この築地コラムも4回目。築地がテーマというからにはやはり食について書かねば、というわけで前回告知したお題から離れ、今回は食べ物の話を綴ることにしましょう。
さて、何から始めるか。築地といえば魚市場→海鮮モノ→寿司、と連想されるところですが、そこはやはり季節ネタ、旬のネタから始めるのが江戸の粋というもの。というわけで、築地コラム最初の食ネタは真夏の食、鰻。本題である築地の店の話に入る前に、まずはミニ知識から。
土用の丑の日とは?
鰻といえば、やはり土用の丑の日。今年は7月30日(土)、1日のみ(昨年は2日ありました)。
【土用】雑節の一。1年に4回あり、立春・立夏・立秋・立冬の前、各18日間。<デジタル大辞泉>
土用は年に4回あるのですが、特に「立秋前の夏の土用」のみを指して「土用」というようになりました。そして丑は言うまでもなく十二支の二番目。日毎にこの十二支が割り当てられており、今年の立秋=8月7日の前18日間でこの丑が割り当てられている日付は7月30日のみ。よって今年の土用の丑の日はこの日限りということになります。
なぜ土用の丑の日に鰻を食べる?
諸説ありますが、江戸時代、平賀源内が、鰻が売れなくて困っている店のために「本日土用の丑の日、鰻の日」という張り紙をしたところ、それをきっかけに大繁盛、という有名な説のみに留めておきましょう。
ちなみに、天然鰻の旬は、冬を乗り越えるために脂肪を蓄える秋から冬だそうです。
前置きが長くなりました。それでは本題へ。築地で鰻といえばまず名前が挙がるのが、「宮川本廛(ほんてん)」。創業者は渡辺助之丞で明治26年(1893年)の開業。店のホームページには、「深川のうなぎ専門店『宮川』での修業を終え、同店の廃業に際し名跡を受け継ぎ」開業したとあります。そして、のれん分けをした店が形成する「宮川のれん会」の店舗、都内と横浜の計11店が紹介されています。
夏の夕暮れ時、宮川ののれんをくぐり予約した旨を告げると、「どうぞお二階へ」。階段を上り(エレベーターもあり)、席に着いてメニューからうな重を注文。「40分ほどかかりますけどよろしいですか」。キリンラガービールの中瓶を飲みながら待つことに。
うな重は4種類。松竹梅ではなく「イ・ロ・ハ・ニ」と表記されています。「鰻の大きさですか?」と尋ねると、「ご飯の量は同じですが、鰻の大きさと肉の厚みが違います」。上から2番目の「ハ・3888円(税込)」をオーダー。小さな漬物はついてきますが、きも吸は別料金(324円)。
待つことちょうど40分。待ちきれない、とばかりにふたを開けると、香ばしい香りが。山椒をふりかけまずはひと口。甘さを抑えたたれでご飯はやや硬め。鰻は程よい柔らかさで肉厚も十分。絶妙の舌触りです。きも吸は塩が抑えめの味加減。他の「イ・ロ・ニ」を食していないので語れませんが、この「ハ」は十分に満足できるうな重であったと断言できます。
さて、もう1店ご紹介。場外市場にある「はいばら」です。1号店と2号店があり、1号店は築地4丁目交差点からすぐの晴海通り沿いにあり、ここは蒲焼とうな重の店頭販売のみ。場外の中ほどにある2号店は店内でうな重を食することができます(ランチのみ)。
土曜日の昼時、店に入ると満席で待ち状態。待つことしばし、席に着きメニューを見て「うな重 竹・2600円(税込)」をオーダー。これには肝吸、新香、肝焼き1本付き。この店は持ち帰り用にも次々と鰻を焼いているので、20分ほどでお重が目の前に。さてお味は。先ほどの宮川に比べるとたれはやや甘め。ですがこちらのほうがいわゆる一般的な甘辛いうな重のたれかも。鰻も十分に満足できる大きさと厚み、そして柔らかさ。あっという間に食べ終えてしまいました。
最後にもう1店。築地6丁目の住宅街、路地を入ったところに丸静(まるしず)という店が。この店は残念ながらまだ食していませんが、食関係の情報サイト、ブログ等では高評価なので、近々訪れようと思っています。
以上、築地の鰻情報でした。
土用の丑の日に限らず猛暑で夏バテを感じたら是非に。ちなみに宮川は土曜日が定休日(今年の7月30日は土用の丑の日なので営業します)。はいばらは日曜・祝日が定休日です。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。