もし、自分が被害に遭ってしまったら? これ以上セクハラ被害を受けたり、泣き寝入りしないために、相談から解決まで、私たちが具体的にできることを考えてみました。
この人に聞きました!
フェリタス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士
石川弘子さん
1973年生まれ。さまざまな企業の労務相談を受けるほか、セクハラ・パワハラ防止コンサルタントとして、企業向けの研修なども行う。著書に『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)。
アディーレ法律事務所 弁護士
岩沙好幸さん
1981年生まれ。セクハラ・パワハラなど労働問題を主に扱う。コメンテーターとして各種メディアでも活躍。著書に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマ・ドット・コム)。
セクハラ解決のためにすべき 4STEP
[1] まず、望む解決策を見極める
ただ話を聞いてもらいたいのか、相手を異動させるなどの社会的な制裁や謝罪がほしいのか、法的に訴えたいのか。自分自身がどう解決したいのか整理し、起こすべきアクションを明確にすることが先決。
[2] 証拠を集め、整理する
証拠がないと相手に開き直られることも。「手書きのメモはどうとでも書けてしまうため裁判の証拠としては弱い。被害を録音した音声やLINEの履歴は、『気持ち悪い』といって削除せず、残しておくと有利です」(岩沙さん)
[3] 社内の相談窓口に届け出る
相談者の要望や了承を得たうえで人事が動き、事実確認などが行われる。「企業には、セクハラと認めた件には懲戒処分を下すなど、不快な状況を改善する義務があるので、まずは社内の窓口に届け出るのが現実的」(石川さん)
[4] 厚生労働省や法務省管轄の公的機関や弁護士に相談する
中小企業などで社内に窓口がない場合はこちらへ。「裁判にかかる弁護士費用は50万~100万円、解決金は10万~100万円ほど。ただし、不快な出来事を裁判で詳細に話したり、加害者と顔を合わせる場合もあります」(岩沙さん)
事前の準備と信頼できる機関への相談が重要
セクハラをされたときの対応は、自分がどう解決したいかがキモ。「相手を異動させるなど社内環境を変えたいならまず会社の窓口に、慰謝料を請求したいなら弁護士になど、目ざすゴールによって相談先も変わってきます」(岩沙さん)、「ここ数年で企業の対策もだいぶ整いましたが、企業によって差が。担当者に専門知識がなく、相談したことが噂になってしまうなど二次被害が広がるケースもあるので、不安なら社外の公的機関に相談するのがベター。同様の理由で、同僚などへの相談も、間違った対応をされ状況が悪化する場合があるので要注意」(石川さん)、「スムーズな解決には証拠集めも重要。特に裁判を見越しているなら、証拠がなければ勝てません」(岩沙さん)
いずれにせよ、「イヤなのに笑って受け流すのはダメ」というのがふたりの共通意見。「相手をいなして社会を泳ぐのは、実は女性側も傷が浅いし、ラクな方法。でも、イヤなのに受け流すことは、相手にこれくらいならしていいんだという誤ったメッセージを送り続けているのと同じ。まずは拒否する姿勢を見せることが、何よりのセクハラ防止策となります」(石川さん)
女性も加害者になっているかも? 「逆セクハラ」に要注意!
セクハラは、男性が女性に行うとは限らず、女性から男性でも成立するもの。女性が受けるセクハラと定義は同じで、デリカシーのない言動によって男性側がイヤだ、不快だと思えば「NG」と心得て。逆セクハラに遭遇した男性の声を聞いてみました。
from Men’s Voice/俺たちの#MeToo
「胸元が見えそうな服で出社して、つい視線を向けたらイヤな顔。こっちだって好きで見たわけじゃない」(32歳・営業)
「女性が多い職場で『生理でだるい』などの会話は日常茶飯事。正直居心地は悪いです」(27歳・金融)
「『結婚しないの?』と聞かれイラッ。その言葉、そのままお返しします」(34歳・企画)
「同僚女性に『おいしいよ』と飲みかけのグラスを渡された。人が口つけたもの飲みたくないわ」(33歳・商社)
「飲み会で『いい体してるね』と服を脱がされた。悪気がなさそうなところがタチが悪い」(29歳・サービス業)
公的相談窓口 Yellow page
社内で相談しづらいとき、セクハラかどうか迷ったときは…
都道府県労働局「雇用環境・均等部(室)」(厚生労働省)
各都道府県に設置。労働問題を総合的に扱うため的確な助言がもらえる。社内の窓口に相談しても対応してくれない場合などは、解決に向けての手助けも行う。匿名での相談もできる。☎03・3512・1611(東京労働局) 受付時間/月~金9時~17時 https://www.mhlw.go.jp/
女性の人権ホットライン(法務省)
セクハラを含む、さまざまな女性の人権問題に詳しい法務局職員や人権擁護委員が対応。事案に応じて、セクハラを行った本人や企業に改善を求めることも。メールでの相談も可能。☎0570・070・810 受付時間/月~金8時30分~17時15分 http://www.jinken.go.jp/
Oggi8月号「セクハラって結局何?」より
画像/Shutterstock 取材・文/井上佐保子(田中さん分) 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部