数年前から「ワークライフバランス」など叫ばれて、女性が一生仕事をすることが当たり前という感覚になり、2016年2月ごろに発信された「保育園落ちた、日本死ね」というツイートが大炎上して、政府も動かす事態に発展。
女性=一生働くことがクローズアップされ、専業主婦=マイノリティ的な目で見る人もいますが、私が実際に都心の小学校などに取材に行くと、専業主婦は半数以上いると実感します。彼女たちの中には家事育児に専念している主婦もいますが、パート勤務、自宅で教室、ハンドメイド品を販売、週1勤務の派遣社員などさまざまなワークスタイルを持っている人も。
“専業主婦=不自由・子供に依存”という社会の風潮とは裏腹に、家族円満に楽しく暮らし、子供を健康的に育てている人は意外なほど多い。というと、夫婦はサバイバルパートナーなのだから、もし、彼女たちの旦那さんが病気になって働けなくなったり、会社が倒産すれば路頭に迷うのでは? という意見。
「今、専業主婦がバカにされているみたいだけど、私は家族優先で生きたいと思って。出産のとき28歳で会社(銀行)を辞めるのもったいないとか言われたけど、私は働き続けるのはムリ。もし夫の収入がなくなっても、実家(長野県)に移住すればいいし、そんなんで路頭に迷うほど、希薄な人間関係じゃない」(38歳・専業主婦)
「せっかく結婚したんだから、私達の母親世代みたいな専業主婦になりたかった。やはり、女は……というより私は、外で狩り(仕事)をするより、家のことをする方が向いていた。主人も私が家にいることを喜んでくれています。1年前からオーガニック弁当販売のパートをしているのですが、それが楽しくて。子供(小6・小3姉妹)の手が離れたら、もっとできることも増えると思うし」(39歳・パート勤務)
つまり、何が言いたいかというと、女性の自立、女性の自由は個々の選択であり、専業主婦になりたいと思うなら、その道をすすめばいいということ。世間のワーキングマザー礼賛に同調する必要はないのでは……ということです。忌避すべきは“ホントは●●したかったのに、●●のせいでできなかった”という負の感情ということ。例えば、“ホントは仕事したかったのに、育児のせいでできなかった”という気持ちなどです。そんな子育てを続けていては、母親から“愛情”ではなく“何らかの欠落”が子どもに伝わってしまう可能性が高いのではないでしょうか。
この話をはずれますが、働きたいのに保育園に入れないのは大問題。どうしても仕事をしたい人の中には、地方在住の親を都心に引っ越させたり、都心近郊の過疎的エリアに引っ越して、仕事を続けている人もいます。
幸せな専業主婦の人たち(同時に幸せなワーキングマザーたち)と話をしていて感じるのは、女には2つのタイプがいるということ。ひとつは、自分でクルマを運転して目的地まで行きたい人。そして誰かのクルマに乗って目的地まで行きたい人。いずれも、その人の“性分”であって、自分に向いている人生を選ぶことが大切。
世間の意見に左右されず、自分に合う人生を選ぼうとすることが幸せの近道なのではないでしょうか。
初出:しごとなでしこ
ライター 前川晶紀
1977年東京都生まれ。女性のマネープラン、投資などの企画を手掛ける。現在、銀行系の雑誌に連載を持つなど、多角的に活動。
企業経営者のインタビューなどを多く担当している。