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2018.09.20

【私が決断したとき】私たちの会社があることで、少しでも生きやすくなる人がいるのだと実感|社会起業家・仲本千津さん

各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。ウガンダ発のトラベルバッグブランド「RICCI EVERYDAY」の代表を務める仲本千津さんにお話をうかがいました。

【仲本千津】さんインタビュー

やりたいことを先延ばしにはできないと、震災が気づかせてくれた

銀行員だった20代半ば。丸の内で法人営業をしていましたが、周りはすごく仕事ができるエースばかりで、なかなか環境になじめずモヤモヤしていましたね。大学院まではアフリカ政治を専攻していたこともあり、ゆくゆくはアフリカでの開発事業に携わりたいと思っていました。

現実はそれを隠して、膨大な量の仕事に死にものぐるいでついていく日々。大変ながら人には恵まれて楽しかったのですが、東日本大震災が起きて意識が変わりました。自分もいつ死ぬかわからない。このままやりたいことを先延ばしにはできないなと。すぐに転職活動を始め、2011年の年末にはアフリカに関わるNGOに拾っていただくことができました。

NGOでは2年半ほど東京オフィスに配属され、月1回アフリカに出張する生活に。ただ、定時で終わるので時間がすごく余ってしまって。本業の傍ら、プロボノスタッフとして、エチオピアでレザーブランドを起業した方のお手伝いを始めることにしました。アフリカでのビジネスの仕方や、ファッション業界のいろはを勉強させていただきましたね。20代後半は、人生のテーマを見つけて軌道にのせるため、一生懸命に学ぶ時期でした。

ウガンダに赴任になったのは、30歳のとき。現地で初めてアフリカンプリントを見て、日本にはない色合わせや柄がすごく鮮やかでワクワクして、「私がビジネスにするならこれしかない! この生地でバッグをつくろう」と直感で決めました。

仲本千津

そうと決まれば現地で製造の体制づくり。友人に紹介してもらったあるシングルマザーとの出会いで動き出します。

人の子供を抱えて厳しい生活の中、彼女には少しでも状況を変えたいという意志が見えた。わずかなお金で豚を買って育て、子供の教育費に充てていたんです。豚は繁殖能力が高く、1頭が現地の学費1学期分で売れる。投資効率がいいんですね。そういうことに気づく彼女の視点や、やろうと決めて続ける覚悟がかっこいいなと思い、ビジネスパートナーになってもらいました。

でも、縫製技術はまったくなくて、職業訓練学校に通っても日本で商品として売れるレベルではなかった。これじゃあ無理かも…とすごく落ち込んでいたら、職業訓練学校に長く通っている女性ふたりが「私たちもやりたい」と声をかけてくれて。しかも試しにバッグをつくってもらったら、すごく上手。よくよく考えたら何事も始めて2、3か月でプロ級のものなんてつくれないですよね。私はそこをすっ飛ばして、ひとりで諦めかけていたんだなと。すでに技術があるふたりも雇い、4人で製造を始めました。

ただ、課題は販売。私はウガンダに張りつきだったので、日本でどうやって商品を売ろうかと。お金もないし人も雇えない…と悩んで思い出したのが母でした。パートはしていたけれど、ビジネス経験はほとんどない専業主婦。それでも快く引き受けてくれまして。大手百貨店でブランドのスタートをきれたのも母のおかげです。地元・静岡の伊勢丹で催事を見た母は、なんとインフォメーションセンターの方にアポなしで「担当のバイヤーさんを紹介してください」と飛び込み営業(笑)。普通は難しいことだと思うのですが、親切な方で本当にバイヤーさんにつないでくださり、展示販売が実現しました。

RICCI EVERYDAY

迎えた初日は、事前にプレスリリースを配信して新聞やテレビで取り上げていただいた効果か、午前中に在庫がほぼ完売してしまうという事態に。手応えをつかめたことで、NGOを辞めてウガンダに正式に会社をつくり、本格的に「RICCI EVERYDAY」をスタートしました。

