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LIFESTYLE

2017.05.26

生活のレベルを下げられない! 贅沢していないけどお金がない|小説版 アラサーのリアル女子会

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美香は愛車の紺のボルボで、海辺の道を走っていた。
くねくねの曲がり道、トンネルを抜けたところでやっと広い視界が開ける。真っ青な空と海に新緑が眩しい。

『きゃー素敵ー、きれいー』

横の座席と後ろからそれぞれ歓声があがる。

そう、今日はわざわざシーサイドまで女子四人で車を飛ばしてきた休日。やっぱりこの風景なくては!

珍しく広い遠浅の海が続く海岸線。
目指す海辺の一軒家が見えてきた。
地の野菜と海鮮をふんだんに使ったローカル自慢のレストラン。
それもぽつんと海岸線に独り建つグッドロケーション。

それにこの季節はずれの大きな太陽とくれば、気持ちも自然と盛り上がるのだった。

もうひとつ盛り上がるわけが我々にはあった。

そう、このところめっきり食事の誘いに乗らなかった(いや大好きなゴルフの誘いまで)瑞枝が今回はやっとここまで来たのだ。

テーブルについてブイヤベースをオーダーし、うっすらと水滴をつけた氷水を大きく煽ったあと、まずはシズカが声を荒げて詰め寄った。

「ちょっと瑞枝、なんでこの頃全然私たちの誘いに乗らないのよっ? まさか私たちの知らないところで、素敵なメンズと遊び放題だったとか?」

(疑いの眼差し)

すかさず瑞枝が答える。

「んなわけないじゃん。今、本当に仕事が忙しいのよ。ちょっと前まで本国の上司が来日しててすごいチェックが入ってたし」

「そっかー」

冴子が始めて口を開く。

「にしても、付き合い悪いよね、このごろ」

「実はね…」

きたきた。やっと。

瑞枝が本音を吐く時が。オトコでもできたかー???

「…お金がないの」

「ハ〜っっ?????」

三人は周りを忘れて声を張り上げた。無理もない。

瑞枝は外資系投資銀行資系のバリバリの営業。本国からも信頼され、(多分だが)お給料も悪くないはず。

それも素敵なパパと料理大好きなママの元で今も暮らす完全なパラサイトだ。

洋服もいつも華やか、バッグのコレクションも目をみはる数、(まぁまぁ百戦錬磨な)我々も見惚れるシーンコーディネートでいつも楽しましてくれる女なのだ(あ、彼女の名誉のために言っておくと、決してブランド品だけでの構成でなくて、カラーや素材をうまく使った絶妙のセンスだ)。

joshikai

テーブルに運ばれたブイヤベースのスープをすすり、

「おいしい!」

一言呟くと、美香はすぐに話題に戻る。

「よし! とりあえず、1ヶ月の我々をシミュレーションしてみようよ」

「みずちゃん、家賃ないじゃん。それデカイよ。それでも?」

「そうですよ!私たちみたいに毎月の家賃がないなんて、それで10万やそこら私よりアドバンテージですよー!」

一つ歳下の冴子はやはりメーカーの営業をやっているが、家賃も自分で払ってうまくやっているのだ。

職業もステータスも違う私たちだが、気の合うメンバー。

東京の夜も、それぞれ集まって来て夜な夜な働く女子の抱える問題にこうやって向き合って来たわけだ。

「うーん」

いつもははっきりしている瑞枝だが、今日に限って返事が冴えない。

「なんか毎月すごい大きな買い物しているわけじゃない。それでもカードとかで払っていると、月末にはなーんも残ってない。そんな生活にちょっと心配になってきちゃったわけ」

そんなの我々みんなそうじゃーん。「瑞枝さん、家賃払ったと思って毎月10万は先に給料天引き貯金するの、やってみたら?」

「うーん」

「じゃあ、どこを削るべきか、みんなでいろいろシミュレーションしてみよーよ」

みんなで自分たちの生活を見直すタイムのはじまりはじまり。

「ご飯はさ、だいたい週3回くらい外食だよね」

そうそう、別にラクジュアリーな「港区オンナ」を標榜しているわけでもないから、我々は五反田とか新橋とか、御徒町とかでも、美味しいと評判のお店を探すし、行く。

まあまあ気遣っているのは素材が良いこと、そしてあまりチェーン展開のお店じゃないこと。そんなことに気をつけながら、それぞれいろんな人とご飯をしていることが多い。

もちろん会食なら会社持ち。

でも、男性がいても、友達なら、プライベートは結構割り勘だよね。

「そういえばさ、昨日さ、知り合いのおじさんと広尾の奥のほうの焼き鳥やさん行った。レモンハイがすごく綺麗なの。オーガニックのレモン使ってて。美味しかった、こだわってて。最後が千葉の有名な養鶏家の卵使ったTKGなの! いいでしょ? 今度いこー」

