築地=TSUKIJI。この地名は今や日本国内だけでなく外国人観光客の増加もあって世界的に知られるものとなりました。
昨年5月、長年住み慣れた街を離れ、にわか築地住人となった筆者も、当初の目当てはもちろん築地の「食」。さまざまな業態の店が期待に違わぬ味で舌を満足させてくれています。しかしながら、住んでみて初めてわかったのは、歴史的に見るとさほど古くはないこの街(江戸時代の埋立からわずか350年ほどです)が驚くほど多様な顔を持っているということ。
そんな、日々の暮らしの中で感じる築地の魅力を毎回綴っていこうと思います。まずは、何といっても今年の話題である「築地市場移転情報」から。
東京を訪れる外国人は、水産物の取扱高世界最大級の魚市場、築地の場内、場外を興味津々に見て回ります。その築地市場がこの秋、江東区豊洲に移転。テレビ、新聞、雑誌、あらゆるメディアが昨年末ごろから「最後の築地」というタイトルを冠して繰り返し報道していますが、ではこの秋、築地市場はどう変わってしまうのか。そのあたりの「真実」から探っていくことにしましょう。
多くの皆さんがすでにご存じのことですが、豊洲に移転するのは場内市場のみ。といっても圧倒的な面積を占める場内(つまりは卸売市場)のほぼすべてが豊洲に移転してしまうのですから、そのインパクトは大。移転日は決まっており、「築地市場休市カレンダー」を見ると、今年の11月3日(木)の文化の日に続いて4日(金)〜6日(日)が休市。豊洲市場の開場が7日(月)とされていますから、この間に引っ越しが行われるのでしょう。
豊洲市場の面積は現在の築地の1.7倍。1935年(昭和10年)の開設から81年を経過した築地市場の施設の老朽化や狭隘(きょうあい)化が移転の理由とされてきましたが、この4月に移転に反対する市民団体「守ろう!築地市場パレード実行委員会」が場内の水産仲卸業者約600店に行ったアンケートでは、回答があった244店のうち84%が移転の延期・凍結を求めているということです。面積は広くなるが使い勝手が悪くなる、アクセスが悪い、移転に際して高額の費用負担が発生する、移転の時期は市場の繁忙期、土壌汚染調査がずさん、といった仲卸業者の声が、週刊朝日や週刊ダイヤモンドなどのメディアでは繰り返し報道されています。
加えて、豊洲市場には一般向けの観光施設「千客万来施設」が併設されます。これは200ほどの物販・飲食店と、日帰り&宿泊型の24時間営業温泉施設で構成され、当初は豊洲市場の開場と同時にオープンする予定でした。ところが事業者として決まっていた喜代村(すしざんまいを展開)と大和ハウス工業が相次いで撤退。この3月、事業予定者に万葉倶楽部が決定したとの発表がありました。当然ながら豊洲開場には間に合わず、物販・飲食店は2018年8月、宿泊施設は翌2019年8月、との発表です。
築地がテーマのコラムなのに、豊洲の話を延々綴ってしまいました。以上のようにまだまだ移転までには紆余曲折がありそうですが、それでも予定通り移転、となった場合、築地場内最後の日は、11月2日(水)。5月3日、「最後の」と銘打った「築地市場まつり」が場内で開催されました。GW期間中ともあって、過去最多、約15万人の人出。その4日後の7日、場外市場では、「半値市」を開催。こちらも普段の2割増の約6万人が来訪と発表されています。
移転まであと5か月。ますます盛り上がりを見せる気配の築地。それでは、場内移転後の築地はどうなるのか。こちらのほうが気になりますね。それはまた次回に。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。