今は、ウガンダと日本を行き来しながら、生活しています。一年の大半は日本を離れて暮らしていますが、このビジネスを始めて親との距離はグッと縮まった気がします。私は4人兄弟のいちばん上。長女というのは子供のときから放っておかれるもので、親との仲は良好ながらも距離を感じていたときもありました。今は人生でいちばん一緒にいる時間が長いかも(笑)。年に1回、母が出張でウガンダに来ていて、付き添いの父と3人で過ごす時間を楽しんでいます。

自分が始めたことで、不幸をもたらしてはいけない。生きづらさを、少しでも軽くしたい

アフリカの中でもウガンダは、高地にあり気候が穏やかな国です。今は比較的治安がよく、作物が育ちやすいので食べるのに困ることはありません。でも、就職率は低く、最高峰の大学を出た人でも20%程度しかまともな仕事に就けない社会情勢。多くは低賃金の劣悪な環境で働いています。さらに、ウガンダ北部は2006年までは内戦状態で、子供のころに反政府組織に誘拐されて薬や暴力で洗脳され、女性でも兵士として前線で戦わざるをえなかった人がいて。解放されても差別を受けたり、負傷して農作業ができなかったり。幸せな暮らしを夢見ることさえできずに、生きづらさを抱えている人がまだまだいます。

そんな背景をもつ女性たちと一緒に働いていて感じるのは、彼女たちが日本のお客様に製品をつくっていることを誇りに、明日も明後日もその先もこの仕事を続けていきたいと思ってくれているということ。今は20代、30代の女性を中心に18人の仲間がいます。みんなに継続して仕事を提供できるよう、たとえ細くても、事業を長く続けていくことに意味があると信じています。

仲本千津

そのためにも、自分が始めたことで彼女たちに不幸がもたらされるようなことがあってはいけないと、常に見えないリスクと戦っています。特に、ウガンダ行政との交渉は難しいですね。人によって法律の解釈が違ったり、なかなか物事が予定どおり進まないことも。現地法人設立の手続きをする際は、万が一にも彼女たちが当局に不当に逮捕されてしまうことがないように、念入りに準備しました。

あとはアフリカでビジネスをするなら、大事なスタッフを犯罪者にしてしまうかもしれないリスクを常に認識する必要があります。日常的に人が亡くなるのでお葬式が多く、家族の事故や病気も隣り合わせ。私たちの想像を超えた状況で資金ニーズが発生します。そんなとき目の前にお金があったら、魔が差して盗んでしまうことも「ない」とは言いきれない。従業員が困ったときに、会社として資金を貸し出せる制度の整備を進めています。

創業から3年、私たちの会社があることで、少しでも生きやすくなる人がいるんだと実感できました。ここからは着実にブランドを育てていく時期。ウガンダや日本以外の国でも展開できるよう挑戦していきたいです。

オンラインストア&百貨店で出合える! RICCI EVERYDAY

RICCI EVERYDAY

仲本さんがデザインを担当し、ウガンダの女性が製作。ポーチや4WAYバッグなど、出張や旅先で便利なアイテムがそろう。オンラインストアで購入できるほか、8/8〜14は天満屋岡山本店、8/22〜9/4は西武池袋本店でポップアップストアも予定。

詳細は公式HPをチェック!

Oggi9月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/石田祥平 撮影協力/西武渋谷店 デザイン/Permanent Yellow Orange 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

なかもとちづ

1984年静岡県生まれ。一橋大学大学院修了後、邦銀で法人営業を経験。その後国際農業NGOに参画し、ウガンダの首都カンパラに駐在。そこで出会った女性たちと、日本に暮らす母と共に、アフリカンプリントの布を使用したバッグやトラベルグッズを企画・製造・販売する「RICCI EVERYDAY」を創業。2015年に日本法人、2016年に現地法人及び直営店舗をカンパラにオープン。2016年第一回日本アフリカ起業支援イニシアチブ最優秀賞、2017年日本イノベーター大賞特別賞などを受賞。


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