豊洲移転問題、いったいどうなるのでしょうか
ここにきて皆、手詰まり感を感じているかのように見えます。過去にさかのぼって責任の所在を明らかにすることはぜひ進めてほしいですが、それと築地市場の今後を論じるのは別問題。この問題に最も怒り、嘆いているのは言うまでもなく市場の仲卸業者の皆さん。これから市場をどうする、という、将来に向けての話に議論を進めてもらいたいものです。
「第一に優先すべきは市場の安全・安心」とよく語られますが、先日TV番組でジャーナリストの木村太郎氏が「安全と安心は全く違う」と発言していました。有識者がデータを分析して「安全」という結論を出しても、消費者がそれを「安心」と感じるかどうかはこれも別問題。やはり80余年をかけて築き上げられた築地ブランドは、一朝一夕には豊洲ブランドに変身できないのです。結論はいつ、どのようにして出るのか、消費者の厳しい目は当分の間注がれています。
築地発・寿司チェーン店を徹底比較
そんな中、10月8日、9日に開催された場外市場恒例の築地秋まつり。築地3丁目に本社のある日刊スポーツは「移転問題の連日の報道がPRになり、過去最多の20万人以上が訪れたとみられている」と報じています。まさに、消費者が大いに支持する築地ブランドここにあり、です。
さて今回は、築地ブランドの象徴、「築地と言えば寿司」のお話です。築地の寿司というと、寿司大、大和寿司、岩佐寿しといった場内の名店、行列店の話になりがちですが(実を申せば筆者は、連日の行列に並ぶゆとりがなく、まだこの3店には立ち入っていないのです。築地初心者なのでお許しを)、ここはちょっと趣向を変えて、築地に本店を構え、築地以外でも店舗展開している築地発寿司チェーン店を見てみることにしましょう。名店の寿司はすでに多く語られていることですし。
つきじ喜代村すしざんまい
まず筆頭は、正月恒例、築地市場初競りの最高値入札で名を馳せる木村清社長の「つきじ喜代村すしざんまい」です。HPの支店数を数えると何と北海道から熊本まで64店。ですが閉店や休業、改装があるためか、全国50店舗と紹介されています。東京には40店。本拠地築地には、本店をはじめ別館、本陣、奥の院など9店。回転ずしや鮮魚店もあります。恐るべし、24時間年中無休がウリです。
▲築地4丁目交差点で目立つすしざんまいの案内看板。築地の9店が紹介されています。
現在は、木村社長がソマリアの海賊をマグロ漁師として教育したという逸話にあやかってか、限定「ソマリア沖三種握りセット(マカジキ/キハダ or メバチ/黒皮カジキ/298円)」が人気。特選おせち三段重(1万5800円)も予約受付中。10月31日まで早期予約特典ありです。
▲場外市場にあるすしざんまい本店。カーネルおじさんならぬ木村社長がお出迎え。
築地玉寿司
次に、昭和46年、日本で初めて手巻きを巻いた寿司店「築地玉寿司」。毎月8日は元祖末広手巻きの日として、全35種類の手巻きが1本100円で提供されます(8日が土日祝日に当たるときは日程変更あり)。全国に29店舗。築地の3店舗をはじめ都内に16店舗、関東圏のほか北海道、名古屋にも支店があります。創業は大正13年(1924年)3月といいますから築地市場開業以前。築地においても大変な老舗と言えそうです。
▲築地玉寿司本店。正面の筆書きメニュー文字が食欲をそそります。
築地すし好
3店目は「築地すし好」。築地には総本店をはじめ3店、都内に計22店を展開しています。ほか、銀座並木通りとアークヒルズには高級寿司の「すし好 仁」を、アクアシティお台場では回転寿司の「吉丸水産」を展開するなど、お財布具合に応じて楽しめます。今年7月には東京駅地下のグランスタ丸の内にテーブル席と立ち食い寿司が共存する新業態「すし好 Nagomi」をオープンさせました。築地総本店の一直線に伸びるカウンター(20数席)は壮観です。
▲築地すし好総本店。場外市場から晴海通りを隔てた交差点そばに位置します。
築地すし鮮
最後は、「築地すし鮮」です。築地の4店舗を含め都内に8店、熊本にも2店舗を構えます。この店は魚家(さかなや)グループの経営。極上本まぐろの店「築地すし一番」や、ちゃんこダイニング「安美」、沖縄料理の「ちゅらさん家」なども展開。バラエティー豊かな14業態がホームページで紹介されています。
▲築地すし鮮総本店。先ほどの築地玉寿司本店の並び、平成通り沿いに店を構えます。
以上、築地発の寿司チェーン店、4店を紹介しましたが、この4店、築地に本店を構えるということのほかにもうひとつ特徴が。それは「明朗会計」、お好み握りの1貫当たりの価格が表示されているということです。では、いくらなのか、4店のホームページにあるデータで、代表的な握り一貫当たりの価格を比較してみましょう(すべて税抜き)。
さて、いかがでしょう。総じて、すしざんまいはお値打ち、これに続くのがすし鮮でしょうか。ここまで店の紹介のみで、肝心の味のことは全く語ってきませんでした。築地初心者の筆者は家から近く、使い勝手もいいので「すしざんまい築地駅前店」によく足を運びますが、中トロをはじめ、お好み握りは、値段相応を通り越して十分満足できる味だと断言できます。何よりも各店の築地本店は店外、店内ともに「これが築地の本店か」と頷かせる雰囲気あり。ぜひ市場散策のついでに足を運んでみてください。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。