現役ホテルマンの古岡です。私の経験にもとづいて、女性がよりしなやかに働けるよう、マナーについてご紹介しています。
お辞儀を見ない日はないというくらい、日本でのお辞儀の文化や習慣は、子供から大人まで深く根付いていますよね。小学校の授業の前には「起立! 気を付け、礼!」と何気なくしていた挨拶も、大人になった今思えばとても素晴らしい教育だったのだと実感できます。あの頃は意味も考えずに言われた通り、素直にやっていただけでしたが、先生への感謝や敬意を表していたのですね。
では働く今、座ったままのお辞儀、流れ作業のまま入るお辞儀、不格好なお辞儀をしていませんか? そこには相手への感謝や敬意はあるでしょうか? お辞儀について、今一度考えてみましょう。
典型的な格好悪いお辞儀とは?
お辞儀は3秒で伝わるおもてなしです。言葉を発しなくても、お辞儀を見れば相手の心がわかるものです。ここでよくある、典型的な格好悪いお辞儀を紹介します。
よく行くコンビニエンスストアやドラッグストアで、このようなお辞儀で接客されたら、あなたはどのように感じるでしょうか?
✔首だけペコッと下げる
✔あごを前に出している
✔ペコペコ何度もする
✔猫背
✔目を合わせない
たとえ数百円の買い物だったとしても、このようなお辞儀をされたら、あまりいい気分ではありませんよね。もし、期待して行った高級レストランやホテルだったら、怒りに変わるのではないでしょうか。
見た目の格好悪さだけが問題ではありませんね。丁寧さを感じない、やる気を感じない、媚びを売っているように感じる、嫌味に感じる、だらしない・・・等、相手に失礼な印象を与えてしまう恐れがあります。
おもてなしの心が伝わる美しいお辞儀4ステップ
どんなに感謝の気持ちや敬意を持っていたとしても、上のような格好悪いお辞儀では、残念ながらその気持ちは相手に伝わりません。せっかく想いがあるのなら、美しいお辞儀4ステップでおもてなしの心を伝えましょう。
1. 姿勢を正す
まずはここからスタートです。どんなに角度やスピードを意識しても、姿勢が悪いところからスタートすると、美しいお辞儀にはなりません。横から見て耳、肩、くるぶしまでが一直線になるように立ちましょう。
2. アイコンタクト+笑顔
特に同時礼の時は、始める前のアイコンタクトと優しい微笑みを忘れずに! 同時礼は、挨拶言葉とお辞儀が同時なので、これがないと気持ちが伝わりません。分離礼では、言葉が先で礼が後なので、必然的に相手の顔を見て挨拶が出来ますね。
3. 姿勢を正した状態で腰から曲げる
お辞儀で背中が丸くなってしまうのは美しく見えません。スタート姿勢から、そのまま15度、30度、45度と腰から曲げてみてください。そうすれば、目線は足元ではなく、少し先を見ているはずです。頭だけが下がっている状態にはならないので、背中も丸くなりません。
4. 体を起こしたら、再度アイコンタクト+笑顔
美しいお辞儀の形だけで満足していてはもったいないです。最後のアイコンタクトと笑顔まで気を抜かないで! 表情は相手の感情を動かします。無表情だと、心が入ってないと思われる可能性大ですよ。
専門的な仕事の人こそ、お辞儀をマスターしよう
ある高級ホテルに宿泊した時に出会ったメイドさんのお辞儀エピソードを紹介します。メイドさんの仕事は、お部屋の清掃。ベッドメイキングからバスルーム磨き、掃除機がけなどを短時間で何部屋も仕上げていく、時間と体力勝負の本当に大変な仕事です。でも、私の姿を見かけた時に、手を止めて「いらっしゃいませ」と元気に声を掛けてくださいました。そして私が前を通りすぎるまで、丁寧なお辞儀してくださったのです。
お客様と直接関わる仕事ではないメイドさんからの丁寧で誠実なお辞儀に、とても感動しました。立ち止まって挨拶、お辞儀をされることが、こんなにも清々しく感じるものなのかと改めて感じました。
専門的な仕事をしている方こそ、このメイドさんのエピソードを思い出してほしいのです。「私の仕事は接客じゃないから、お辞儀は関係ない」という考えは今すぐ捨ててください。偉いとか偉くないとかも関係ありません。
礼儀正しく、いつも感謝の気持ちを言葉や態度で表せる女性は、特別な事をしなくたって好かれます。鏡の法則です。お客様をもてなす時だけ丁寧なお辞儀をするのではなく、もてなしてもらった時も、相手に対して笑顔で会釈ができるといいですよね。お互いに気持ちよく、愛のあるエネルギーを循環させていきませんか?
初出:しごとなでしこ
古岡めぐみ 現役ホテルマン・マナー講師
沖縄「カヌチャベイリゾート」や、大阪「大阪マルビル大阪第一ホテル」など、名だたるホテルでの勤務経験をもつ現役ホテルマン。お客様からの多くの支持を集め、また後輩育成にも力を注いできたことを認められ、過去に社内表彰されること多数。
現在は富山県内のホテルフロントスタッフとして勤務しながら、これまでの自身の経験をもとに接客マナーやホスピタリティなどのセミナー講師としても活動している。