インターネットのライブ配信「SHOWROOM」主催の前田裕二さん。多忙を極める今でも一日一冊の読書を欠かさない理由とは。
【前田裕二】さんインタビュー
読書は人生をよりよく生きるためのパートナー
インターネットのライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」の代表を務める前田さん。多忙を極める今でも1日に1冊は本を読んでいるそう。
「僕にとっての『教養』とは、『問題解決のために最低限必要な発展・応用可能な知識』のこと。『知恵』とも似ています。仕事に限らず、プライベートにおいても、人生は問題解決や意思決定の連続ですよね。これらをスムーズに行うには、まずほかの事柄に応用可能な基礎知識をもっていることが重要です。では、どうやったら得られるのか? これには、読書が大きな助けになります。たとえば、簡単な化学の本で、『熱伝導』について、『物体同士の温度に差がある場合、高温部から低温部へと熱の移動が起こる。一方、物体同士が同じ温度であった場合は、熱の移動は起きない』という知識を得たとします。これをプレゼンテーションに応用して、『熱伝導の法則通り、熱は高いところから低いところに流れる。つまり、『聴衆がもっている以上』の熱を言葉に込めれば、話し手の熱が聞き手に確実に伝わる』、こんな考え方もできる。つまり、化学を、コミュニケーションに応用することができるのです。」(前田裕二さん)
「こんなふうに、人生に応用できる知識を得るためには、まずは何より、読書に向き合ってみることが近道です。また、読書をする際に、『自分の視点をもつこと』も意識するとよいと思います。これには、コツがあります。本を読んでいるときの自分の心の声に耳を向けるんです。『これは使えそうだな。たとえば…』など、ふっと浮かんだアイディアや視点を逃さず、メモしておく。本と向き合う過程で生まれた自分自身の視点こそ、読書最大の意義だと思います」
優れた教養本とは、極めて具体的でマニアックなエピソードを、だれにでも応用可能な抽象度に引き上げて整理されている本だと語る前田さん。
「その意味では、新書は優れているといえます。サイズや長さといった良質な制約の中で、要点がシンプルにまとめられた書が多いから、短時間で効率よく教養を身につけられると思います。安価で手に取りやすいというのも魅力です。それでもどんな本を選んだらいいかわからないという人は、自分の信頼している人がおすすめする本を選んでみてください。何冊か読むうちにきっと、人生を変えるような一冊に出合うでしょう」
新書はスマホで『自分の視点』をメモしながら
面白いと感じた部分を撮影したり、フレーズをメモして、自分の意見や視点も書いておきます。数週間に一度、ザーッと見返して復習。
前田裕二さんオススメ!
人間力が上がる新書3冊
『使える!「孫子の兵法」』
著者:齋藤 孝
PHP新書 ¥740
「中国の春秋時代に書かれた兵法書の古典『孫子』の教えを、現代の仕事に置き換えて読み解いた作品。『生死』が関わっている戦時の知恵は精度がすごく高い。仕事をゲームととらえ、どうしたら勝てるか、どうしたら負けないか、が書かれています。恋愛にも応用できると思います」
『知的生産の技術』
著者:梅棹忠夫
岩波新書 ¥840
「メモの取り方や読書の技術、カードの使い方、文章の書き方など、自分から何か新しい発想や価値を創出するために必要な教養を解説しています。もう50年くらい前の本ですが、ここに書かれている本質は色あせません。しっかり学べば、生活の中で触れる情報から独自のアイディアを生み出せるようになります」
『利己的遺伝子から見た人間 愉快な進化論の授業』
著者:小林朋道
PHPサイエンス・ワールド新書 ¥676(Kindle版)
「生物学者、リチャード・ドーキンス博士の著書『利己的な遺伝子』を解説。人間の行動を『人間は遺伝子の乗り物』という仮説から説いていきます。たとえば、だれかを助けるという一見利他的な行動も、実は自分の遺伝子が生き残ろうとしているだけだとしたら…?人類が生きるうえでの科学的視野を一気に広げてくれます」
Oggi10月号「人間力が上がる!教養本」より
撮影/為広麻里 デザイン/mambo西岡・須賀祐二郎(ma-hgra) 撮影協力/羽田エクセルホテル東急 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子
再構成/Oggi.jp編集部
SHOWROOM代表 前田裕二さん
1987年生まれ。外資系投資銀行、DeNAなどを経て現職。読書は世間が寝静まってやりとりがおきない3~4時の間にするのが習慣。近著に自身の人生とビジネスの本質を明かした『人生の勝算』(幻冬舎)がある。