うっかり脱線しかけてシズカが言う。

「で、払ってもらったの?」

「んなわけないよ。4人で割った」

「いくら?」

「んーもちろん多く払ってくれてたけど、だいたい1人8000円くらいだったかな」

「でしょー?? それよそれ」

瑞枝が声を荒げる。

そんな高くなくて小洒落たお店、そんなところは東京だと、だいたいお一人様5000〜6000円になる。

それにお酒をなんだかんだで、それくらいになっちゃう。
これが瑞枝の分析だ。

おまけに仕事でもまぁまぁ中堅な我々だ。会社を遅く出て、「じゃ、ご飯でもして帰る?」みたいな女子ご飯の時はやっぱり後輩よりも少し多く出したり、気遣いも忘れられない。

「そうだよねー」みんなでうなづく。

そう、外のご飯はみんな相手の奢り! みたいな甘〜い生活はなかなか、実はないのだ。

「やれやれ、これをグレードダウンさせる? チェーンの飲み屋みたいのに、変える?」

うーん。全員、無言。

やっぱり、そこそこは体にいいもの食べてたいしな。

You are what you eat.

下げられないなら、行く回数減らすか。

でも帰りがけにコンビニ弁当、なんて、最も避けたい行動だ。だからといって、疲れた身体に鞭打って夜遅くにご飯作るのも。

この海辺のレストランで運ばれてきたフレッシュな地のもの野菜サラダも、とれたて海の幸ブイヤベースも最後の有精卵のプリンも、やっぱりこだわりと愛情をもって育てられたものは美味しいし、きっと未来の私のためになるはず。

有機野菜の宅配しかり、食にかけるお金とこだわりはこのごろ、我々の中ではすごく高まっているポイントなのだ。

このごろ変えたもの。それは他にもある。

ずっとシャンプーやリンスなんて、なんでも良かった私。

スーパーで買ったものを使っていた。でも、みんなから止められた。

「わかってんの、美香? 経皮での体内への合成化合物の浸透とかが、アトピーとかアレルギーの原因かもって言われているんだよ」

「どうせなら、ちゃんとオーガニックを使って“未来の私への投資”しようよ」

…はーい…

それ以来、オーガニックシャンプーを使うようにしている。まぁ、種類もこのところ激増しているし、選ぶのも困らない。こないだ使ってみた、ココナッツオイルのホットパックは髪の毛もツヤツヤになったしな。

冴子も続ける。

「ボディとかもそう。私とかはアレルギーっぽい症状も出がちだから、マッサージクリームとかボディーローションはオーガニック。ほら、こないだフェスでもらった試供品。よかったから、そのまま続けたの。やっぱり前より調子いいよ」

キメが均質ですべすべの肌を露出しながらの、この一言、説得力あるよねー。

我々の世界はほとんど口コミだ。もちろん初めの一歩はニュースやら雑誌やらからの受け売りもあるかもだが、1人が使って良かったら、それが我々に次々と報告される。

全員が同じものを使うことはないけど、新しい習慣とかは、信頼できる友達が(それもちょっと前を行ってる意識高いヤツが)オススメするものは、やはり自然と財布の紐が緩む。

だって、そんなムッチャ、セレブ生活してるわけじゃない、みんな。同じ感度とレベルだもの、生活が。

無駄も、無理もしてないありのまま人生。
ただ、少しずつでもより良く、より素敵に。
より未来の健やかな自分を夢見て。

で、少しずつハードルは上がって行くんだよね。

前向きなプチ投資、なんだけどな、まあ、それ以外にもタオル、下着、などなど。みんなのこだわりポイントは続く。

1時間も経った頃、店内は残すのは、我々4人になった。4人で顔を見合わせる。

「なかなか譲れるポイントないねー」

「でも、少しずつ節制もしないとねー」

結論も導けないまま、女子トークは続くのであった。

#こういう基礎にお金かかるから、洋服代は削ってるかもな
#やっぱ、1番は外食減らしてヤセオカ常備菜だなー
#女子は結構あるよね自分のこだわりポイント
#一度知ってしまった良いもののグレードダウンってなかなか出来ない
#あ、これは全てフィクションです
#消費家ブログ、趣向を変えてお届けしました

初出:しごとなでしこ

黒島美紀子 MKシンディケイツ代表

消費家・商業マーケティングコンサルタント
アパレル、セレクトショップ・百貨店を経て独立起業して早や10年余。
数々のお買い物の実践と失敗を繰り返し、ファッション、ビューティ、グルメ、ライフスタイルの動向を消費者目線で考察。
また、世界各地の商業スペースやブランドをチェック、
消費活動を通じたマーケティングを行い、企業と消費者を結ぶ。


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Oggi5月号46ページに掲載しているアルアバイルのライトベージュのジャケットの値段に誤りがありました。正しくは¥49,500になります。
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