼んで!」と強要してしまう手法。周りを見ているとけっこういますよ。最初は違和感しかありませんが、数ヶ月もすればパワープレイでそのあだ名をものにしています。

また最後になりますが、同じように名前がしっくりこない人たちのコミュニティを作り、そこだけで通じる新たな名前を作ることも有効です。ちなみに私はその仲間内では「望月聡子」と名乗っています。

(c)Shutterstock.com
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これは親しみが沸くキャッチーなニックネーム「もっちー」を手に入れ、さらには「さとこってどう書くの?」と名前を説明する時には、「耳にハム心で聡子」と、いかにも私が言いそうなセリフを吐くことが可能になるからです。

これからも私は自分の名前と向き合って生きていきますが、そのモヤモヤの原因を追求することで少しは心が楽になったように思うのです。

最後までわけわかんないこと言ってるなーって人は、きっと自分の名前にしっくりきている幸せな人です。その幸せをどうぞ自覚し、名前にしっくりきていないなと思う人がいたら、積極的に愛着の持つあだ名をつけてあげてくださいませ。

初出:しごとなでしこ

吉田奈美 writer

女性誌を中心に、タレントインタビュー、恋愛企画、読み物企画、旅企画、料理企画などを担当。著書に『恋愛saiban傍聴記』(主婦の友社)も話題

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