場内市場の豊洲移転後、築地はどう変わるのか。まず気になるのが、場内の中でも一般人にとって身近な「魚がし横丁」がどうなるのか、でしょう。
魚がし横丁といえば、大和寿司、寿司大、鮨文といった連日行列の名店をはじめ、飲食から物販まで約140店が軒を連ねています。市場で働く食のプロだけでなく、観光客、周辺のオフィス街に勤務するビジネスパーソンもランチタイムには数多く訪れる一大商店街です。
結論から言えば、場内の移転に伴い豊洲に移転します(魚がし横町のホームページには、「豊洲市場内・水産仲卸売場棟に82店舗が移転します」とあります)。しかしながら仲卸と同様、資金面や経営者の高齢化もあり、何軒かの店は残念ながら移転をせずに廃業してしまうと噂されています。また場内を離れ、別の場所で営業する店もあるでしょう。
いずれにしても豊洲の真新しい建物の中での営業は、現在のそれと趣を全く異にしてしまうのは明らか。築地場内魚がし横丁の風情が味わえるのは、まさにあと5か月余りなのです。
次に、移転しない場外市場ですが、隣接する新市場「築地魚河岸」が、豊洲開場に先駆け10月15日にオープンします。つまり場外市場は拡大するのです。ここには場内の仲卸約60店舗が入居。3月に入居内定店リストが発表されましたが、先ごろ入居者の追加募集があったこともあり、まだ全店確定はしていないようです。
もちろんプロだけでなく、この築地魚河岸では私たち一般人も普通に買い物ができます。メインエントランスは築地4丁目交差点から勝どき方向に少し歩いた晴海通り沿い。小田原橋棟と海幸橋棟、2棟の3階建てをブリッジで結ぶL字型の施設はすでに完成しており、あとは開場を待つばかり。毎年秋には「秋まつり」を開催する場外市場。今年はこの築地魚河岸のオープンもあって例年以上の賑わいを見せるかも。
「築地魚河岸」イメージパース。中央区ホームページより
晴海通りから見た「築地魚河岸」。建物は完成済み
そして、もうひとつ。築地を訪れる方にはおなじみの4丁目交差点に建つ築地KYビル。このビルのB1から2Fは、名作コミック「築地魚河岸三代目」のアドバイザーである元仲卸三代目の小川貢一氏が手掛ける「千秋はなれ」や、魚介類を巧みに使ったイタリアンの人気店「築地ボン・マルシェ」などの飲食店をはじめ、20数店が入居しています。
2Fにはインフォメーションスペース「築地よりみち館」があり、築地みやげの販売や築地ガイドツアーを行うなど使い勝手のよい空間です。
このビルがあの隈研吾氏のデザインで外観をウッディな雰囲気に一新し、リニューアルオープン予定。まだ外観の変更だけで、ビルの「中味」に関しては変わるのか変わらないのか発表になっていませんが、こちらも楽しみではあります。
最後に、最も気になるのは東京ドーム5個分という場内市場の広大な跡地の今後ですね。野球、サッカー等のスポーツ施設、はたまたショッピングモール、ホテル、マンション、オフィスビル等々、さまざまな憶測が飛び交っていますが、都心最大級の一等地、最後の都心再開発といわれているだけに、決定までには時間がかかりそうです。
決まっているのは、外堀通りから虎ノ門ヒルズ、汐留に至る環状2号線が場内を通り抜け、勝どき、晴海、豊洲を結ぶということ。この道路は都心と晴海の五輪選手村を結ぶメインストリートとなります。
勝どきと築地を結ぶ隅田川最下流の橋「築地大橋」は完成済み。豊洲移転の際には、この環状2号線を築地市場の象徴である小型車「ターリー」1000台超がパレードするというプランも浮上しています。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。